HANA-BIのレビュー・感想・評価
全10件を表示
静かに狂い咲く「終わり」。
◯作品全体
主人公・西と、下半身不随になってしまった堀部。銃撃をきっかけに2人の人生は静かに終わりへ向かっていくのだが、終わりに至るまでのコントラストが印象的な作品だった。
堀部が撃たれるまでは、病弱な妻を持つ西が憐みの眼を向けられる対象だったが、堀部が下半身不随になり家族がいなくなったことで、その眼は堀部へ向けられる。それで西が幸福になったかというとそうではなく、妻の病気が完治しないことを告げられていて、こちらも悲しみの淵にいる。そんな二人が砂浜で海を見つめるシーンは淡々とした口調での会話だが、どちらにも救いがなく、それぞれの「終わり」へ向けた分かれ道のようなシーンだった。慰めあうでも感情的になるのでもなく、大人の男として現状を受け止めようとする粛々とした雰囲気が、心に刺さった。
銀行強盗で得た資金で妻との最後の旅行を楽しむ西と、花というモチーフを見つけて絵に没頭する堀部は、人生最後の狂い咲きの季節だったのかもしれない。アクションの多い西と、絵という静止画で表現する堀部。それぞれの今をそれぞれの手段で表現するコントラストが鮮やかだった。
罪を犯したことによる自身の破滅と妻の死が待つ西。小さな生きがいである「絵を描く」という趣味のモチーフが無くなっていく堀部。コントラストがある一方で、向かう先は同じところしかないのが切ない。
そして咲く花の美しさと表裏一体である、そのあとすぐの「終わり」の気配。その気配を常時意識させる北野作品の叙情が強く感じられる一作だった。
〇カメラワークとか
・一番最初のシーン、作品のファーストカットで空を映してその直後、にらんでるチンピラのアップショットにしてるのが面白い。インパクトあったし、そこに至る理由を後でカメラを引いて映しているのがテンポよくてかっこいい。
・被写体とかなり距離をとったバックショット、他作品以上に北野作品でよく見る。今作で言えば車いすに乗った堀部が海を見つめるカットとか、ラストの西と妻のカット。寂しさが強く伝わる。
・雪山の車内でヤクザを殺したあとのカット、真俯瞰からそのままカメラを旋回させるようにして車を降りてくる西を映し、目を怪我したヤクザと対峙する。面白いカメラワークだった。
・文字で雪や自決を表現する絵の映し方が巧かった。本来ああいう絵を自分の目で見るとき全体像を見てから細かな部分に目を向けると思うんだけど、ここではカメラによって強制的に細かな部分を見せられ、最後に全体像を見る。映像だからこそだし、この絵だからこそのギミックになっていた。
〇その他
・堀部が描いた絵以外にも、病院の廊下とかヤクザの事務所とか、いろんなところに北野武作っぽい絵が出てくる。物語と絵を重ねるにはちょっとやりすぎ感もあった。花の顔をした動物たちの絵は衝撃的だったけど、モチーフを見つけた堀部の喜びを咲く花に重ねてる感じだった。そしてそれが必ず枯れるというところも含めて。
・個人的な好みとして、堀部が撃たれる前にもう少し西・堀部コンビの暴れっぷりが見たかった。イケイケの二人を見たあとに銃撃後の二人を見せられたら、その落差っぷりがかなり心に刺さる気がする。
・ほっかほっか亭が出てきた。懐かしい。
刑事が出鱈目な事をやる。キャラハン刑事に叶わん
コメディアンなんだから、笑いを入れるべきじゃないかなぁ?
