劇場公開日 1969年3月12日

「怪獣ブームが去りつつあるなか、ガメラシリーズと共に特撮を支えたというところに意味がある」東海道お化け道中 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5怪獣ブームが去りつつあるなか、ガメラシリーズと共に特撮を支えたというところに意味がある

2020年3月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

大映京都撮影所が大魔神に代わる新シリーズとして製作した妖怪三部作の第三作

三部作といっても物語が連続するシリーズではなく、独立した物語

本作は1969年3月公開
ガメラ対大悪獣ギロンの併映作品

監督は第一作と同じ安田公義
前作で本編も監督した黒田義之は、本作では特撮監督に専念している

この妖怪シリーズでも、大映は1966年に三作を立て続けに製作した大魔神と同じ失敗を繰り返している
同じコンテンツを短期間に連発して、コンテンツの消耗を早めてしまっている
結果的にこのシリーズも3作で終わってしまう

第1作 1968年3月公開 妖怪百物語 安田公義監督 併映 ガメラ対宇宙怪獣バイラス

第2作 1968年12月公開 妖怪大戦争 黒田義之監督 併映 蛇娘と白髪魔

第3作 1969年3月本作

内容は第1作のように大人を対象にしているものの、子供を二人登場させてガメラを観に来た子供達にも配慮している
前作同様、当時人気の島田洋介と今喜多代の漫才コンビが出演させて退屈させない工夫をしている

主演は本郷功次郎
ガメラシリーズになくてはならないこの人が主演しているので大いに引き締まって、脚本も演出も水準並みで、楽しく観る事ができる

とはいえホラー映画でも、怪談映画でもなく、単なる人情股旅もので妖怪がでてきたという程度でしかない

そもそも妖怪とは何か?
妖怪の何にについて映画として取り上げたいのか?
ここの考察がなされておらず、単に化け物を時代劇のフォーマットに入れるというだけの代物になっているのだから、これでは息の長いコンテンツに成長しようがない

登場する妖怪は古い文献を元にした伝統的なものであるというだけが救いか

いや、逆に言えばキャラクターの立ったオリジナル妖怪を作っていないということだ
前作のオリエント由来の妖怪ダイモンというのはそれを目指したものだったのだろう

つまり伝統的な妖怪の登場する時代劇の中に物語が閉じ込められてしまっているのだ

それは子供達や大人達も、妖怪登場によるカタルシスが約束されないということを意味しているのだ

特撮シーンは少なく、それなりのもの
ラストシーンの妖怪達が多数乱舞するシーンで、半透明の妖怪たちが、それぞれ多重合成されているのが、なかなかのものであったくらい

本作が日本の特撮の歴史に与えたものは何か?
意義や意味は?と言われると苦しい
ゴジラシリーズが1968年8月の怪獣総進撃で一旦フィナーレを飾ったように、怪獣ブームが去りつつあるなか、ガメラシリーズと共に特撮を支えたというところに意味があるのだろう

あき240