まひるのほし

劇場公開日:

まひるのほし

解説

「阿賀に生きる」など革新的手法と映画哲学で数々の傑作を生み出しながらも2007年に49歳で突然この世を去ったドキュメンタリー作家・佐藤真が、知的障害を抱える7人のアーティストの創作活動を追ったドキュメンタリー。

兵庫県西宮市の武庫川すずかけ作業所、神奈川県平塚市の工房絵(かい)、滋賀県甲賀市の信楽青年寮で、それぞれ独特のこだわりをいかして創作に取り組む個性豊かな7人のアーティストを取材。彼らの創作活動とそれを支える暮らしの断片を見つめ、芸術表現の根底に迫る。

絵本作家・画家の田島征三が撮影監督を務めた。2024年5月24日より開催の特集上映企画「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」にて4Kレストア版を上映。

1999年製作/93分/日本
配給:ALFAZBET、パラブラ
劇場公開日:2024年5月24日

その他の公開日:1999年1月16日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)1998 「まひるのほし」製作委員会

映画レビュー

これも確かにアートだ

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 「何を考えているのか分からない」或いは「何も考えていない」と一般に思われがちな知的障害者とされる人々の内に潜むものを、絵画や焼き物という形で引き出す試みを続ける全国の作業所を巡るドキュメンタリーです。これ、大層刺激的な作品でした。  様々な例の中で僕がもっとも揺り動かされたのは、平塚の「工房絵(かい)」に通うシゲちゃんでした。こうした活動において普通用いられるのは絵画や粘土・焼き物などのいわゆる「美術」でしょう。それは、自分の内にある物を上手く言語化出来ない人々に新たな表現の道を付けようとする試みなのだと思います。しかし、シゲちゃんの場合はその新しい道とは「言葉」なのです。  シゲちゃんは、女性に興味があるらしく、様々な水着、例えば「スクール水着」「ビキニ」「ワンピース」などと言った言葉を独特の角張った文字でカードに書き続けます。或いは、様々な海水浴場の名前を同じようにカードに書き連ねるのです。なぜ水着でなぜ海水浴場なのかは誰にも分かりません。それは溢れる思いを絵にする人に「どうしてこの絵を描くの?」と聞く様なもので意味がないでしょう。ただ、そうしたカードを集めて一つにまとめると何だか大きな動きを持ったアートに見えて来ます。それが本作のポースターにある写真です。つまり、思いを上手く言葉に出来ぬ人から全く別の言葉を用いてそれを引き出す事も出来るという事なのです。こんな事、考えた事もありませんでした。  また、この日は、本作にも登場する「工房絵」の関根幹司さんがお見えになり、シゲちゃんが地域の人に受け入れられる様になるまでの過程を詳しく話して下さり、とても有意義な時間となりました。  更に、驚いた事。本作は障害者の映画と言う事もあり、聴覚障害者様に作品に日本語字幕が付いただけでなく、関根さんのトークにも同時字幕が付きました。関根さんが普通の速度で話す言葉を追いかけて即時的に字幕がスクリーンに映し出され、誤変換部分だけ係りの方が即座に訂正なさいます。書き起こしソフトなるものがかなり進化しているのは知っていましたが、今やここまで出来るのかと驚かされました。こうなると、外国語の同時通訳字幕が出来るのも時間の問題でしょう。凄い時代になって来たなぁ。

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