劇場公開日 1991年8月31日

「80年代の青春群像作」波の数だけ抱きしめて よさくさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.080年代の青春群像作

2025年7月5日
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鑑賞方法:映画館

単純

興奮

中山美穂と織田裕二が出演していることを知って鑑賞した。1980年代と言えばバブルに向かう途中で世の中が背伸びし出した世相、携帯電話すらない時代だ。また女性の社会進出も今と違い大学進学率も低い時代。そう言う意味で、主人公の中山美穂はエリートなのだ。その神秘的とも言える中山美穂を巡って織田裕二が生煮えの態度で観客をイライラさせるのだが。

しかし本作において最大の見せ所は松下由樹だろう。演技には定評のある役者だが、眼力というか眼の演じ方が圧倒的で、主演の中山美穂を凌駕する勢いだ。必ずしも出番は多くないのだが、ワンシーンにかける想いがスクリーンを通じて伝わる。それは現代人の絵文字チャットとかでの喜怒哀楽では通用しない、生身の人間の声なのだ。声があるから人間としての会話ができ、自分はどうしたいのか、どう思っているかの、当たり前の言葉を発する。

いずれ人類は言葉を発する必要のない時代にいくのかもしれないが、本作では人間本来の生きる力に気付かされる。夏の湘南に行ってみたくなった。

よさくさん