夏の庭 The Friendsのレビュー・感想・評価
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3人の小学生とおじいさんの交流
神戸の小学6年生、木山、河辺、山下の3人組は、近所に住むひとり暮らしのおじいさんが死にそうだと聞き、おじいさんの家を張り込むことにした。最初は少年たちを追い返そうとしてたおじいさんだったが、3人が庭の草取りや障子の貼り替え、屋根のペンキ塗りなど手伝ってくれ、次第に交流が深まっていった。おじいさんが戦時中に現地の妊婦にした事を後悔していて・・・さてどうなる、というという話。
おじいさんは、戦争中に自分たちの身を守るためとはいえ、妊婦を殺したのは一生のキズとなったんだろうと思う。そして妻にも会わせる顔がなく、一人暮らしを続けた様だが、そこまで思い詰めるだろうか。
木山、河辺、山下の3人の子役はみんな良かったのに、その後は俳優は続けてないのかなぁ?
おじいさん役の三國連太郎は汚らしかったがさすがの存在感で素晴らしかった。
担任の先生役の戸田菜穂は綺麗だった。
髭を剃るのは美術助手のアイデア
髭を剃るのは、美術助手のアイデアだった記憶。
田中陽造さんのホンに呪縛される相米さん、
一方、シナリオに書かれてなかった上記のシーンや、
ロケセットの飾りは新米の意見を柔軟に採用する監督だった。
いろんな思い出がつまった作品だ。
震災前の神戸、
演出部制作部美術部はマンションで合宿、
相米さんはホテル嫌いなので民家を借りて宿泊。
ロケハンから撮影終了まで、半年弱は滞在しただろうか。
生と死、弔う蘇る、
傷だらけ、ハアハア(成長とか、
レベルアップとか、
上手くこなそうとすると、
キャストもスタッフも相米さんから、
NGをくらう、
なのでここは、かっこわるいハアハア)、
水、祭り、花火、口笛等々、
珍しく本作はわかりやすく各レイヤーが、
前面に押し出されている、
担任の先生が見落としていた事を、
子どもたちが、
目と鼻と手触りで、
誰に言われる事もなく、
気持ちを、身体を、手繰り寄せていく、
そして、
ウォーキングデッドマンを〈復活〉させる、
あろうかことか、まさかの、
世界の仕組み、戦争まで・・・
マジか相米さん、
いろいろと質問して叱られた記憶も、
いい夏のおもいでだ。
4Kリマスター監修はカメラマンのFさん、
当時は撮影助手、
撮影機材を解体、修理、
回転するレインリフレクターを自作、
英語も話すスーパーマンだ、
なので、
淡島、三國、相米、篠田、熊谷、石田の、
現場の息吹が感じられるリマスター版は必見やで~。
【蛇足】
三國さんとも色々と雑談をさせて頂いたのも懐かしい思い出だ。
自分の出身が大阪市住之江区と話すと、
三國さんは戦前の少しの間、住之江区の近くで働いていたそうだ。
驚いた。
子どもの頃、そこの敷地でよく草野球をしていた場所だった。
死の影、異界への入り口がすぐ手に届く感覚
子どもの視点によって死が身近にあることを感じさせる作品というのはかなりたくさんある。昨年公開のどちらも海外の作品だが「ミツバチと私」とか「夏の終わりに願うこと」とか。
もちろん、本作は「スタンドバイミー」と同じく少年たちの死体や葬式についての興味からスタートしているから「人が死ぬこと」そのものををテーマにした映画であるのだが。
人生で最初の葬式、つまりそれは人の死に初めて接したときということだが、私の場合は祖母だった。小学4年生のときである。そしてそのお葬式やお棺の中の故人の姿は本当に目に焼き付いている。その後、数限りなく人の死には立ち会ってきたが、やはり最初の体験がもっとも生々しく記憶されている。それは生と死のはざま、すぐそこに死があることを初めて実感したからに相違ない。
