鑓の権三のレビュー・感想・評価
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昭和のプロたちの全員集合
近松戯曲の登場人物は、当時の社会情勢からは自然なんだろうけど、すべてが歯がゆくてどうも好きになれない。ストーリ・ドラマは置いといて、こんなことを感じた。
古典的な封建世界を竹満徹は、三味線の音色で表現する。大監督、大女優に、撮影宮川一夫、美術西岡善信といったその道の匠たち。障子越しの二人の様子や、格子窓の外から見た二人の会話シーンとかハッとする様式美。日本映画を知ったスタッフ・キャストへの安心感かなあ。
当時、ディスカバージャパンという言葉が残っていたか微妙だけど、西日本を代表する古典情緒を醸し出す町並みや名所旧跡。「あれ、ここは?」と訪れて既視感ある風情。
というわけで、どこか懐かしく感じる作品だった。
モテ男の失敗
昔、映画館で見たなー。BS日テレで放送したので、何十年ぶりに再見。
容姿端麗、文武両道、流行り歌になっちゃうくらい、いい男。そんな権三はモテモテ。同僚の妹に迫られ、結婚の約束をカル〜くする。お役目奪取を目論み、引き換えに縁談を持ちかけられれば、易々と受けてしまう。節操ないなぁ。二股はイカンよ。
本当は不義密通してはいなかったが、言い訳できない状況になってしまい、逃亡。しかし、最後は自ら討たれる。きちんと筋を通せば、こんなことにならなかったのに。世の中を甘く見てたな。
権三を郷ひろみ、良き妻・母であるおさいを岩下志麻、権三に恋焦がれる娘お雪を田中美佐子、おさいに横恋慕する、お雪の兄・伴之氶を火野正平が演じる。
女優は2人ともねっとりしてて良かった。暗い炎がチラチラするような目で、権三にロックオンするお雪。もうどうにも止まらない。おさいは元々、権三が好みだったから、2人で逃避行するうちに、権三沼にズブズブはまっていく。どうせ誤解されてるんだから、本当にしちゃえばいいじゃあーりませんか。
火野正平が嫌らしさ満点。郷ひろみは姿よく、動きにキレがあって、まさに男盛り。
おさいが15歳の娘の髪を整えるシーンは、情感があった。この映画を見た後に、人形浄瑠璃も観劇したのだが、同じ場面があり、娘への細やかな愛が表現されていた。権三に近寄られなければ、子どもと離れずに済んだのにねぇ。つくづく、軽薄の人とは交わるべからず。
BS日テレ木曜時代劇にて。
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