花火と夏。割とわかりやすい設定で、殺人と言った情緒の対義語をしでかす。しかも、元体制的な価値観をもった「刑事」と言う職業。モラルも道義的責任もあったもんじゃない。
なんでここまでこだわるのかわからない。題名が
HANABIで花火なんだから、一瞬の一期一会であるべきだ。
例えば、「復讐の連発花火」とか「花火が静かにやってくる」とかにすれば、ベネチアだからもっと受けたんじゃないだろうなぁ。
ちなみに、過剰発泡の場合、最大15年の実刑になり、強盗とかの余罪があれば、無期懲役もある。複数人なら、言うまでもなく死刑だってある。
ちなみに、愛の無いAIはこの映画知らなかった。つまり、アメリカのAIは知らないって事はイタリアのベネチアだけで評価されたのだろう。
愛の無いAIに一度聞いて見る事を薦める。
続荒野の用心棒とかこの映画とか、かなり適当に嘘をつかれる。
とてもよかった
公開時以来2度目だ。当時見た時は夫婦愛が強く打ち出されていて、実感が伴わないと思ったし、たけし自作の絵を大杉連の作品としていい絵扱いしていることにナルシズムが過ぎる感じもしておもはゆかった記憶がある。26年ぶりに改めて見ると、言葉を交わさない夫婦の様子にしみじみとした思いやりの良さがあり、銀行強盗がすんなり成功するし、ヤクザにまったくひるまないたけしがかっこいい。たけしが全くかっこ悪い場面がなくてやっぱりナルシズムがすごい。しかし重病人である岸本加世子の負の側面が全く描かれなくてファンタジーだ。現実はもっと厳しいだろう。
岸本加世子とビートたけしは『刑事ヨロシク』以来ではないだろうか。
男の喪失をロマンチックに
子供を失った。
妻は癌になった。精神的にやつれ声も出さない。
部下も失った。
またもう一人の部下は命は取り留めたものの、家族と足の自由を失った。自殺未遂もした。
ヤクザから金を借りたり、銀行強盗をしたり
その金で部下に絵の具を買い、妻とは最期のドライブをする
最期ののドライブは誰にも邪魔をさせない。
やってくるヤクザを冷酷に殺す
たけしは感情の起伏が乏しく、淡々と悲しみ、淡々と人を殺す、寂しげな男。
たけしがちょけて妻が笑うシーンがいくつかあるが、どれも良い
花火の発射が遅れてたけしがこける
トランプのカードを車のミラー越しに当てる。クランキーチョコ
などなど
部下の絵として挟まれる絵画が印象的
ひまわりの顔をしたライオン
雪という漢字で降る雪に、自決の赤い文字
ただ破滅に向かおうとするたけしを、どこか儚く美しく描いているのは正直好みが分かれるところ
男の喪失はそんなにクールじゃなくたって良い
どこかロマンチストすぎるように感じてしまう
最近のアカデミー賞授賞式でのウィルスミスのような。
妻を守る夫という役割に、酔っているような感じ。
今見ると少し古い価値観に思えて、距離を置いて見てしまうところがある
まあ20年以上前なので仕方ないということで
死生観の伝え方
「その男、凶暴につき」に始まり「ソナチネ」を経て本作が当時のたけし映画の集大成とも言えるだろう。
多くは語らず表情で物語る。数少ないセリフは訥々と語られ感情の起伏が見当たらない。ヤクザとのやり取りでさえ、淡々と進む。それでいて恐怖を覚える。
元刑事がヤクザから金を借り、盗難車をパトカーに仕立て銀行強盗を働くなど、たけしならではの荒唐無稽な発想で、これだけ死生観を訴えている物語にも関わらず、悲壮感が漂わないのは、たけし特有のユーモアだったり場面に合ったたけしの挿入画のお陰かもしれない。
多くを語らない分、一言一言の重みがある。
「ありがとう」と「ごめんね」。
夫婦間の会話は、いや、人間の気持ちを伝えるのに必要な言葉はこの二言で充分なのでは、と思わせる岸本加世子の演技に、この映画(物語)が進むにつれ堪えていたものが一気に弾き出されたような気がした。
潔
無駄口は一切ない作品でした。
