宮本武蔵 巌流島の決斗のレビュー・感想・評価
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【”三尺の長剣VS舟の櫂。そして、力と技の剣VS心の剣”今作は誰でも知っている名シーン、名台詞満載の”中村錦之助宮本武蔵”最終作である。巌流島の二人の対決をスローモーションで見せて欲しいなあ。】
■吉岡一門を葬り、再び修行の旅に出た宮本武蔵は偶然立ち寄った研師の家で佐々木小次郎の愛刀、三尺の長剣を見かける。
その後、将軍家指南役・北条安房守の屋敷に迎えられた武蔵は、再会した沢庵和尚から指南役を勧められるも、一条寺下がり松の吉岡一門との戦いで、吉岡の”大将”であった幼い子供を斬ったことが問題となり不採用となってしまう。
が、それを伝えに来た宮本武蔵が二刀流を開眼したきっかけとなった石舟斎を父に持つ、将軍家指南役の柳生但馬守宗矩(田村高廣)は、武蔵が金屏風に書き残した画を見て”寅を野に放した・・。”と呟くのであった。
そして、佐々木小次郎は細川家(当主は、里見浩太朗)の家臣、岩間角兵衛の剣の指南役に取り上げられ、武蔵は同じく細川家家臣、長岡佐渡(片岡千恵蔵:ムッチャ、渋い声)に仕え、二人は到頭巌流島で対決するのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭、第一作から四作までのダイジェストがたった九分で流れるのだが、これが見事にポイントを突いた編集でナカナカ秀逸である。あれがあれば、今作が初見でも何ら問題なく観れるであろう。
・そして、マタマタイキナリ現れたお通さんが、武蔵に取りすがるのであるが、武蔵は”忘れてくれ!”と言いながら、彼女を抱きしめるのである。
もう、何度も観たパターンなので、武蔵もナカナカ冷たい振りして、上手くやるなあ、などと不埒な事を思いながら、観賞続行。
・で、今作の中盤も刀研師と武蔵の遣り取りや、いちゃもんを付けて来た馬喰の前で、武蔵が蠅がブンブン飛ぶ中、そばを啜りながら、箸で蠅を掴むシーンもお約束であるが、面白い。
今作は、終盤のクライマックスに向けて、宮本武蔵の逸話をちょいちょい入れているのである。
■そして、巌流島の決戦。
武蔵は準備をしながら、浜辺に打ち上げられていた舟の櫂を見つけ、手に取り船頭に舟を漕がせながら、小刀で舟の櫂を三尺の木刀に仕上げて行くのである。
いつものように遅れて漸く島に着いた武蔵に、小次郎は”今までと同じ、定刻に遅れて登場するお主の戦法、俺には効かぬ!”と言い、三尺の長剣を抜き、刀の鞘を浜に叩きつけるシーン。武蔵は高笑いをし、”小次郎、破れたり。勝つ気であれば、鞘は捨てぬ!”と言い放ち、武蔵は宙に舞うのである。
で、いつものパターンなのだが、武蔵の剣が小次郎の頭をカチ割る瞬間が、映されないのである。ウーム。美学だなあ。
けれども、あれだけ有名なシーンだし、今作が現代にリメイクされたら、絶対にスローモーションで映すよなあ、と思いながら観賞。
そして、帰りの舟の中の武蔵の表情は、ちっとも嬉しそうではないのである。
<今作は誰でも知っている名シーン、名台詞満載の”中村錦之助宮本武蔵”最終作である。
そして、余りの面白さに一気通貫の如く一気に観てしまったが、この内田吐夢監督による”中村錦之助宮本武蔵”五作シリーズは、昭和の剣豪娯楽映画の逸品だと思ったのである。
一部、突っ込み処はあるが(ちょいちょい出て来る、ストーカーお通さんの姿。)何役の人が出演しているのか分からないが、吉川英治氏の小説(文庫版で、全8巻)が優れているのは勿論だが、それをほぼ破綻なく、五年掛けて一年に一作づつ公開した内田吐夢監督の偉業は、凄いと思ったのである。>
シリーズ完結
シリーズ完結篇。
吉岡一門との死闘の果てに武蔵が得たモノ。それは…《卑怯者》との烙印であった。
「私は間違ってはいない!」
強い意志でそんな風潮を払い飛ばす武蔵であった。
いつしかお通との2人旅をしている武蔵(笑)
しかし我が道を行く武蔵。想いを断ち切る様に瀧修行(笑)
お通と別れ、ふとしたきっかけで百姓をする武蔵。そんな武蔵を「大した人物だ!」と認める御大片岡千恵蔵に加えて、沢庵和尚三國連太郎までもが登場。
画面が一気に引き締まる。
一方高倉健演じる佐々木小次郎は就職活動に余念無し。
江戸に帰った武蔵は、箸で蠅を掴む有名なエピソード等を盛り込みつつ、将軍家に召し抱えられ様とするが…。
ここで小次郎一気にテンションMAX(笑)
「俺の方が上だ!」…とばかりに、いつの間にか天下分け目の2大決戦にまで発展。ここから先は、まるでジェットコースターに乗っているが如く、あれよあれよと話が進む。
いつの間にやら巌流島へ到着する2人。
ついでに、浪花千栄子:木村功:入江若葉:丘さとみ等々、関係者御一行様もご到着。物語は一気に修復に向かう都合の良さ。
“小次郎敗れたり!”
終生の敵を倒した今。人の死の無常を知り、己の剣に研鑽を重ねて心眼の道を究めんとする武蔵に新たな道は開けるのであろうか。
巨大なテーマに立ち向かった壮大なる叙事詩は、大菩薩峠の机竜之助同様の、袋小路に陥ってしまったかの様な状態で、遂に完結を見たのであった。
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