麦秋のレビュー・感想・評価
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戦後日本のスクラップ&ビルドを家族というフィルターを通して描かれて...
戦後日本のスクラップ&ビルドを家族というフィルターを通して描かれている。小津映画でもかなり地味な部類
・子ども2人が出てくるとわくわくした ・杉村春子があまり目立たない...
・子ども2人が出てくるとわくわくした
・杉村春子があまり目立たないなぁ、おかしいなぁと思ってたけど後半の展開で納得
・自分で結婚を決めた紀子に対する家族の反応が時代を表してる。いや、ひょっとして現代も陰でそういう反応してるのか?
一番好きなシーンは原節子と淡島千景が東北弁で会話するところ。後半...
一番好きなシーンは原節子と淡島千景が東北弁で会話するところ。後半になって笑えるシーンがいっぱいでした。
これは身につまされる内容であった上に母親と一緒にと観てしまった(子供が居たほうが結婚できるのかぁ)。と、何かを言われるんじゃないかと、びくびくしてしまいました。
笑顔の裏は?
紀子は本当に矢部が好きで嫁ぐことにしたのだろうか?惚れていた相手に見合いを仲立ちされたところに秋田への転勤が決まった矢部は渡りに船だったのか。自分が独身でいることが家族を繋ぐ鎹に成っていることに気付いていたのか。紀子の笑顔の裏側にある感情は何だったのか。色々と自分にははんだんがつかなかったが、画面の構成や仕草、間の取り方、やり取りの言葉などすべてのがとても印象的。
『もののあはれ』の一歩先
一見地味な物語ですが、そこには人間の心の変遷や営みが豊かに描かれており、偉大なる傑作でした。さすが現在でも語り継がれる巨匠・小津安二郎。
本作は結婚の話ではありますが、次男の喪失を家族が乗り越える話でもあると感じました。間宮家は一見平穏そうであり、実際に平穏に暮らしているのですが、戦争で次男を失うという、非常にヘヴィな傷を抱えています。不在である次男を語る場面になると、映画のトーンがグッと重苦しくなります。戦死通告が来ていないから、母親は受け入れられていないし、父親も「戻ってこない!」という口調からは無理に突き放しているようにも見えます。
そんな中、末子・紀子の結婚話が勃発します。あまり結婚についてポジティブな言及をしない、勧められた相手の写真をシカトしようとする等、紀子はもともと結婚そのものに対して関心が低いように思います。
そんな紀子が物語の中盤で突如結婚を決意するわけですが、相手・流れともに突飛な印象を受けます。しかし、その相手が兄とつながりの深い人物であり、決意の直前に、その人物から兄からの手紙を受け取る約束をする等、紀子の結婚の決意には失われた兄が深く関係しているように思えました。
紀子の決断は、個人的な意志を超越したもののように思えます。まるで、向こうからやってきたものにフッと応えたような、突然だがとても自然に感じられたのです。大いなる力が、兄の存在を内側に留めようとしているように働いているのではないか、と思えてならないです。
この決断に家族は反対します。その奥底にある理由は、認めたくない次兄の死を受け入れざるを得なくなるからかもしれません。しかし、傷を癒すには向かい合うしかない。紀子の決断は自分のためでもあり、家族の再生のためでもあったのでは、と考えています。
紀子を突き動かした力は、次兄を含めたこれまでの間宮家の歴史なのではないでしょうか。穏やかに、愛を与え合う家族だったからこそ、家族の内なる力があった。だから家族が受けた傷を自らの力で癒せたのでしょう。ここで家族はついに麦秋という収穫のときを迎え、次兄を送ることができ、家族写真を撮り、それぞれの道に進むことができたのだと思います。
中盤に風船が空に舞い上がるシーンがありますが、振り返ると、まるで次兄の魂が天に還ってゆく姿のようにも感じられました。
『もののあはれ』という言葉があります。いずれ消えていくものが持つ一瞬の美しさと哀愁、といった概念だと思います。ベースになるのは無常観。裏返せば、永遠なるものを得ることのできない諦念や虚しさがあるとも言えます。小津はもののあはれへの感受性が強く、それを見事に映画化してきたように想像してます(断言できるほど小津を観てないので)。
しかし、本作はもののあはれの一歩先を行っていると感じます。
最もよい時期=麦秋を迎えた家族だが、再びその時期を迎えることはできないかもしれない。一見、わずか一瞬だけの幸福であるようにも思えます。
でも、そうではないのです。これまでの間宮家の積み重ねが実りのときを迎えたのです。そこに虚しさはありません。彼らが重ねてきた過去は業績で、永遠なのです。次兄が間宮家で過ごした日々は、決して失われることはないのです。
変化や成長は、今までのことを喪失することでもあります。そこには寂しさが生まれます。しかし、間宮家の人々は寂しさをじんわりと味わっています。それができるのは、充実した過去があるから。このように、次のステップに進むために感じる寂しさを噛みしめ味わえることこそが、幸福のひとつの形なのではないでしょうか。
本作は、そのような深い意味の幸福を描いているように感じました。
演者について。原節子は相変わらず美しく素敵でした。大柄なので西洋の女優のようなセクシーさがありますね。オフビートギャグも冴えており、イサムちゃんのコメディリリーフっぷりは最高です。
あと、食事シーンがなんか良いです。登場人物がみな旨そうにご飯を食べるので、鑑賞後やたらと白米を食べたくなりました。ケーキよりも白米が良かったです。
心に伝わるものは無い
終戦直後の上流階級家庭をユーモアを織り交ぜながらを描いた作品。特に心に伝わるものは無く途中は睡魔にも襲われてzzz…。残念ながらこの作品の良さを感じる事が出来ませんでした。
(午前十時の映画祭にて鑑賞)
2018-43
これにて紀子三部作制覇。 相変わらず冒頭から平々凡々の日常生活が描...
