劇場公開日 1998年2月28日

「人気商売の宿命を不気味に翻弄してくる怪作」PERFECT BLUE パーフェクトブルー サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人気商売の宿命を不気味に翻弄してくる怪作

2024年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2024年劇場鑑賞63本目 名作 80点

存在は存じ上げていたが、配信で見受けられる機会がなく、丁度良いタイミングで劇場公開されたので、シモキタK2まで足を運んで堪能した作品

結論、口コミ通りの怪作で、これが25年ほど前に公開さえていたと思うと、さぞ稀有な存在で話題に上がり、特定のファンが生まれたのも頷ける存在感でした

特に後半の現実なのか幻想なのかを行き来する描写と、ハッキリと描かず説明過多にしない作りに釘付けで脱帽しました

アイドル活動を通してそれなりに有名になってきた主人公である未麻が、更なる活躍と華やかな世界に憧れ、グループを卒業し、個人での活躍の場に身を移していく

ここでまず、かつての知名度があっても、個人で売り出し、別ジャンルの現場や仕事に順応や採用してもらうのには一苦労である故に、肩書きを持っていながらも仕事を選んでいられず果敢にチャレンジしていく

そんな中で製作陣やプロデューサーに心ない仕打ちや待遇、それをかつて応援してくれていたファンやその他世間一般の方までもが、彼女を一つのエンタメとして消化してしまう始末

そこでの理想と現実とのギャップに心身ともに疲弊し、次第に混沌とした世界で彷徨いもがき苦しむも、目を覚す。そんなお話である

当方7〜8年ほど乃木坂46を追いかけていた過去がるので、卒業したメンバーが芸能界に残り、肩書きを捨て、身一つで挑んできた姿を何人も見てきたので、必ずしも想像した姿が叶わなかったり、人目から離れてしまうことも多かったことを、今作の中盤の未麻を見て思い返した

観客も主人公も翻弄してくる物語中盤から終盤の出来事は、羊たちの沈黙と言わんばかりの展開で、ミステリーとしてもホラーとしても見応えがあり、引き込まれる

とってつけたような対立キャラでなく、アイドル時代から現在まで一番近くで見守りサポートしてきたマネージャーだからこそ、親御心と嫉妬心が入り混じり、狂気と憎しみに変わるのはキャラクターとして理にかなっている

未麻も未麻で、恵まれた容姿にあぐらをかき、若くからチヤホヤされ、自信はあるも世間知らず故の無鉄砲さが、一番近くの人を弄んだり、悪意なく人の心を痛めている自覚もなさそうなのが、所謂天然美人ぽくて実に女っぷりが良い

ミステリーであり、ホラーであり、社会派でもありながら、ある種青春劇でもある今作は、壮絶なヒューマンドラマであり、25年たっても大して変わらない芸能界の縮図を見るに、向こう25年は残り続けるような、問題作である

是非

サスペンス西島