劇場公開日 1971年2月10日

「松本清張原作、岩下志麻主演作」内海の輪 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0松本清張原作、岩下志麻主演作

2022年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

松本清張原作のサスペンスなので、それなりに面白い。
清張原作を斎藤耕一監督が映画化した作品で、後年の斎藤監督作品『旅の重さ』・『津軽じょんがら節』などに通じる独特の映像が見られる佳作。

本作いきなり、崖下で女の死体が見つかる場面から始まるが、足元しか映さないあたりが上手い。
そして、時間が遡って、冒頭に至る物語を描いていく語り口。

松山に住む美奈子(岩下志麻)には呉服屋の50代の夫(三國連太郎)がいる女だが、夫の仕事の関係で3ヶ月に一度は東京へ行く。その東京には愛人の男=江村(中尾彬)がいて、深い仲…。江村は考古学者だが、江村の妻の父親(滝沢修)は考古学者の権威なので、将来の出世のために良き夫として振る舞っていた。
束の間の逢瀬に酔う美奈子と江村だったが、女の情念が渦巻いていき、「私、松山(の夫)には帰りません。あなたと過ごす…」という姿勢を見せた途端、出世したい男には女が邪魔になり殺意が……といった感じのサスペンス。

やはり松本清張原作の映画『ゼロの焦点』(野村芳太郎監督、1958年)と同様、断崖絶壁シーンが盛り上がる。
本作では蓬莱峡(ほうらいきょう)。

岩下志麻と中尾彬の愛し合う場面では、「岩下志麻が脱ぐことはないだろうな…」と思いながら観ていると、増村保造監督のようにボディダブルを使うことなく「岩下志麻の顔のアップ」としているあたりは、もう一工夫が欲しかった。
ただ、DVD特典映像の「本作の予告編」では、異なるアングルで撮影がされた素材が使われており、いろいろな撮影をしておいたことが分かる。

タイトルに「内海」と付いているだけあって、松山→尾道→鞆(とも)→仙酔島→倉敷→蓬莱峡といった瀬戸内海各地でのロケは頑張ったと思う。

作品としては、ちょっと、オチの詰めが甘い感じがした。

<映倫No.16630>

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たいちぃ