劇場公開日 1959年10月25日

「特撮オタクは必見の作品だと思います 特撮オタクとして、気にはしていても今まで観ていなかったことを心から恥ました」日本誕生 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0特撮オタクは必見の作品だと思います 特撮オタクとして、気にはしていても今まで観ていなかったことを心から恥ました

2025年5月9日
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日本誕生
1959年東宝カラー作品
東宝創立25周年、1000本記念作品

なので気合いが違います 東宝の総力を文字通り結集しています
三船史郎始めオールスターキャスト、特撮パート監督はもちろん円谷英二、本編監督は稲垣浩です、音楽は伊福部昭
題材は日本神話からヤマトタケルの物語
これは、1956年米国公開、日本公開1958年の「十戒」が世界的大ヒットしたのを受けてでしょう
記念作品に相応しいスケールの大きさと格調高さがあるとみたのでしょう
大映も1958年に「日蓮と蒙古襲来」という歴史もの超大作を繰り出していました

制作費 は2 億5千万円
1954年のゴジラは1億円でしたから巨費を投じたといえます

特撮ファンとしての見所は
まずは、まさしく八つの頭を持つヤマタノオロチの出現シーンです
怪獣そのものですが、かなりの特撮ファンでもあまり知られていません
そして、1964年初登場のキングギドラとは、どう形態が違うのかも確かめておきたいところ

スペクタクル要素も円谷英二渾身の映像が繰り広げられます
古代の東京湾を進む数艘の古代のガレー船と俄かに巻き起こる竜巻と暴風雨と波浪著しい海面表現、その水量の多さに驚きます
終盤の火山噴火に伴う大規模な山容崩壊、大量の溶岩流が斜面を走り下り、逃げ惑う敵側の軍勢を飲み込む様、大きく裂ける地割れに大量の土砂と樹木が流れ落ちシーン、そこに飲み込まれれる軍勢との合成の迫力
山上の旧火口湖から大量の湖水が流れだし谷筋を濁流となって駆け下る様

どれもこれも目を見開く映像です
円谷英二渾身の特撮です
円谷英二の生涯、いや東宝特撮の全歴史を通じても屈指の出来映えだと思います
円谷英二の最高の仕事だったのではないでしょうか?正直これほどの特撮映像だとは思いませんでした
特撮オタクは必見の作品だと思います
特撮オタクとして、気にはしていても今まで観ていなかったことを心から恥ました

見所はまだあります

そしてそれらを高空から悠然と見下ろして翼を羽ばたかせるアニメーションの白鷺の合成
それは火の鳥のワンシーンを想わせるものです
手塚治虫の火の鳥黎明編の原作マンガの連載は本作の8年後の1967年からのこと、もしかしたら手塚治虫の火の鳥に本作は影響を与えたかも知れません
本作の20年後に巨匠市川崑監督が火の鳥黎明編の実写映画を撮りますが、はっきり言って本作の映像の方が数段上回ります

特撮ファン以外の方なら、天照大神を演じる原節子の太陽のような笑顔は目に焼き付くものでしょう
真面目にヤマトタケルを演じる三船史郎は役にはまっていて、常人とは違う存在に見えなくも無いです

蛇足
終盤の火山は、恐らく、奈良県の東南部の三重県との県境近くの曽爾(そに)高原辺りの設定と思います
室生(むろう)火山群のひとつです因みに大和三山も実は休火山です
ミニ阿蘇山のような地形で、本作にみるより広大なすすきの野原があり、太古には火口であったのでであろうと思しき池もあり、泉質の素晴らしい温泉まであります

1500万年前には活火山だったそうですから、いくら神代の時代でもそもそも人間がまだいません
適当に火山を出しただけのことで、調べた上での設定ではないでしょう
ヤマトまで1日の距離のところにたまたま曽爾高原があったというだけかと思います

あき240
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