「雪原を血で染める北陸やくざのMADな生き様」北陸代理戦争 syu32さんの映画レビュー(感想・評価)
雪原を血で染める北陸やくざのMADな生き様
DVDで2回目の鑑賞。
関西暴力団の北陸進出とそれに絡んだ地元暴力団の内部抗争を圧倒的なバイオレンスと臨場感あるドキュメンタリー・タッチで描く、監督・深作欣二、脚本・笠原和夫の実録黄金コンビによる入魂の一作。
当初は「新 仁義なき戦い」シリーズの一環として企画されるも、主演の菅原文太が「同じような役ばかりやりたくない」と降板。代役に松方弘樹を立てて製作されました(この交代劇は功を奏したなと思いました)。
さらに、撮影中に渡瀬恒彦がジープに轢かれる大怪我を負い途中降板。
公開後には、主人公のモデルだった組長が劇中の襲撃場面と同じシチュエーションで襲われ殺害されるなど、いろいろと曰く付きの作品であると同時に、日本映画界に燦然と花開いた“東映実録路線”の悼尾を飾ることとなった最後の大花火でありました。
松方弘樹演じる主人公の内側から放たれる狂気は、北陸の荒々しい風景と共に鮮烈な印象を持って画面から立ち昇って来るようでした。敵も味方も手玉にとって文字通り掌で転がしながら、双方を欺き大逆襲を計る様が狡知に長けてさらにMADさに拍車を掛けました。
人の首から下を雪の中に埋めて、周囲をジープで走り最後には首を飛ばすという残虐な処刑シーンがとても衝撃的でした…。他の実録作品を軽々と越える残酷さだなと思いました。主人公たち北陸やくざの何者にも迎合せず、自分たちの土地を守るためには手段を選ばない、狂気に満ちた生態を垣間見たようでした…。
彼を取り巻く周辺模様も秀逸でした…。
そのときの自分の置かれた状況を野生的とも言える直感で的確に判断し、敵味方関係無く男たちの間を渡り歩いていく野川由美子演じる女のしたたかさに舌を巻きました。
様々なキャラクターが登場する中で、白眉はハナ肇演じる組長のどうしようもないヘタレ具合でしょう(笑) 情けない限りですが、不思議と憎めないキャラクターでした。腕を斬り飛ばされるときに流れる「仁義なき戦いのテーマ」が何とも秀逸!(笑)