劇場公開日 1987年10月31日

BU・SUのレビュー・感想・評価

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3.0心の閉塞感=心のブス

2025年7月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

幸せ

1987年公開作品

2度目の鑑賞
久々
今世紀初めてかもしれない

監督は『つぐみ』『トキワ荘の青春』『東京夜曲』『竜馬の妻とその夫と愛人』『トニー滝谷』の市川準
脚本はTBSドラマ『クリスマス・イブ』NHK朝ドラ『ひらり』『私の青空』の内館牧子

粗筋
家庭の都合もあり親と離れ片田舎から東京の高校に転入してきた森下麦子
神楽坂の置屋の女将で叔母の胡蝶に住み込みで芸者見習いとして稽古に運び屋に忙しい毎日
根暗で口数少ない麦子ではあったが芸者の卵ということで文化祭の出し物を発表する立場を押し付けられてしまう
胡蝶に頼み込み歌舞伎の「八百屋お七」をやることに
黒子は桜子と清水

CMクリエイター市川準映画監督デビュー作
CM制作出身らしい映画作品
編集の繋ぎ合わせは青春のイメージ
意味がないカットも目立つ
監督なりに意味はあるんだろうけど

根暗の女子高生が心を開き明るくなる話なのだがその過程が今ひとつ

石原裕次郎ではないが映画は本来映画館で観るものだが特にこの作品はそう思う
映画は映画館で観ることを前提に作っているわけだからTVやスマホやタブレットでは充分に楽しめないのは当然
宮城県ならフォーラム仙台あたりで再上映されたものを観たいものだ

TVドラマの脚本家内館牧子の今のところ唯一の映画作品の脚本提供
内館牧子でノベライズされた講談社X文庫の小説は10代の頃読んだ

内館牧子は見た目のブスとして麦子を描いているが市川準は性格ブスとしてこの作品を撮っている
しかし広岡由里子演じるブスが出る
富田靖子がブスなら日本人女性の99%はブスだ

こういうキャラなので主演のわりに富田靖子の台詞は少なめ

教室で席に座ったままの他を寄せ付けない麦子に言い寄る男子を彼女が右手一本の裏ビンタで弾き返すシーンは初見から印象に残っている

稽古に身が入らないために罰として人力車と共にランニングするシーンも印象的

前世紀若い頃に観た強い違和感は高校生なのに制服がないこと
しかし首都圏ではさほど珍しいわけでもなさそうだ
おそらく予算の関係で制服を用意できず俳優の私服で撮影されたのだろう

「教室にいる人は死んではいけない」と酔っ払いの女がビアガーデンで話しかけてくる
無反応の麦子
死んでいけないのは学校関係者だけではないでしょう

登校拒否して千葉に行った麦子に説教する叔母役の大楠道代
「逃げて逃げて逃げまくるがいいよ。そうやって逃げてるうちに何か見つかるかもしれないね」
良いものなら良いけど見つかるものが良いものとは限らないね
探すを諦めてしばらくしたら見つかることもあるけど

八百屋お七はトラブルのため大失敗し幕引きという悲しい展開
普通大成功して明るくエンディングでしょ
『フラガール』にしろ『スウィングガールズ』にしろ
モヤモヤした感じで終わりは突然やってきた

エンディングテーマは原由子

エンドロールは様々な表情の富田靖子
あっこれはもしかして富田靖子をプッシュしたいアイドル映画なのか

配役
東京の凌雲高校の3年B組に転入してきた女の子で芸者修行しながらお茶屋のお運びさんとして先輩芸者や客の料理を配膳している心のひねくれた陰気臭い性格で口数が少ない森下麦子(鈴女)に富田靖子
置屋「蔦屋」の女将で麦子の叔母の胡蝶に大楠道代
「蔦屋」の跡取りで人気芸者胡蝶の娘で麦子とは従姉妹同士の揚羽に伊藤かずえ
3年B組の生徒でボクシング部所属の津田邦彦に髙嶋政宏
3年B組の生徒で津田の彼女で文化祭の実行委員の京子に藤代美奈子
お座敷の客で揚羽と結婚したい北崎にイッセー尾形
3年B組の生徒で登校しなくなる怜子に白島靖代
「蔦屋」の先輩芸者のぽん太に室井滋
「蔦屋」の先輩芸者の春千代に伊織祐未
「蔦屋」の先輩芸者の菜の花に香苗圭子
「蔦屋」の芸者たちの色々と世話をする専門の人の辰巳にはやしこば
3年B組の担任教師で社会科を担当する中川に中村育代
3年B組の生徒に麦子の隣の席に座っている清水岩男に星野雄史
3年B組の生徒で虐めを庇ってくれた麦子と親しくなる桜子に広岡由里子
キャップを被ったボーダーシャツの男子生徒に山崎直樹
邦彦のトレーナーに輪島功一
宴席で揚羽に着物の時にブラジャーを付けるかどうかを尋ねるお座敷の客に大塚周夫
両隣にいる芸者たちに知人の役者の話を聞かせるお座敷の客に中村伸郎
お運びをする麦子に肩を揉むよう命じるお座敷の客にすまけい
TV番組の司会者に小倉久寛
凌雲高校の文化祭にゲスト出演したピンクジャガー(浜田範子&鈴木幸恵)にピンクジャガー(本人役だが凌雲高校OGという設定)
スナック&喫茶店を営む麦子の母の森下雪乃に丘みつ子
麦子を口説いて喫茶店に連れて行ったあとラブホテルにも連れて行こうとしたサラリーマン風のナンパ男に峯のぼる
麦子の故郷での友人のナナに島崎夏美

