劇場公開日 1993年7月17日

「小さな師との大きな宝物」水の旅人 侍KIDS 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0小さな師との大きな宝物

2019年1月31日
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鑑賞方法:DVD/BD、映画館

楽しい

幸せ

一寸法師のような身の丈の老侍と少年の交流を描いた、大林宣彦監督1993年のファンタジー作品。
子供の頃、劇場で観た記憶がある。おそらく見るのもそれ以来。
言うなれば、20数年振りの“再会”!

何と言っても見所は、全編の8割以上にも及ぶというハイビジョン合成。
さすがに今となっちゃあ粗い部分もある。特にOPは…。
でも大部分は、当時の邦画の最新技術を駆使した最高レベルの合成映像はなかなかのもの。
同年ハリウッドで『ジュラシック・パーク』が見る者を驚かせたように、邦画界では画期的だったろう。
当時タブーであった水との合成、邦画としては珍しいド直球のファンタジーに挑んだ、大林監督の意欲作でもある。

ファミリー向けファンタジーで身長17㎝の小人侍を、山崎努が演じるのもユニーク。
猫と戯れたり、ちっちゃい身体でキッチンに迷い込んだり、スーファミで遊んだり、レコードの上でジョギングしたり、カラスと格闘したり…。
でも、そこは名優。
ちっちゃくても作品をビシッと締める存在感。武士道を体現。

この老侍・少名彦は何者か…?
タイムスリップして現代にやって来た侍…ではあるまい。童話ならまだしも、幾ら何でも小人侍なんて居る訳がない。
少名彦は、水源から川の流れに乗って海を目指して旅している、水の守り神。
交流を育む少年・悟は気弱な性格。ピンチに少名彦は駆け付け、助ける。守り神であり、侍!
悟もこの小さな師から、勇気を学ぶ。礼節を学ぶ。自然を愛する心を学ぶ。
少名彦を守り、海へ連れて行く事を誓う。
しかし、現代の汚れた水が少名彦の身体を蝕み、衰弱していく。
少名彦の為に、悟は学校のキャンプで訪れた山奥の水源の水を持ち帰ろうとするが…。

童心に返って楽しめるが、作品的には邦ファンタジーの名作にはなり損ねたかな、と。
悟のピンチに駆け付けるシーンやカラスとの格闘は、スピーディーな演出や編集、合成技術で遊び心たっぷりだが、ちとドタバタ子供向け過ぎ。
展開的にも、所々雑で解せない部分もある。
でも、王道的な子供の成長と冒険、少名彦を通して描かれる自然保護、欠けがえのない出会いと交流…。
大林監督らしい意欲的な作りや技術。
名作ファンタジーにはなり損ねたが、邦画の中でも好編ファンタジーである事は確か。

悟の亡き祖父役として写真で登場するは、大林監督作品に何度かゲスト出演している本多猪四郎監督。
本作は、大林監督が師と仰ぐ本多監督の数々の特撮作品へのオマージュだとか。
また、全体的に藤子・F・不二雄作品のような雰囲気も感じ、悟の机に『ドラえもん』の漫画があったのも少なからずのオマージュだったのかも。
この2点、個人的にとても気に入った。

でも一番気に入ったのは、悟の父のある台詞。
「子供の時はいっぱいの宝物を隠せ」
洋邦数々のファンタジー然り、子供の時にしか訪れない秘密の出会い、冒険、交流…。
それは子供時分から大人になった今でも、尊い宝物。

近大
2019年1月31日

確かにこの頃は懐かしさに浸れますw色々

巫女雷男
近大さんのコメント
2019年1月31日

巫女雷男さん
コメントありがとうございます♪

確かにツッコミ所のあるファンタジーが多かったですね。
でも久し振りに見ると、懐かしさに浸ってしまいます(^^)

近大
2019年1月31日

この頃ホント日本映画は異色ファンタジー多かったですね。安達祐実のREXや、カールスモーキー石井の河童など。

巫女雷男