「途中で遭難してしもうた…」マークスの山 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
途中で遭難してしもうた…
直木賞を受賞した高村薫の同名小説を崔洋一監督が映画化したミステリー・ドラマ。1995年の作品。
暴力団組員が惨殺される事件が発生。
同様の手口で、法務省の刑事課長も殺される。
警視庁の合田警部補が捜査を担当。難航するが、やがて事件の背後にある大きな存在と悲しき犯人が浮かび上がる…。
あらすじだけ聞くと、面白そう。見応えありそうな事件モノ。
今も売れっ子、今や売れっ子、思わずおお~っと唸りたくなるような実力派たちの豪華共演。
その年のキネマ旬報でもベストテン9位、大人向けの一級品。
…のようだけど、
実際見てみると、う~ん、何て言うか…。
人間関係が複雑。と言うか、分かりづらい。
捜査班や別の署の刑事たちとのいざこざ、対立。
捜査線上に浮かび上がった重要人物である弁護士。被害者との関係。今も繋がりある学生時代の山岳部の仲間と、彼らと犯したある事件。
今回の一連の殺人事件の犯人。犯行の動機。ある看護師との関係。
ただでさえ登場人物が多い上に、関係性や背景も交錯。
勿論徐々に繋がりなど分かっていくが…、それでもいまいち釈然としない。
脚本の纏め方が悪いのか、単に自分に理解力が無いだけか。
ストーリー展開のテンポやスリリングさにも欠け、刑事/事件モノの醍醐味をあまり感じられない。
また、あちこちで言われてるように、被害者の生々しい描写、暴力描写、特に犯人と看護師の濃密な濡れ場など、過剰なグロエロ描写がヘンに目立つ。正統派のミステリーと思って見たら、違和感を感じるかも。
犯人の半生として見れば、悲痛なものはある。
その青年、水沢。
幼い頃、冬の南アルプスで、一家心中の生き残り。
精神病院に入院し、そこで、ある男と肉体関係を結ぶ。この男から教えられたある秘密が、恐喝や殺人の動機に繋がる。
精神病院入院時に看護してくれた看護師と再会し、愛し合う。唯一、束の間の幸せ。しかし…。
何故水沢が恐喝や殺人にまで及んだか、これもちと説得力が弱いが、運命に翻弄され、ある場所であるものを抱えた最期は何ともやりきれない思いにさせられる。
豪華なキャストの中でもとりわけ、萩原聖人が印象的な演技を見せる。
(後、名取裕子のヌードやラブシーンも)
前々から気になっていた作品で、結構期待していたのだが、いざ見てみたら…、
不完全燃焼。途中で遭難してしまった。