劇場公開日 1958年6月24日

「観ておく意味も意義もある重要な作品」美女と液体人間 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0観ておく意味も意義もある重要な作品

2019年12月7日
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正直つまらない
90分に満たないにも関わらず長く感じられて、見終えるには忍耐が求められた

1954年のゴジラの史上空前の大ヒットを受けて、怪獣もの路線とは別に、大掛かりな特撮が不要で比較的お手軽に製作可能な特撮映画として、同年に透明人間、翌年に獣人雪男が製作されている
本作はその怪人もの路線の第3作にあたる
本作の後にも、電送人間、ガス人間第一号と続く

透明人間は特撮が活かし易いし、H.G. ウェルズの古典で誰もがお馴染みの題材だから最初の作品に相応しい
以降の作品のモチーフは、透明人間からの連想かと思われる
何々人間という感じのブレーンストーミングで安易に企画されていったのだろう

けれども液体人間という映像は、ターミネーター2の液体金属のサイボーグが登場するまでは唯一の存在だったはずだと思う

前作の地球防衛軍で模索した大人が観たくなる特撮映画を目指した作品であるのは確か
より大人よりに振っている

大人の特撮とは何か?
シリアスな内容?
色っぽいシーン?
少なくとも本作はそう考えたようだ

シリアスな内容はどうか?
第五福竜丸被爆事件をモチーフに作られた映画はこれが3作目
ゴジラ、生きものの記録、本作
しかし取ってつけた感しかない
単に液体人間を登場させるための良いダシにされただけに過ぎない
ラストシーンの警句も良いこと言った振りだけだ

液体人間にさせられてしまった人間の悲惨とかを掘り下げようというような大人の鑑賞に耐える深みのある脚本にはまるでなってない
単なる化け物で焼き殺してしまえという乱暴なお話でしかない

海上を進む貨物船を特撮で撮る意味はまるでないし、クライマックスで下町が炎上する必然性もない
特撮で撮りたいだけのようにしか感じられない

一方、美女は白川由美でまことに東宝らしい美女で、これは合格
キャバレーでの歌唱シーンも美しく、半裸のステージ衣装だけでなく、下着シーンもあり、大人の求める映像になっている

元々企画の出発点であったであろう、アメリカの人気SF小説雑誌のアメージングストーリーズとかの表紙を飾る半裸の美女のイメージにかなり寄っている
これなら輸出の可能性も考えられなくもない

ともあれ、本作を含む怪人の路線はSFスリラー映画の始祖の一つであるのは間違いない
アメリカのテレビ映画トラワイトゾーンはこの翌年になる
もしかしたら影響を与えたのかも知れない
もちろんウルトラQ、怪奇大作戦に直線的に繋がっているのは一目見れば分かる話

本作が無ければこれらも生まれなかったかも知れないし、後の日米のSF 映画の隆盛の裾野を作り広げたといえるのではないだろうか?

その意味で観ておく意味も意義もある重要な作品

あき240