眠狂四郎殺法帖のレビュー・感想・評価
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陽キャの円月殺法
眠狂四郎シリーズ(市川雷蔵版)第1作。
Amazon Prime Videoで鑑賞(シネマコレクション by KADOKAWA)。
原作は未読です。
初手からいきなり華麗な剣劇。市川雷蔵の殺陣にうっとりしたところで本編が開幕し、早々で「やや、なんか思っていたのと違うぞ」となりました。眠狂四郎が陽キャに見える…
眠狂四郎と言えばニヒルな浪人のイメージが強かったので、かかかと明るく笑い、子分みたいな男と軽妙なやり取りをする様子がかなりの違和感で、迷子になった感覚でした。
雷蔵は机竜之助みたく虚無感の演技を心掛けていたものの、陽のオーラが出たことについて「私生活で結婚したので幸せだったから」と説明しているのがなんともかわいらしい。
円月殺法のシーンがストロボ撮影されておらず、本作以降に編み出された手法と云うことにも驚き。狂四郎のキャラも合わせて、シリーズの試行錯誤の始まりを感じさせました。
[余談]
冒頭のクレジットの城健三郎と云う名に「知らない俳優だ」と首を傾げていると若山富三郎が登場し、「はて、見落としたかな?」と再び首を傾げ調べてみると、城健三郎こそ若山富三郎その人であると分かり、大変驚きました。そもそも、大映専属だった時期があったことも初めて知りました。
まあまあだった
市川雷蔵がとにかくかっこいいという評判なのでワクワクして見たら、あまり魅力を感じなかった。敵の若山富三郎が少林寺拳法の使い手というのだけど、素手対刀はひどすぎる。それに少林寺拳法もそれほど表現されていなくて、さらに、格闘家としてまったく節制してなさそうな体形で、先日のRIZINで明らかに調整不足だったランペイジ・ジャクソンを思いだした。話は込み入っていて、中断して翌日続きを見たせいかよく分からなかった。
俺の剣が完全に円を描き終わるまでに、お前は死ぬ!
WOWOWの市川雷蔵没後50年「眠狂四郎」全12作品一挙放送…で観賞。
眠狂四郎と言えば田村正和という世代(フジテレビ/関西テレビ、テレビ朝日のテレビシリーズ)だが、雷蔵がはまり役だったという伝説は知っている。
田村正和版は、彼のねっとりとした喋り方と、テレビでありながら女性の裸がやたらと露出されていたことで、淫靡なイメージだった(気がする…子供の頃の記憶で)が、雷蔵版はエロティシズムは抑えぎみで伊達男のイメージ。
相手役の中村玉緒は、純情娘役が多く主役級の看板女優ではなかったが、清楚さの上に色っぽさを重ねて女優としての力量を示している。
色仕掛けに転じたとき、そして狂四郎の魅力に抗えずすがりつくとき、局面の違いから異なる妖艶さを見せている。
時代劇が得意な雷蔵ではあるが、三船敏郎や勝新太郎のように身体能力が優れているとは言えず、撫でるような斬り方の殺陣は、流れるような美しさはあるものの迫力に欠ける。
芸風は同じ歌舞伎出身の萬屋錦之助に通じるところがあるが、殺陣も見栄を切るところも、迫力という点では負けていると思う。
そこが雷蔵の魅力でもあり、眠狂四郎にちょうど合っていたのかもしれない。
この当時の時代劇映画には「様式美」があったと思う。(特に大映時代劇)
光と影の映像、シネマスコープの画面を活かした構図、粋な台詞回しなど。
監督の田中徳三は、大映では多数の時代劇やヤクザ映画を担当しているが、本シリーズはことさら様式美に拘っていたのではないか。
特に、伊賀忍者たちを切り捨てた狂四郎が闇に消えていくまでのアバンタイトルは秀逸。
江戸弁の軽やかな調子、狂四郎と女たちの艶っぽい掛け合いの台詞は、シリーズ12作中8作の脚本を担当した星川清司による。
「狂四郎様… もう、どうにもならない…どうにもなりませぬ!」と、狂四郎にしなだれてすがりつく千佐「…今夜は違います。燃えぬかどうか、ご覧なさりませ!」
などなど、色っぽく、時代劇でなければ使えない台詞が満載。
それはそうと、狂四郎と千佐の秘め事の一部始終が忍者捨丸(高見国一)に覗き見されていたとは、お笑い。
捨丸が「狂四郎、お前には何もかも負けた」と言うのだから、どんな光景を見てしまったのか⁉️
しかし、雷蔵版第一作目になぜこの物語を当てたのだろうか。
というか、陳孫(城健三朗=若山富三郎)との対決をクライマックスに持ってきたのはなぜだろう。決戦の相手が従手空拳の少林寺拳法では、円月殺法の見せ所にならないだろう。
しかも、円月殺法から放たれた狂四郎の剣先は、真剣白刃取りで見事に受け止められるのだから、円月殺法ここに敗れたり、ではないか。
反撃に脇差しを抜くという、真剣白刃取りで両手がふさがった相手に対して大人げない戦法に出ざるを得ない。
せっかく殺陣の名人若山富三郎をキャスティングしたのに、もったいない!
だから、円月殺法は物語中盤で伊賀者添番(木村玄)相手に先に披露されているのだが、木村玄は剣技を見せる間もなく斬られてしまう。
第一作目なら、対決相手の強さを充分示した上で、円月殺法の凄さを見せつけるのが普通の発想だと思うのだけど。
蛇足だが、伊賀者たちが弱すぎる。
江戸時代末期が時代設定だから、忍者も鈍ってるのでしょうか…
円月殺法vs少林寺拳法
いきなり伊賀者に闇討ちされそうになる狂四郎。そこへ陳孫からの付文を受け取る。前田藩の殿様・前田斉泰は銭屋五兵衛の片腕である少林寺拳法の使い手である陳孫を葬り去りたかったため、眠狂四郎を味方につけたかったのだ。斬り捨てた後にはその狂四郎をも殺す算段だったのだ。
千佐が頼みにくると、報酬はお前の体だと言うが、その代わりにと100両を渡すとあっさり引き受けることにした。さすがスケベな狂四郎だ。死んだと思われていた銭屋五兵衛が生きていて、陳孫に千佐を浚わせる。そして、前田藩の密貿易の証拠の文書をめぐって、狂四郎は前田斉泰に直接談判する。斉泰にとって密貿易が幕府にばれたら藩の取つぶしとなるため必死だ。やがて銭五と陳孫は加賀の国へ。前田斉泰も参勤交代で加賀へと向かう。
銭五は奪われた財宝を取り戻すため、隠した文書を取り戻すが、狂四郎の取り巻きが得意のスリで奪い、狂四郎に渡す。そして、千佐の生い立ちの秘密・・・彼女は前田斉泰が遊女に産ませた子だったのだ。そして、生かせておくことを条件に斉泰に直談判。ホッとしたのも束の間、五兵衛によって千佐の母親が殺されていて、千佐も五兵衛によって殺された。さらにクライマックスえは陳孫との対決。勝負は狂四郎のものだったが、相手を殺さずに、密貿易の件から手を引くよう約束させた。砂丘での円月殺法vs少林寺拳法だったが、これは内灘ロケなのかどうか気になるところ・・・まずないが・・・
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