「気品ある女性の不倫とその結末」美徳のよろめき M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)
気品ある女性の不倫とその結末
三島由紀夫のベストセラー小説を新藤兼人が脚色。名門の家に生まれ、経済的に恵まれた結婚をした倉越節子(月丘夢路)は、避暑地で出会った青年と愛し合うようになる。プラトニックな関係にとどめようと思いながらも、許されぬ恋にのめり込んでいく節子の心理を描く。
(広島市映像文化ライブラリーより)
中平康監督は、『月曜日のユカ』『狂った果実』と私の好きな監督である。
この『美徳のよろめき』の原作は、三島由紀夫の長編小説。名家の生まれで躾も厳しく、気品のある振る舞いの人妻(月丘夢路)と年上でガサツで品のない夫(三國連太郎)。そこに結婚前、テニスの男友達(淡い恋人)と再会し、会わずにはいられない気持ちがだんだんと深みにハマっていく。
相手の男性は強引に引っ張っていくタイプではなく、また、月丘夢路も人妻であることから、日記を付けながら思いをつのらせていく。しかし、あくまでも美徳を貫こうとする。一方で、女友達は自由に不倫を楽しんでいる。
新藤兼人脚色ということで、起承転結を重んじる内容だと思っていたが、「転~結」があっという間に展開し、モヤモヤした感がある。その辺りの人妻の苦悩は相当なものがあったと思われるのだが。三島由紀夫の小説のストーリーは踏んでいるようだが、小説ではどのように描いているのか気になるところである。
映画ポスターでは、「官能の海にただよう若き人妻 節子」「夜読んでは眠れないーとまで評判される三島由紀夫問題作の映画化!」と結構過激な言葉が並んでいるが、昭和32年の制作なので女性の不倫を映像で表現する方法もある程度節度あるものとなっている。名家の出で、気品高く、抑制の効いた、和服が似合い、しかも官能的な雰囲気を醸し出す人妻を演ずる月丘夢路は、この役にとてもふさわしいと思う。
広島市映像文化ライブラリー月丘夢路特集
「美徳のよろめき」
1957(昭和32)年 日活 96分 白黒 16㎜
監督/中平 康
出演/月丘夢路、三國連太郎、葉山良二、南田洋子