劇場公開日 1977年5月28日

「いい俳優をたくさん集めすぎて大失敗の大作映画」日本の仁義 jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0いい俳優をたくさん集めすぎて大失敗の大作映画

2025年5月13日
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”オールスターのヤクザ巨大シリーズ「日本3部作」第2弾”と銘打たれた1977年公開の本作。確かに俳優陣は昭和を代表するような錚々たるメンツが集められています。では映画が面白いかというと、なぜか全く面白くありません。敗因は出演陣が豪華すぎることであり、そのせいで脚本と演出が犠牲になってしまったように感じます。スター達にはそれぞれに見せ場を用意しないといけないので、実に散漫でフォーカスのぼやけた映画になってしまいました。

須藤組組長、須藤武男(菅原文太)は新宮会会長新宮英策(藤田進)の引退に伴い、2代目会長に抜擢され、組織の運営を任されます。新宮会は巨大組織千田組による圧迫で苦しい立場。須藤に策があるかというと、口を開けば「身体を張れ!」。まるで狂犬です。侠気はあっても、経営能力や政治力はありません。さらにプライベートでは若い女に入れあげ、妻(岡田茉莉子)と子に出ていかれる始末。心身ともに疲弊した須藤はシャブ中に。

トップが闇落ちしたのを見て、部下たちは次々に離反していきます。若頭の木暮勝次(千葉真一)は最大の葛藤に陥り、苦渋の選択を迫られます。このまま須藤とともに滅ぶのか、須藤を消して生き延びるのか。

本作のテーマはヤクザにとってのタブーである「親殺し」です。ですが、まず菅原文太に闇落ちする親が似合いません。次に、千葉真一はずっとサングラスを付けたままのクールな演技。とても極限の選択を迫られた男の様子には見えません。キャスティングも演出もダメダメでした。主役は須藤武男ではなく木暮勝次にして、菅原文太と千葉真一を入れ替えたほうがよかったのではないでしょうか。親の闇落ちと子の苦悩にフォーカスして脚本が作られ、演出されていたらもっと低予算でもっと面白い映画になっていたと思います。

3流新聞社の社員役、野坂昭如と林隆三も映画にとっては余計なノイズになっています。鶴田浩二とフランキー堺の役柄もあんまり機能していません。特にフランキー堺が人質を取って立て籠もったシーンは意味不明でした。

どんなにいい俳優をたくさん集めたとしても、脚本と演出がだめなら面白い映画はできないという見本のような映画でした。そもそも客さえ入ればOK!で、面白い映画を作ろう!なんて思ってなかったのかも知れませんが。

jin-inu
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