「泥舟の上の姉弟の行方」泥の河 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
泥舟の上の姉弟の行方
戦後の大阪の川端周辺で 暮らす人々の浮沈を、うどん屋の一家を中心に描かれる
また、戦争を生き延びても 日常に訪れる「不幸」で倒れてゆく人々(荷車の男、川に転落したゴカイ取りの爺、信雄の父親の元妻)と 静かに崩壊しつつある喜一の家庭を、 詩情豊かに 淡々と描いている
こんな日常に、疲れを感じながらも 精神的に豊かであろうとする信雄の父親を、田村高廣が好演している
喜一とその姉にとって うどん屋一家とのつかの間の交流は幸福であり、そのうち訪れる不幸の序章の様にも見え、哀しい
泥の河に浮かぶ船は まるで泥舟の様に思える
これに暮らす姉弟は、幼いながらも覚悟の様なものが感じられ、それを察知した信雄の心も痛み、皆 可哀想である
春をひさぐ彼等の母親(加賀まりこ)は 妖しい美しさで、(健康的な信雄の母親とは対極にあり)これまた不吉である
戦争や貧困や虐めは この世からは 無くなりはしないが、(信雄の父親が語るように)あの姉弟の様な子供達は 救済されなければならない
それが国家というものだろうし、大人の罪滅ぼしだと思う
戦後、日本人は頑張ったが あんまり人間(日本人)を大切にして来なかった
経済成長に夢中になり、思想とか哲学的なことを後回しにした結果が 今の内部分裂的思考に繋がっている
総ての日本人を救済出来はしないが、子供は優先されなければならない、と思う
これを日本人の普遍的な価値観に加えていくことが、急務であろう
バブルで 日本人がオカシクなる前の 映画だったが(1981年制作)、今 思うと警告の様でもある
豊かさの意味についても、再考させられた
色々 考えさせられる いい映画
小栗康平監督の鮮やかな デビュー 作品!
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