「三十路の時」PERFECT BLUE パーフェクトブルー いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
三十路の時
今のように映画なんて見向きもしなかった時代の上映だったので、存じ上げていなかった作品。アニメ系映画サイトで、ちょいちょいキーワードが流れ、去年、確かユジク阿佐ヶ谷で掛かったのではないかと記憶している。結局鑑賞することがなかったで、改めてDVDで。
この時代に、テレビアニメや漫画から派生した作品ではなく、小説からのアレンジ作が存在したことに驚く。そしてその入れ籠構造的な複雑なプロットを表現した内容にも驚いた。こんな作品がもう90年代にはあったという事実に。
サイコホラーでのジャンル映画であり、確かにアニメで表現したことは正解だと思う。実写では再現できない難しい演出や、日本での規制が厳しく、自由が担保されない状態では、こうしてアニメ-ションとしての形は有意義なのだろう。例えば、目をくり貫かれた死体、裸体、アンダーヘアー・・・ 枕営業こそ登場していなかったが、そんな芸能界の裏事情もストーリーの裏にはあるのかもしれないと思わせる虚構に満ちた世界をリアルに描いている。
ストーリーも、サスペンス要素をふんだんに織込み、ラストの種明かしも、きちんと感情移入できる力を持っていた。
19年経ち、今ではCGやVFXで如何様にもこねくり回せるが、世界観やストーリーテリングの妙といった目に見えない雰囲気的な表現は、昔の方がより力強さを感じると思える作品だ。今敏という監督は若くして夭逝されたということだが、伊藤計画にせよ、天才という人達のその己の命を削るプロダクトは改めて敬服を感じざるを得ない。
余談だが、先に『パプリカ』を観てしまったのだが、順番は、今作品を先に観た方が良い。時代に沿った順番は、やはり自然だ。
ちなみに、故監督のサイトには、今作品の追憶が載っており、アニメ映画制作の裏話を充分堪能できる。確かに能力の高い人達のプロフェッショナルな仕事ぶりに驚嘆させられこと請け合いである。