「再評価求む!」誘拐(1997) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
再評価求む!
思い出しレビュー6本目。
『誘拐』
とある会社常務が誘拐された。犯人の要求は、身代金は3億円、身代金の受け渡しを同会社の重役たちに行わせ、それをTVで中継する事だった…!
1997年に公開されたサスペンス大作。
大規模な街中のロケーション、身代金受け渡しの生中継など、公開時結構話題になったものの、あまりヒットせず、今じゃすっかり忘れられてるような作品に…。
でも本作、隠れたと言っちゃああれだけど、傑作力作だと思う。
また自分として、製作・富山省吾、監督・大河原孝夫、音楽・服部隆之などゴジラスタッフが多いのも興味引かれた。
多分、今公開されても話題にはなるだろう。
それくらい、日本映画としてはスケールの大きいエンタメ。
名カメラマン・木村大作による群衆シーンなど迫力ある画作りは申し分ナシ。
普通、身代金の受け渡しなんて大々的にやる事ではない。それを逆手に取ったアイデア。
人に運ばせ、その瞬間をカメラが捉える。
3億円は相当な重さ。指名された重役たちにとってはとんでもない力仕事。
ちゃんとこれには訳があって…本作、オリジナル脚本というのもポイント高い。
前半はスリリングでスケール大きいが、後半からは静かなタッチに。
でも、トーンダウンではない。じっくり、犯人の動機、その背後にある悲しい事実が紐解かれていく。
言うまでもなく、この前代未聞の事件の背後には、某会社が過去に犯した罪がある。
それをもみ消され、怒り、立ち上がった“犯人たち”。
その犯人の一人に…。
重い身代金を抱え、息も絶え絶え苦しむ重役たちに同情などかける必要ない。
彼らは彼らのやり方で、この罪人たちを罰しているのだ。
我々の怒り、悲しみ、苦しみを忘れるな。
ベテラン刑事役の渡哲也がさすがの名演。
若き永瀬正敏も熱演。
また、こういうスケールとエンタメがあるオリジナルの日本映画を見れないものか…。