「【ロードムービー三部作の次/再び欧州とアメリカの融合】」アメリカの友人 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ロードムービー三部作の次/再び欧州とアメリカの融合】
「都市とアリス」「まわり道」「さすらい」のロードムービー三部作の直後に制作されたのが、この「アメリカの友人」だ。
そして、主演のひとりは、アメリカ・ロードムービー代表作「イージー★ライダー」の監督・脚本・主演のデニス・ホッパーだ。
ロードムービー三部作では、戦後、東西に分かれたドイツの西側で、アメリカ文化の影響を受けつつ、アイデンティティとは何かと葛藤し、変化も受け入れ、それを肯定する姿などが描かれていたが、大きな映画のテーマとしてロードムービーが注目されたのが、アメリカ作品の「イージー★ライダー」で、その監督・脚本・主演のデニス・ホッパーを迎えて、「アメリカの友人」を撮ったことは、意義深かったのだろうなと考えたりする。
ブルーノ・ガンツ演じるヨナタンと、デニス・ホッパー演じるトム・リプリーのコンビが滑稽で最高なのだが、ヴィム・ヴェンダースの三部作とは異なり、エンディングにはイージー★ライダーちっくな悲哀も盛り込まれている。
そして、ここに描かれている殺しもハード・ボイルドなどでは決してなく、素人ならではのドタバタで、殺られる側も、殺し屋とか用心棒とか言われる割には不用心だし、マフィアと呼ばれる割には、ものすごくマヌケな感じなのだ。
だからこそ、この作品は楽しいし、悲哀も感じられて、多くの人に親しまれているのだと思う。
確かに、現代のアクション・ムービーと違って、迫力には欠ける(ただ、列車からの突き落とされそうになる場面はドキドキした)が、戦後、世界中で民主化が進展し、西ドイツでは急激な産業化が進むなか、実は、暴力的な行為の担い手も減少していたのだろうななどと考えてしまった。
戦時中はもとより、戦後しばらくも、アメリカ人俳優が西ドイツにやって来て、映画を撮るなんて考えられなかっただろうし、東西冷戦中であっても、西側の急激な相互依存関係が進行していたことが伺われる。
そして、ちょっと滑稽だけど、エンディングには悲哀も用意されていて、ヴィム・ヴェンダースとデニス・ホッパーのロードムービーを合わせたような感じで、そこもまた良いのだ。
豊かになったアメリカ人が、ロクに確かめもせずに有名画家の作品の贋作を大枚はたいて買うのだが、時代を反映していると同時に、”審美眼”はヨーロッパにあるのだという設定も面白かった。
まだ評価の定まらない新人作家の作品をバカ高い値段で買い漁るのは、今のアメリカも実は同じようなものだ。
滑稽、皮肉、悲哀。
多くのエッセンスが詰まった作品だと思う。