「寺田農さんを偲んで」肉弾(1968) 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
寺田農さんを偲んで
寺田農さん
2024年3月14日肺がんのため81歳で他界
監督と脚本は『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』『座頭市と用心棒』『ダイナマイトどんどん』『ジャズ大名』『大誘拐』『助太刀助六』の岡本喜八
1968年の作品
あえて白黒映画
終戦間近終戦後の二等兵の青春コメディ
戦争映画だが戦闘シーンはない
映画会社から予算をもらえず自主制作で完成させた
粗筋
21歳6ヶ月のあいつ
本来なら大学生だった
もっと勉強しておけば良かったと後悔していた
陸地で様々な人との出会い
昭和20年夏に和傘を被り魚雷付きのドラム缶の中に入り海を漂うあいつは終戦を知らない
漂流の末に東京湾に
屎尿を運ぶ船の船長に発見されたあいつは終戦を知らされる
ロープで繋いでもらい東京の港に運ばれる途中でロープは切れた
時はたち昭和43年夏の海水浴で賑わう海でいまだ漂うドラム缶の中には白骨化したあいつがいた
魂はなお叫んでいた
寺田農の初主演作
当時25歳くらい
声まで若い
全裸の大谷直子
11PMの温泉レポーターうさぎちゃんの由来だろうか
それにしてもあれはなぜうさぎちゃんなのか未だにわからない
下北沢の学生劇に出てくるような理屈っぽい黒い看護師3人組がキャラ的に一番好き
うまく表現できないがなぜか全体的に飄々としている
BGMも夏の島の木陰でハンモックに揺られてる感じでのんびりしている
戦争となれば映画鑑賞どころじゃなくそれ故に自分は戦争は嫌いだが反戦映画という言葉を好まない
戦争映画で充分
わざわざ反戦などとメッセージを掲げるとパヨク臭くて良くない
配役
自称ねずみの特攻隊のあいつに寺田農
両親と兄を戦争で亡くした女郎屋の若きカミさんで因数分解を解いていたおさげのセーラー服の少女「うさぎ」に大谷直子
あいつの父に天本英世
学校長閣下に今福正雄
B29の爆撃のせいで両腕がない古本屋のオジイサンに笠智衆
観音様のような古本屋のオバアサンに北林谷栄
女郎屋の前掛のオバサンに春川ますみ
雨のなかで出会う軍曹に小沢昭一
軍曹のカミサンに菅井きん
漁業組合の飯炊きをしていたがアメリカ兵の妾にされるのが嫌であいつの拳銃で自殺を図るも失敗するモンペのオバサンに三戸部スエ
浜辺で出会う少年に雷門ケン坊
少年の兄に頭師佳孝
竹刀で少年の兄を叩く教師に園田裕久
あいつらを怒鳴る区隊長に田中邦衛
女郎屋の行き先を聞かれる憲兵に中谷一郎
ひげの下士官に高橋悦史
あいつを助けるオワイ船の船長に伊藤雄之助
ナレーターに仲代達矢