この映画で、3人の少年たちはおじいさんと知り合い、おじいさんの家を手入れすることによつてどんどん親しくなっていく。でもいずれかにはお別れしなければならない宿命。だから子供たちとおじいさんの微笑ましいやり取りの背後に死の影が差していることを、夏の庭の木や草や、虫や、風や、日差しなどに色濃く感じ取ることができる。その映像が素晴らしい。
そしてあちこちに覗く異界との接点。もちろん井戸や、最初に少年の一人がおじいさんを追いかけて行き着いた病院の霊安室はそうだけど、台風の時の窓の外や、おじいさんの妻だった老女や、そしてもしかすればおじいさんの家そのものも異界への入り口である。それらの入り口は皆、死へ不可逆的に繋がっている。ただ少年たちは若く未来があり異界=死とは感じられないのかもしれない。彼らには、これら異界との接触もまだまだ懐かしく輝かしく記憶されるのだろう。我々がかってそうだったように。
1994年の作品。少年たちの言葉を聞けば、神戸が舞台であることが分かる。事実、ロケの大半は神戸で行われた。阪神大震災の前年である。そして主役の三国連太郎はともかく相米慎二も主題歌を歌った坂井泉水も早世した。複雑の思いで振り返る作品である。
この映画の主題は明快
この映画の主題は、都市では2世代を超えた家族の構成が難しくなってきていた当時「死」という概念を、具体的に子供たちに教えることにあった。それは、今に通じる課題。主人公は、朽ちてゆくような住宅で一人暮らしをする老人(三國連太郎)と、サッカー好きな6年生の男の子たち3人。神戸を舞台に、夏休みを含む、ひと夏のでき事が語られてゆく。
老人には人には言いにくい戦争中の過去があった。フィリピンの人たちには、大変、申し訳ないことをしたが、多くの日本兵もまた、特に戦争の末期、密林のジャングルの中で苦戦を強いられ、その多くが帰還できなかったことを、浅田次郎さんのエッセイなどで教えられ知っている。
男の子たちは、好奇心から死が近いと思われた老人に付きまとうが、やがて、草が生い茂る住宅の庭に入り込み、ほぼ勝手に草刈りをするあたりから、物語が動き始める。障子を張り替え、屋根を塗装し、ガラス戸を更新する。男の子の一人(関取と呼ばれていた)の奮闘でスイカを切り分けて楽しみ、終いに、草刈りのあとの庭をきれいにして、花の種を植える。不思議なことに、老人は、生活をするための費用は十分持っているようだったが、男の子たちは、わずかなヒントを辿って、老人の家族までたどり着く。
一番印象に残っているのは、庭にコスモスなど、夏から初秋の花々が咲き乱れるところ。私は、愛読している川本三郎さんの著書の中に時々出てくる、都会の空き地を想い出した。あれも、戦災の跡地と関係するのだろう。今は、もう見ないが。
私は、「飢餓海峡」以来、三國さんの演技には親しんでいるが、演技以外のところで様々なうわさがあり、避けていたこともあった。しかし、この映画の演技には、間然するところがない。
アサド兄弟の演奏するギター二重奏も、映画の背景とよくマッチしていた。エンディング・テーマの選択から考えて、相米慎二は、この映画を一人でも多くの子供たちに観てほしかったに違いない。この映画のような体験を経て、少年たちは、家族や社会について知り、やがて旅立ってゆくのだと思う。
秀作である。
少年は少女よりずっと子どもで幼い、だから可愛い💕だから意識して本当の大人になってくれ
盛り込み過ぎ?都合よく行き過ぎじゃない?と思いつつ。草茫々の庭がすっきりしたと思ったらコスモス庭になった。幸田文が父親の露伴から鍛えられた屋外家事を見た気分。硝子戸はめ、ロープに洗濯物、長いホース、包丁研ぎ、障子張り、屋根修理、丸ごとスイカを自分達で切ってかぶりつく。濡れ縁、蝉しぐれ、夕立、虹、台風、昆虫、蝶々。無くなるものばかり。戦争は無くならないのに。
映画は三國連太郎、最後は淡島千景が全部持って行った。井戸の蓋を男の子三人が閉める。私達は真っ暗な井戸の中。自分はこんな風にこの世と別れることになるんだろうか。
何故「Boy」なんていう歌詞付き歌を最後に流すのか、そのセンスが全く理解できない。
おまけ
