「与える愛」楢山節考(1958) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
与える愛
圧倒的貧困の中での人間の物語
筋書きは有名。
知っているはずの結末。
だが、言葉を失ってしまう。
舞台を模した映画。
”昔物語”としたかったのだろうか。
冥界を彷徨ってきたかのような。
そして、
鉄の力強い動力は、闇を切り開いていく象徴?
映画の制作年代からかなり経った今となっては、それは何を成しえたのであろうか。どこに連れて行ってくれたのだろうか。何を目指しているのか。
残酷な物語。
自ずから命を絶たねば、次世代を育てられなかった時代の物語。
玉やんのように、嫁として別世帯で養ってもらう。
奉公という名の人買いに託す。
身ごもった、産まれたばかりの子を水に流す。
そんなあらゆる方法の一環としての姥捨て。
生きるか死ぬかの世界。
作中にも、生きるために盗みをした一家への制裁が描かれていた。
そんなギリギリの生の物語。
ひ孫を生かす為の自分の死という自覚があるからこそ、おりんばあさんのあの表情なのだろう。
次世代への礎。与える愛の尊さ。おりんばあさんには我欲というものが感じられない。
若き猿翁丈(三代目市川団子)が自己中な孫を演じる。
有名な田中絹代さんの演技。
オ―ルセットの作りものの世界。セットの見事さ、セットならではの大胆な演出もさることながら、
そこに展開されている人々の心情、演技がリアルに描き出される。
ほっこりとした人情味溢れる温かい世界。そのすぐ脇に横たわる生死の境目。
そしてやりきれない結末。
初めは歌舞伎?新劇?のような演出に戸惑いつつ、姥捨てをしなければいけない背景、親子の情にぐいぐい惹き込まれていく。
生きるとはどういうことなのか。考えさせられる映画です。
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