これにて紀子三部作制覇。
相変わらず冒頭から平々凡々の日常生活が描かれていく。そして又々定番の嫁にいくのか、いかぬか問題。正直ちょっと食傷ぎみ。その他の事件は起こらぬものか?
来た来たー!子どもがいじけて、なんと食パン蹴っ飛ばしよったで。当然怒られる子ども、えっ、でもそれだけ?こら、フルボッコにせなあかんのちゃう?挙げ句はいじけて帰らぬ子どもを総出で探す家族ばかぶり。ほっとけ!
これが唯一のヤマだった。突如自ら決めた結婚も今ひとつのインパクト。
三部作の最高峰に推す人も多い本作だが、私は見る順に…舞台もキャストもほぼ変わらずでどんどん慣れてしまうからかな。しばらく嫁にいくやらいかぬやらは敬遠しよう(笑)
●必見。
何気ない日常が生き生きと輝く。そこには愛がある。何よりあたたかい。
ボケかかったじいさん。悪さするガキども。年頃の女の子たちのたわいない会話。
自然と笑みがこぼれる。幸せな気持ちになる。
原節子に淡島千景。もう綺麗とか可愛いとかのレベルじゃない。女神だな、ありゃ。
ふたり揃って、憎まれ口をたたくシーンが好きだ。「ねえ」がリフレインする。
ゆったりと時が流れ、小鳥がさえずる。平和だ。ふとした瞬間に入る一コマが本当に美しい。
風船が飛んでくシーンは、白黒なのに、晴れ渡った青い空が実感できる。そこに戦闘機はない。
戦地から帰ってこない者もいて、口ではあきらめたという親父。
昭和の大家族。家族が支え合っていた時代。なんとも清々しい。
ひとつひとつのシーンに、それぞれの人生に、ドラマがある。
杉村春子の一言。息子がいくつになっても変わらぬ親心。骨身にしみたわ。
「麦秋」ってタイトルも、なんとも粋だ。初夏の収穫時。梅雨入り前の短い期間。
人生の最も輝いてる時期を戦争なんかで費やすんじゃないって。そう監督が言ってるようにも聞こえた。
人生の収穫
紀子三部作をようやく観終わりました…。
登場人物の名前は大体同じで、役者さんもほとんど同じで役だけ入れ替えているんですね。徐々に家族構成を大きくして、平穏な日常の中で静かに進んでいく人生の階段が描かれておりました。
「紀子」は、結婚を渋る娘→家族の同意を得ずに結婚を決める娘→戦死した夫の両親に尽くす嫁という、同一人物ではないけれど、作品毎に成長していくような女性。
空高く飛んでいく風船、過ぎ去る列車。戦争の爪痕。
日々の何気ない出来事と重なる、語られない心の内。
風景も人物も家族も習慣も「日本」。
日本でなければ作れない作品。
杉村春子さんが演じる母親は、本作では息子の下駄の紐が緩いことを心配するのですが、「東京物語」では確か古いサンダルを親に履かせますよね(^^;)。紀子が嫁に来ることを承諾した時の喜ぶ表情が素晴らしい。
年を重ねてわかる小津の魅力
若い頃に小津映画を見たとき、正直つまらなかった。淡々としてクールな演出や映像表現が欧米で受けているのかなあとそんな受け取り方をする西洋人の浅薄さのようなものを感じたりして。しかし年を重ねてからこの映画を見ると、日本人の微妙な心のやりとりや美質を、失われつつある日本人の内面的な品性を表現したかった小津の気持ちがよく理解できるようになった。これは傑作であると。同時に見た「晩春」と並び優れた作品である。
小津手法で描かれた戦後間もなくの人間模様
戦後、間もない時期の大家族の暮らす中、縁なく婚期の遅れた娘が近くの知人に嫁ぐまでの人間模様を小津手法で描いた一篇。 やはり、現代風の気の短い人には最後まで集中して鑑賞するのは困難と一般的には思いますが、家族や孫を持つ年齢の立場で観ると、時代回顧と相まって深く感じるものが沢山ありました。当時の時代の雰囲気として、戦争の悲劇も間接的に伝えています。小生もラジオで幼い頃に「尋ね人」を聞いたのを覚えていますが、今の若い人たちにもそういうことがあったということを是非知っておいて欲しいです。いろんな意味で、映画は時代雰囲気の鏡と言えます。
日本の良き映画
日本人としてこの映画に出会い、観ることができて良かった。
日本人にある相手への思いやりの気持ちが、会話の節々に感じられる。
家族の中がしっかりと小さな社会として成立してて、尊厳と愛情があるがままに存在し受け入れられている。
穏やかな人物たちに、美しい風景。日常の一場面に過ぎないのだが、その一瞬一瞬に確かなドラマがあり、移り変わる時の流れや、その人その人の心情が見事に描かれてる。
無駄がなく、緊張感を抱かせない、見事な映画。
間宮家の人々
この作品の何とも言えない良さは、やはり「一度、観てみてください。」というのが一番かと思います。『晩春』の後の鑑賞になりますが、相も変わらず、古風だけれど、時代を問わない普遍的な美が描かれているように感じました。原節子さんの言葉づかいにも、すっかり耳が慣れ、親近感すら覚えます。印象的なシーンは幾つかありますが、くすっと笑えるのはケーキを夜分食べるシーン。あと、御両親が二人並んで風景を観ながら「今が一番いい時かもしれませんね」と話しているところでしょうか。登場人物の言葉の一語一句に聞き入ってしまう自分がいます。
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