「妖怪不滅道中」東海道お化け道中 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
妖怪不滅道中
大映の“妖怪シリーズ”第3作。1969年の作品。
東海道の外れにある妖怪を祀った古い塚“鬼塚”。そこで殺生を犯すと祟られるという…。
悪玉やくざの親分が悪事を記された書付を持つ善良やくざの親分を待ち伏せし、殺害。さらには塚も壊し、塚守りの老人までも殺害。
老人の孫娘は祖父の死に際、死んだと知らされていた父親が生きている事を告げられ、親子の証のサイコロを持って父探しの遠路の旅に出る。
少女を狙う追っ手。助っ人は訳あり渡世人、気のいい馬子少年、そして妖怪たち…。
“大映妖怪三部作”の最終作に位置付けられているが、前2作とは趣向を変えて。
妖怪は出るものの控え目で、話的には股旅もの。人情や生き別れた父娘など、王道的な時代劇。
追っ手に捕まった少女。大事に持っていた巾着袋を取られ、その中に入っていたサイコロを見て、追っ手は…。
この追っ手の男こそ、実父。心を入れ替え、娘を逃がそうとするが…。
意外や父娘愛の泣かせ要素。一本の時代劇としてもなかなか面白く、ドラマ的には三部作の中で一番。
東映1966年の怪獣×時代劇の『怪竜大決戦』のように、特撮番組として見たら本格時代劇の見応えと醍醐味充分と等しい印象を受けた。
本当に前2作と比べると妖怪たちの出番は減り、妖怪が見たい人には物足りないかもしれないが、要所要所インパクトは残す。
少女の力になると言うと前作『妖怪大戦争』のような子供向けに思うが、寧ろ『妖怪百物語』のような描かれ方。つまり、悪人どもに天誅を下す。
恐怖要素も三部作の中で一番。森の中で塚で悪人どもを惑わし、震え上がらせ、妖怪たちも本領発揮。
特に“百々爺”と“蛇骨婆”が不気味さを盛り上げる。
ユニークな妖怪たちの活躍劇だった『妖怪大戦争』からのアダルトな作風チェンジが吉と出たのか凶と出たのか、シリーズは本作で終了。『大魔神』と同じく短命であった。
でも、個人的には三部作の中で一番良かった。
三部作一気見。一本一本の尺も約70分強と短く、本当に気軽に楽しめる。
妖怪たちは今も姿形や存在意義を変え、私たちの前に出現。
変わらないのは、時に怖がらせたり、ユーモラスであったり、比護なる存在であったり、日本人を魅了してやまない事。
妖怪たちは不滅です。
今度はどんな風に現れるのかな…?