「有馬稲子は芦川いずみのようだった。」東京暮色 はるさんの映画レビュー(感想・評価)
有馬稲子は芦川いずみのようだった。
父親の哀しみは晩秋に吹く風よりも穏やかで静かだ。
思春期の娘の無意識のなかに潜む男っぽさは無邪気で残酷なむものだ。
だれかれなしに「・・・・ねばならない」と断罪しながら自分自身の無能力さを嘆くだけ。
嘆くだけならまだしも、周りの人間を四六時中責めたてる。
そんな間の抜けた会話が画面狭しとのたうち廻り、観ている者をイラつかせる。小津映画には嘗てないシチュエーション。故に、風に揺れる斜塔のてっぺんにいるような気分だった。
小津安二郎にいったい何が起こっていたのだろうか・・・少々混乱してしまった。
決まりきった画面構図は微動だにせず。いつもなら構図の安定感が見る者の気持ちを安らかにする。しかし、今回は逆方向へ向かい、アゲンストに立ち向かう紙飛行機のように急上昇、急落下の連続。
親子といえども複雑な人間関係に変わりはない。
人と人との関係を良好に保ち続けるというのは簡単なことではないのだ。
大袈裟だけれど、命がけなのだ。
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