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野川新栄

5.0主人公麦子(演:富田靖子氏)の眼差しは素晴らしく、確実に女優へステップアップした作品でしたね。

2024年12月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

目黒シネマさんにて今年で11回目になる「~人を観るよろこび 第11回 市川準 監督特集~」開催(2024年11月24日~11月30日)。本日2本目は富田靖子氏主演『BU・SU』(1987)。

『BU・SU』(1987)
「禁煙パイポ」「金鳥タンスにゴン」「エバラ焼肉のたれ」「ヤクルトタフマン」など大ヒットCMを手掛けた市川準監督の監督デビュー作。原作は内館牧子氏、主演は富田靖子氏。『アイコ十六歳』(1983)や大林宣彦監督の名作『さびしんぼう』(1985)、『姉妹坂』(1985)の明朗快活な役柄のイメージ、主題歌の原由子氏『あじさいのうた』も明るくポップなのでキラキラした青春アイドル映画と思いきや一転、複雑な家庭環境からひねくれた根暗で陰気な少女役、ラストまでほとんど笑わず、公開当時驚愕した記憶がありますね。
久々に見直して観ると、文化祭で歌舞伎の演目「八百屋お七」に挑戦することになり、今までの鬱屈した生活から脱して、顔を上げて真剣に取り組む主人公麦子(演:富田靖子氏)の眼差しは素晴らしく、確実に女優へステップアップした作品でしたね。

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矢萩久登

3.0ヒロインは別に性格ブスというわけでもないし、なぜこんなタイトルにし...

2023年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ヒロインは別に性格ブスというわけでもないし、なぜこんなタイトルにしたのかよく分からない。
特に大きな事件もなく、日常生活が淡々と描かれていく様子は退屈ではあるが、悪くはなかった。

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省二

3.0BU・SUはBU・SUなりに少しずつ成長していく

2020年2月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

幸せ

2008年に59歳で早逝した市川準監督の1987年のデビュー作。
それにしても、当時18歳でキュートな魅力満載の富田靖子を主演に迎え、このタイトルとは…。
しかしこのタイトル、容姿の事ではないらしい。(だから敢えてアルファベット表記なんだとか)

田舎から上京してきた高校生の麦子。
学校に通いながら、芸者見習い修行中。
一見普通の女の子のようだが、彼女、性格が…、

所謂“性格ブス”。
でも、見始めた時はさほどそうは感じなかった。
見た目は可愛いのに毒舌ばかり吐く女王様気取り(ステレオタイプでスマン…)かと思いきや、非常に内向的。田舎から出てきた女の子のあるある。

…が、見ていく内に徐々に。
とにかく無愛想。顔も上げず、笑顔の一つも見せず、話し掛けられても応えるどころか返事すらしない。
内向的・引っ込み思案と言うより、陰気で閉鎖的。
よくこれで芸者の見習いを…。
人付き合いの下手さに見ていて何だかハラハラ、イライラ。

まあでも、そんな女の子が少し殻を破り、成長していく様は心地よい。
“少し”というのがポイント。
劇的に変わったら如何にもなTHE創作。
人は急激には変われない。少しずつ、少しずつ。
あんなに“性格ブス”だった麦子がラスト、学園祭で覚えたての舞いを披露。
少しずつだから、共感し応援したくなる。
富田靖子がキュートな女の子から演技派に転身し、難役を見事こなしている。

市川準監督の作風イメージは、非常に丁寧な人間描写と繊細な感性。すでにこのデビュー作で確立している。
何かのプロモーション?…と思うようなシーンも多々あり、CM出身らしい。
普段ならそのシーン必要か?…と思うところだが、市川監督のセンスが冴え、田舎娘の視点から見た都会の姿や若者文化をリリカルに映し出している。

監督のセンスと、女の子の成長物語と、そして言うまでもなく富田靖子の魅力が詰まった、青春ムービーの佳作。

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近大

3.0上京ものがたり

2014年6月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

東海道線沿線の地から、神楽坂は伯母の置屋(?)に上京、奉公しながら高校生活をリスタートさせる森下麦子(富田靖子)。
慣れぬ土地、人間関係での衝突。
'八百屋のお七'と出会い、向き合うことで成長するビルドゥングスロマン。

エンドロール、スチールに映し出される富田靖子がとても好き。消えゆくであろう神楽坂の空気感も良かった。

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Nori