劇場公開日 1967年6月17日

「安藤昇がチンピラすぎる」日本暗黒史 血の抗争 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5安藤昇がチンピラすぎる

2023年7月3日
iPhoneアプリから投稿

元・ヤクザというヒリついた経歴を持つ安藤昇が主演した実録系ヤクザ映画。ただそこまで出来はよくない。小柄にもかかわらず落ち着いたドンの風格があるというギャップこそが安藤昇の持ち味だと思うんだけど、本作の安藤昇はかなりチンピラ臭い。欲望に身を任せて好き勝手暴れまくるヤクザ像なら菅原文太でじゅうぶん間に合っている。どっちかといえば突然現れて突然消えていった内田良平の狂犬ぶりのほうが印象に残った。

ただまあ『仁義なき戦い』シリーズが口火を切った実録路線が本作(1967)から既に開花していたという事実には瞠目すべきだろう。口では「カタギの皆さんとの縁を〜」などと言っておいてその裏で暴力、略奪、裏切りの限りを尽くす河上組。敵対組織である甲一派もそれに負けず劣らず卑怯で狡猾だ。まさに「全員悪人」のピカレスクロマン。これと歩調を合わせるように鶴田浩二や高倉健の任侠モノが大流行していたというのが信じられない。

因果