春の戯れのレビュー・感想・評価
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高峰秀子
フランスの戯曲家マルセル・パニョルの名作『マリウス』を山本嘉次郎が翻案した作品。
「だから文明開化ってもんは嫌なんだ」と口癖のように言う金蔵(徳川)。正吉は金蔵のことを「ちゃん」と呼ぶ。かなりの放蕩息子なのか、甘えん坊なのか、お花にも尻にしかれそうな雰囲気だ。乗組員たちは皆日本人キャスト。西洋に憧れている正吉は居酒屋にやってきた乗組員と水夫長にあれこれ質問すると、水夫長は「出航までに訪ねてこい」と言われた・・・
越後屋の大旦那徳兵衛(三島雅夫、老けてはいるが当時43歳)は19のお花(高峰秀子当時25歳)よりも40も上のじじい。縁談が持ち上がってからは正吉を妬かせようと結婚を承知したと言う。金蔵もお花の母親おろく(飯田)も正吉とお花が結ばれればいいと思ってるのだ。しかし西洋への憧れは増すばかり。お花は徳兵衛に対し、はっきりと正吉が好きだと伝えて縁談を断った。人間が出来ている徳兵衛はあっさり身を引き、お花のために婚礼用の着物を差し出すのだった・・・しかし、正吉はお花が好きなのに船を選ぶ。あまりにも大きな夢を抱く正吉に身体を許してしまう・・・その晩、金蔵の説得もあり、船を諦めた正吉・・・どっちなんだよ!と、今度はお花が「まだ間に合う、行っておいで」と。結局、正吉は船に乗り込んだのだ。
月日は流れ、お花が妊娠していたことがわかる(わかんねーよ。そんなシーンなんかないんだから)。しかし、正吉の手紙には航路が変更となり、帰れるのは翌年の秋になるという。そして徳兵衛はお花が正吉の子を宿していても結婚を快諾し、夫婦となったのだ。そして1年半後・・・帰ってきた正吉はお花と子どもを取り戻そうと徳兵衛たちの前に現れる。そこでお花は徳兵衛の愛情の深さを語り、正吉に諦めさせるのだった。正吉は再び船に乗って旅立っていった。
基本はメロドラマなのに、落語のようなやりとりが楽しい。正直、金蔵やおろくのおかげで笑えるところが何度もあった。高峰秀子の演技ももちろんいい。特に最初の手紙を読み上げる高峰と徳川のシーンはかなりの長回し。それよりも台詞は少ないものの落ち着いた大人の役を演じた三島雅夫がいい。
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