台詞で全てを説明しようとする映画が多い中、その表現力が高い評価を得ていることに納得しました。
命を落とした部下の妻子や、障害を抱えた上に妻子にも逃げられ、自殺を図った同僚を気遣う優しさ。
子供も亡くし、余命幾ばくもない妻への並々ならぬ深い愛情。
それらは、言葉はなくとも西の行動に表れていました。
一方でヤクザには容赦なく暴力を振るいます。。
凶暴な敵意と、不器用なほどの厚情という、大きな振り幅を見せる西が格好良いです。
闇金に借金しており、何をするかと思えば本当に警官姿で銀行強盗をして返済。
どうしようもない不幸が次から次へと覆い被さる中で、シュールな?笑いがちょいちょい入ってくるのはコントの発想なのでしょう。(全然笑えないのですが。)
不思議な絵も独創的でした。
ほとんど言葉を交わすことなく最期の旅をする西夫婦の、以心伝心の関係が素敵でした。
「ありがとう、ごめんね」の言葉が沁みます。
美しく咲いて散る短命の花々や、着地と同時に消えるまばゆい粉雪か、真っ赤な血潮で飾る侍のような自決か、一瞬輝く花火のように夜空へ消えたい、そんな鮮やかな死生観を描いているようでした。日が沈む方角から西という名字なのでしょうか...?
辛さを分かってあげてほしい
小学生の時、テレビの放送で見て全くわけわからなかったが、最近DVDで見直す機会があった。
いわゆる泣き所とかはない。しかし見終わった後に噛み締めていると、つっと涙が出てくる、そんな映画だ。
内容の話をします。
主人公は重い病を抱える奥さんを持っています。そしてその病院代で莫大な借金をヤミで借りています。
あるとき奥さんの見舞いにと言わて、張り込みの現場を離れたら、そのすきに同僚が犯人に銃撃される。ひとりは下半身不随になり、その同僚も最後は奥さんも見舞いに来なくなるなどします。
主人公は自分の大切にしていたものが次々に壊れていくなかで、そのつらさを一人で抱え込みます。
最終的には銀行強盗で借金をチャラにして、刑事も辞めて治る見込みのない奥さんと二人だけの車の旅に出ます。金をせびりに来るやくざを振り切りながら。
いきつくところまで来てしまった主人公と奥さんは、青い海を眺めながら自殺――そこで映画は終わります。
主人公はほとんどしゃべりません。でも、その身に起きている事態は普通の人が抱えきれるものではないですし、実際壊れていきます。
映画のジャケットには「その時、抱きとめてくれる人はいますか」と書かれていますが、この声にならなかった思いを観客側でくみ取れた時にこそ、この映画の神髄が見えてきます。
日本映画史に絶対残さなければならない1本です。
映像で語る
台詞が少なく独特のテンポですすむ、たけし映画らしい作品
ポンポン進んだり、止めてみたりこの感性は
真似できませんね。
黙ってるシーンや引きの映像にも訴えかけるものや哀愁があって素晴らしいです。
止め絵30秒とか1分とか普通怖くてできません
ラストシーンの妻の「ありがとう、ごめんね」は胸に突きささりました
わかってないと思ってた妻は全てわかっていたんだなぁ。
沈黙は金
タケシが度を越えた無口キャラで内容が掴みにくい。
そのせいかわからないが、ストーリーが腑に落ちない。
刑事が銀行強盗という正反対の道を選ぶ理由はよくわからないし、
妻が不治の病だから心中するというのもリアリティがなくしっくりこない。
あと見ず知らずの子どもの前で心中して、
わざわざ一生物のトラウマを植え付けることはないだろうに。
という具合にいくつかひっかかったが、
静かなキタノさんの世界観が全面に出ていて、見る価値あり。
監督のセンスが光る…静寂の銀行強盗
映画の歴史で
銀行強盗のシーンなんて星の数ほどあるんだろうけど
こんな銀行強盗を思いつくとは
やはり芸人として生きてきた人間だからこそなんだろうな
こんな発想は誰にも真似できない
全10件を表示