「濱マイクの「遥かな時代の階段を」を思い起こさせた」豚と軍艦 はるさんの映画レビュー(感想・評価)
濱マイクの「遥かな時代の階段を」を思い起こさせた
とは言うものの林海像の映画より遥か昔に作られている。だから、この映画の続編のような気がしていた。横須賀のどぶ板から黄金町に流れてきたのはそれなりに理由があってのことだろうに。
それにしても変わりはしない。時代の階段を昇り切ったところで愚かな者は限りなく透明に近く浅はかだ。あやふやで猥褻な日本を生き抜くのはいつだってアフリカから逃れてきたハイエナのような人間なのだ。しかし女だけはそんな時代の隙間を縫いながら知恵と度胸で飛び越えて行く。まるで飛翔し続けるハヤブサのようだ。吉村実子が好きだった。この役にハマりすぎていて本物の吉村実子もこんなふうに生きてきたのではあるまいか…と錯覚してしまいそうになる。強くはないがトコトン弱くはない。戦後の日本は手のひら返しが得意な男より女のクソ度胸で再興されてきたのだろう。安保闘争の成れの果てが見事に実証されている。闘争で世の中は変わったりはしない。
女の底意地の悪さと天変地異が世の中を変えるのだ。と、今村昌平が静かに叫んでいる。
そんな声が聞こえた気がした。
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