野獣死すべし(1980/村川透監督)のレビュー・感想・評価
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映画自体は大変に荒削りで残念な出来映えだか、それでも松田優作の怪演は見物だ
本作公開の前年に実際にあった三菱銀行北畠支店事件が下敷きにあるのはすぐわかるだろう
それよりも、本作公開2年前のディアハンターにより大きな影響を受けているのも明らかだ
と言うより、日本版のディアハンターを作ろうと意図したのではないだろうか?
単に夜行列車の中でのロシアンルーレットのシーンがそれを模したというだけでなく、今風に言えば戦場でのPTSDによる主人公の精神崩壊をテーマに据えてあるのを理解すればそれをなぞろうとしたものとわかる
難解だとされるラストシーンは、猛速度で走行する列車の窓を破って飛び降りてからのシーンは全て主人公の転落による瀕死のなかでの幻想であると自分は理解した
石造りの地下要塞の内部での主人公の長台詞でも
「ベイルートの南10マイルのジャングルの中を・・・」と直ぐにおかしいと分かるようにしてあるではないか
そこにあるのはベイルート国際空港だ
そもそもヨルダンには丘陵に低木が生えるのみでジャングルなどあるはずもない
インドシナかウガンダとの記憶の混同が起こっていると分かるように示唆してあるのだ
そして日本の田舎の山地にそんな地下要塞跡があるというのも記憶の混同を表現しているのだ
続く日比谷公会堂のシーンも小林麻美演ずるヒロインの追想であり、刑事により罰をうけ死にゆくことを表しているのだと思う
映画自体は大変に荒削りで残念な出来映えだ
彼が野獣に変わる原因たるベトナムなどの戦乱の悲惨なシーンはニュース映画のモンタージュを白黒で挿入しているに過ぎない
そしてフラッシュバックして錯乱する中で彼はこう叫ぶ「俺は日本人だ!関係ない!」
自分がまるで透明人間であるかのような、なんという無責任な甘えの思考だろう
それが台詞の中で露呈してしまっている
そこにいるだけで当事者なのだ
戦乱のなかで殺されていく現地の人々にその台詞はなんと聞こえるのだろう
その台詞を核にして作られている映画とは一体何だろう?
それでも松田優作の怪演は見物だ
傑出した役者であることは存分に証明している
それだけでも本作を観る意義も価値もあるのは間違いない
また鹿賀丈史と室田日出男も素晴らしい仕事を残している
主人公29歳の設定!?同期の面々が東大卒にみえない
松田優作は野獣というより爬虫類、インテリで下戸
岡本麗のオナニーシーン
鹿賀丈史は黒人とのハーフに見える、アフロヘア
根岸季衣のフラメンコ
スローモーションよく使う
射撃訓練の時、九の字に曲がって構える癖は銀行強盗の時には伺えず
電車の逆転シーン恰好いい(窓に映る真田)
ディア・ハンターはこの2年前に出来ているのか
x-y-zカクテル
思いもよらない転調
熱い演劇調の松田優作のエクスタシー論を聞きながら腰を振る鹿賀丈史が一番立派
迫力のガンエフェクト
なんだこのラストシーン!?室田日出男は何と呟いた??
松田優作の自己陶酔な自己表現
総合60点 ( ストーリー:30点|キャスト:65点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
松田優作が狂気じみた演技で世界を作っている。舞台のような大袈裟な台詞回しも多い。そんな松田優作の自己陶酔した自己表現のためだけの前衛芸術的作品。物語はかなり無茶苦茶で、物語全体を眺めるよりも、彼個人の鋭くて脆くて狂った感性だけを観るべき。
やけに柄の悪いチンピラ役が鹿賀丈史だったが、現在と雰囲気が違っていて初めて観た時は気が付かなかった。
難解…
狂ってる
最初から最後まで狂ってた。
その動機が悲惨な戦場を渡り歩いたからと言うのが後半になって分かるのだけど、最初から分かってれば、もう少し伊達と言う男の事が理解出来たかもしれなかった。
狂った様を少ない台詞と表情や仕草で魅せる松田優作はスゴいのかもしれないけど、まだ、他の作品をちゃんと見てないので松田優作の魅力は僕には分からない。
松田優作って人は縛られる事が嫌いでアドリブが好きだったんだろうなぁと思った。
ただ僕が観てきた映画の主人公の中で一番狂ってたのは間違いない。
思いの外鹿賀丈史がカッコ良かった。
同窓会で今では大物俳優たちが揃ってたのも面白かった。
松田優作作品をもっと観て魅力を感じていきたいと思います。
今見返すと
君は今確実に美しいんだよ。それは悪魔さえも否定できない事実。
君は今確実に美しい。それは神さえも超越している。
別荘で初めて殺しに手を染めた真田に言う長台詞は、松田優作自身が考えたそうです。
他にも詩の朗読2回に、長台詞2回。
アクション・スターから演技派への脱却を図った本作は、優作と脚本家がハードボイルドの原作をぶちこわし、原作者を激怒させるキチ○イ映画に変貌させました。
数々の戦場で死を目の当たりにし、死生観の変わってしまった男が、`汝、殺すなかれ´という神の教えに背くことで、神へ挑むが如く次々と人を殺していく。
そして、唯一彼を人として留めていた令子を自ら殺すことで、完全に狂気の世界へ行ってしまう。
もはや邦画界の伝説となっているエピソード、優作が本作のため、70kg→62kgに減量し、更に頬をこけさせるため奥歯を4本抜き、地味で目立たない男にするため、5cm足を切れないか?と医者に相談したなど、彼自身が狂気の世界に足突っ込んでます。
松田優作の存在そのものが映画を超えてしまった本作は、彼を知らない又は興味無い人が観たら、「なんじゃこりゃ!」と叫びたくなるのも仕方無いですね。
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