火垂るの墓(1988)のレビュー・感想・評価
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これは反戦映画ではない。どちらかと言えばウシジマ君に近い。
この火垂るの墓。大人になって随分と見方が変わった映画の1つ。
昔は反戦映画だと思っていたけれど、いまは痛烈な現代社会風刺映画にしか見えない。
というのも清太は、現代で言えば、女を不幸にする男の典型・・・というか単なる甲斐性なしの男の人生を描いているとしか見えない。まあそういうダメ男に対して女の方もそれで満足してるなら、それはそれで幸せなのかも知れないが。その結果として待っているのは破滅である。
戦争があろうとなかろうと、こういう男は今の時代にも結構たくさんいる。
現代であれば、そんな甲斐性なし男でも、離婚したり、親の脛をかじって生きて行くことができるが・・・。
分かりやすく言えば、この清太君、ウシジマ君に出てきそうな感じなんだよね。僕的に言えばだけど。
自分はそれが悪いとは思わない。人生ってそういうもんだよな、と思うだけであり、明日はわが身である。
ここまで救いがなく描くことができたからこそ、
火垂るの墓は何故かわからないが忘れることのできない映画なのだと思う。
高畑勲さんご冥福をお祈りします。
戦争の悲劇・・
納得いかない
なぜ本来の面白さを伝えないんだろう
戦争の犠牲者を忘れるな
今日は終戦の日。娘が観ているTV放映を、ラストだけ後ろから覗く。
戦争が終わって、蓄音機から華やかな音楽が流れる。若い女性たちが明るい声で「久し振り」と喜んでいる。
これを明るく自由な時代の到来と受け止めていた高校生当時の私。同じ年齢となった娘はどのように思ったのだろうか。
言うまでもなくこの原作は野坂昭如の実体験に基づく小説である。彼は終戦を境にした人々の変容を受け入れがたかったのではなかろうかという気がする。
女たちが自由を謳歌できる時代は、主人公の少年にとっては、肉親をすべて失い、そして尊敬すべき父の命を賭した仕事への名誉も失われるという時代に他ならなかった。
おそらく軍人である父の名誉が失われていくことは、終戦を迎える前から彼には感じられていたことであろう。それは、母を失くした後に身を寄せた先の叔母から、学徒動員で勤労奉仕している自分の子供たちとの対比で「何もしない」となじられることでも感じているはずだ。
なぜなら、彼と妹の節子が叔母の家に身を寄せなければならないのは、彼らの父親が海軍の軍人として戦地に赴いているからに他ならないのに、そのことへの尊敬や同情がなく、厄介者扱いを受けているからだ。
この少年にとって終戦とは、すべての希望を失うことである。たとえ、空襲で人々が逃げ惑う日々が続いたとしても、その隙に火事場泥棒を働いて食料を確保できることのほうがありがたかった。そして、父親の働く連合艦隊が、自分とこの国を守り続けていると信じていられることが、彼の唯一の誇りだったのだ。
戦争が終わったときに喜んだ人々も多い中で、新しい時代に生きる希望を失った者もいることを忘れてはならない。これは、その時の職業や年齢、信じていたものの違いによって異なってくる。
忘れてならないのは、戦争で失われた数多の命が、敗戦によって無意味な犠牲とされてはならないということであろう。その時は、よきことと信じて死を賭けていた者たちが馬鹿を見ることのないようにしてやらねば。
そうでなければ社会には刹那主義、ニヒリズムが蔓延し、共同体のために勤める気持ちが無くなっていくだろう。
作画が表情豊かですごいと思った。 とくに涙を流すところはリアル。 ...
作画が表情豊かですごいと思った。
とくに涙を流すところはリアル。
戦時中、孤児になってしまった兄弟。
西宮のおばさんと清太がうまくいっていたら、節子も清太も生き延びられたかもしれない。両親を亡くして、親戚の家に居候して、その家の人とうまくやっていける人もいただろうし、清太のように、まだ子供であるために意地を張って亡くなってしまった人もいただろうと思う。
清太も節子も、西宮のおばさんの家に居続けたら生き延びられただろう、というのは、どうしてお金もあったのに、二人とも死んでしまったのだろう、というのも合わさって、西宮のおばさんの表面的な態度だけを見て家を出ていくことを決心した清太の子供っぽさが際立つ。
もしこの映画が、西宮のおばさんと和解して二人が生きていく、またはおばさんの家を出て二人で生きていく、という話であっても反戦映画になりえた。二人が死ななくてはならなかったのは、清太のまだ大人になりきれないところを描くためかもしれない。
辛い…
人知れず消えていった命
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:85点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
日本国民ほぼ全員が自分のことすらままならず人を助ける余裕など無い時代に、だれにも頼らず清太と節子の幼い兄妹がただ懸命に生きようとする。人知れずひっそりと消えていった二つの生命は、生前の兄のひたむきさと妹の健気な可愛らしさによってその大切さと儚さが強調される。その二人の人物像の作り方の演出が上手いし、声優も良かった。特に妹の幼さを表現した声はいい。
久しぶりに観たけれど、やはり主題が重い。質の高い作品だけど何度も観たい作品ではない。日々痩せ衰えていく二人の姿は痛々しすぎる。駅に座り込み死を待つ少年たちの多さを見れば、二人は例外ではなく当時のありふれた存在で、彼ら一人一人に似たような背景があるのだろう。物語は厳しい現実を見せたが、安易な救済を入れないから作品の質が保たれたと思う。
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