「人間もまた怪物」フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
人間もまた怪物
フランケンシュタイン・シリーズ(東宝版)第1作。
DVDで6回目の鑑賞。
原案(フランケンシュタイン)は未読。
フランケンシュタインは人間か、はたまた怪物か。その相克がドラマを盛り上げ、自分たちと相容れぬ存在を理解しようとせず排除して来た人類のエゴを糾弾する物語は今尚色褪せること無く、観る度に考えさせられるものだと思いました。
元々、日本にフランケンシュタインの心臓が持ち込まれたのは、不死身の兵士の研究を行うためでした。神をも恐れぬ行為であり、これではもはやどちらが怪物か分かりません。
科学の功罪により誕生したフランケンシュタインですが、異形故に世間から排斥され、悲劇的な末路を辿りました。文明が生み出した負の遺産であるフランケンシュタインと、慈愛の精神で全てを受け入れようとする季子の関わりを通して、人間とは何かと云う問題にまで踏み込むテーマは、原爆攻撃を経験した日本だからこそ描き得たものなのかもしれません。
[余談]
本作には、結末の異なる日本版と海外版が存在しています。
初鑑賞は深夜放送を録画したものでしたが、その際は海外版でした。後にDVDを購入し日本版を観ることが出来ました。
日本版のラストは、フランケンシュタインがバラゴンに勝利した直後地割れが発生し、地中に飲み込まれると云うもの。
海外版はフランケンシュタインの勝利後唐突に大ダコが登場しフランケンシュタインを湖に引き摺り込んでしまう。
伏線も無く、山中の湖に生息している大ダコと云うのは無理があり過ぎてツッコミどころ満載。アメリカの要請で付け足されたらしいですが、アメリカ人はタコ好きなんだなぁ…
[追記(2019/01/05)]
余談でバージョン違いに触れましたが、コメント欄にてご指摘を受けたので調べると、さらに別バージョンがあり、それぞれが○○版と云うように区別出来ないことが分かりました。
DVDには2種類しか収録されていませんが、過去のリバイバルでは3つ目のバージョンが上映されたそうです。プリントが残っている可能性があり、DVDに入れて欲しかったです。
バージョン違いのラスト・シーンについては前から特撮ファンの間で議論の的になっており、いったい何が真相なのか、何故資料が殆ど残っていないのか、興味が尽きません。
[追記(2024/04/19)]
アマゾン・プライム・ビデオ(東宝名画座)で配信されているバージョンは、ラストに大ダコが登場するものでした。
[以降の鑑賞記録]
2021/08/15:Blu-ray
2021/08/15:Blu-ray(別バージョン)
2024/04/19:Amazon Prime Video(東宝名画座)
※再投稿(2019/01/31)
※リライト(2021/08/15)
※修正(2024/04/19)
shu-32さんへ
素敵では無いですよ。映画館のオーナーが母方のばあ様と所縁のある方だったらしく。両親は酷く嫌がってました。若い人はピンと来ないでしょうが当時の映画館はヤクザ稼業の一つ。子供が一人でヤクザの家に入り浸ってる様なものですから。
特撮ものがお好きなんですね。今年はキングギドラがやって来ますね。主役はゴジラだけど。ドビュッシーの月の光をバックに、怪獣をどれだけ美しく見せてくれるのか、期待が膨れ上がりすぎて最近困ってます。待ちきれない!
bloodtrailさんへ。
素敵な想い出ですね。幼い頃の映画体験ほど、鮮烈なものはないなと、常々思います。
リアルタイムで本作を映画館のスクリーンで鑑賞なさったというのが、とても羨ましいです。
私も知らないことだったので、とても勉強になりました。特撮が大好きで、知識は大分ある方だと思っていましたが、まだまだ修行が足りません…。ありがとうございました!
syu-32さんへ
結論から言うと、私の記憶が間違いだと思います。おさがわせして、面目無いです。
wikiでチェックしました。公開は1965年の8月、私はまだ5歳です。さすがに大ダコの記憶は、その後のテレビバージョンのものが混同していると思います。サンダとガイラが1966年で、これも就学前の年齢です。
九州の生家の近所に映画館がありました。私はほぼ毎日、「もぎり」の「番台」のおばちゃんに挨拶して中に入ってたらしいです。只見ですね。1966年末までは、そこに住んでおりましたので、この二本は10回やそこらじゃ済まない位の回数、見てると思いますが、テレビバージョンの記憶が上書きされてるんだと思います。
しかし、結末に複数のバリエーションがあったとは知りませんでした。貴重な情報です、私にとって。ありがとうございました。
はじめまして!
コメントありがとうございます。
ラストシーンの問題に関しては諸説あって、ご指摘をいただいた後に調べてみましたが、どうも大ダコ出現バージョンは、劇場公開後のテレビ放映で初めて登場したという説があるようです。
実際海外で公開されたのも、フランケンシュタインがバラゴンを倒した後地割れに呑み込まれてしまうバージョンだった、という話もあります。
しかし、東宝公式の文献やその他の研究本でも書いてあることがまちまちだったりします。本当のところがどうだったのかは、正確なところははっきりしていない、というのが実状なのかもしれません。
レビューの記述を改めようと思います…。
bloodtrailさんが大ダコ出現バージョンを
ご覧になったのが映画館で、しかも公開当時ということであれば、もしかしたら新しい発見かもしれません! 地域によってバージョンが違っていたという可能性もあります。
syu-32さんへ
はじめまして!
子供の頃、この映画は劇場で観ました。最後に現れた大ダコが、フランケンを水中に引きずり込んで行き「何でなん??」と、悲しくなった記憶があります。
日本版も、オリジナルは大ダコでは?