三國連太郎じいちゃん、ゴッドファーザーのマーロン・ブランドの真似しないで欲しかった。その箇所はかなりがっかりした。監督の指示なんだろうか?アップダウンの激しい、別の意味でジェットコースター映画だった。
世間から隔絶した老人喜八を演じた三國連太郎氏の円熟味のある迫真の演技は一番の見どころ
Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下さんにて「第80回ベネチア国際映画祭」クラシック部門で最優秀復元映画賞受賞した相米慎二監督作品『お引越し』と『夏の庭 The Friends』の4Kリマスター版が《凱旋》公開。上映後には『セーラー服と機関銃』で助監督デビューした黒沢清監督、行定勲監督、瀬田なつき監督、森井勇佑監督、山中瑶子監督、映画ライター金原由佳氏のトークショーも開催。
『夏の庭The Friends』(1994)
「死」について興味関心を示した小学6年生男子3人組が近所の独居老人の死を目撃しようと監視をするうちに老人・傳法喜八(演:三國連太郎氏)と心を通わせ、廃墟同然だった老人宅を整理、庭にコスモス(秋桜)を育てながら、老人の隠された過去を知っていく…ハートウォーミングな秀作。
公開当時は3人組のキャラ設定が『ズッコケ三人組』に似ていたので途中まではイメージを重ね合わせて観ていましたが、ラストの喜八氏の死にグッと来た記憶がありましたね。
今回4Kリマスターに生れ変わったので、夏の抜けるような青い空、庭の緑、ラストのコスモスのピンクがさらに美しく映えていました。
本作では何といっても世間から隔絶した老人喜八を演じた三國連太郎氏の円熟味のある迫真の演技は一番の見どころ。本作前後に出演した『利休』(1989)、『息子』(1991)、『ひかりごけ』(1992)どれも名作ですね。
どうしちゃったの?😓相米慎二・・・と、思ったのは30分だけ‼️
人の死…
子供たちは必要ないのでは
総合50点 ( ストーリー:50点|キャスト:55点|演出:55点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
子供たちの演技が下手だし、家の整理の手伝いをひたすらするだけの展開も間延びしていて退屈気味だしで質感が高いとは言い難い。夫婦の過去に何があってどのような生活をしてきたのかが簡単に示唆されるだけでは重みが出ない。
これならば子供の話など入れないで夫婦の2人の人生だけを最初から見つめればいいのではないか。物語でも演技でも子供たちは必要ないのではないか。それとも子供たちに人の死を意識して欲しいという主題があって、それで無理矢理この形になったのか。
知りませんでした。おもいっきり地元の作品じゃないですか。冒頭の電車...
せっかくの素材、脚本が台無し。
カメラのガキが腹たつ
見逃していた相米映画。BSで鑑賞。小説は未読。正直なところ、普通に良い話にできるストーリーだが、所々にエッジが効いた演出が入り、必要以上に緊迫感が増し、生死の明暗を際立たせている。
病院に迷うシーンのホラー感、プールに沈む山下、最後の廃屋へと化す演出など。特に台風の中窓ガラスに映り込む子供達の顔は素晴らしい絵である。
あまりにも荒さが目立つ子供達の演技に対し、三國の台詞回しのうまさが目立つ。戸田菜穂が三國に食ってかかるシーンは、極端にストレートで良い。一方で、子供達の成長は演技からあまり感じられない。成長している展開のはずで、この話の一方の軸のはずだが。親の離婚に傷付くメガネはどうなったのか?
相米慎二の意図が計りかねる所である。三國と淡島の話に収束して子供は脇に追いやられたように感じられた。
最後のZARDは心底がっかり。クラシックギターの美しい音色が飾った映画を台無しにしている。大人の世界のゴリ押しにウンザリさせられる。
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