「【アバンギャルド&エロティック&シニカルなるインパクト強大なる映画。今作は、寺山修司が自身の過去と精一杯向き合おうとする様を描いた映画なのである。】」田園に死す NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【アバンギャルド&エロティック&シニカルなるインパクト強大なる映画。今作は、寺山修司が自身の過去と精一杯向き合おうとする様を描いた映画なのである。】
ー 寺山修司氏が自身の故郷である青森に対し、複雑なる思い(愛憎)を持っていた事は、有名であるが今作はその思いを映像化した作品である。
今作では
1.過去の出来事は、虚構
2.記憶からの解放
が、テーマとして描かれている事は、明らかである。
■青森県の下北半島で母とふたり暮らしをする少年は、恐山の霊媒に会いにいき、死んだ父を口寄せしてもらうことが唯一の楽しみ。
ある日、村に不可思議なるサーカス団がやってきて、少年は団員からよその街の様子を聞く。
村を出たくなった少年は憧れの女性を誘うが、彼女は男と自死していた。
◆感想
・今作を難解と捉える向きも多いと思うが、寺山修司氏が抱いていた
1.過去の出来事は、虚構
2.記憶からの解放
という点を考えれば、分かり易い映画である。
・劇中、過去の人物達が白粉をしている事は、”過去の出来事は、虚構”として捉えれば、腑に落ちるし、
・劇中、出戻りの女に犯されるシーンも、彼の過去接して来た女性への、負のイメージを暗喩しているのである。
・ラストのインパクト大の現在の私と過去の母とが故郷で向かい合って飯を食べるシーンの青森の家からの壁が崩れて現代の東京の町のど真ん中にいる設定は、【記憶からの解放】を求めた寺山修司氏が、結局は母と故郷への思いを捨てきれずに持ちながら、東京に出て来て様々な芸術活動をしている事を示しているのである。
<エンドロールの、延々と続く真っ白な背景も、寺山修司氏の過去を全て白紙にするという思いが込められているのだろうか。
尚、このレビューの感想は私個人のモノである事を、一応記します。>
ラスト、東京都新宿区字大字恐山・・・そして新宿東口の風景が映し出される。というか東口アルタ前の線路際から捕らえた風景が映し出される。
50年程前にこの映画を観たときに、ああここから撮ったんだなあと場所を確認したのを覚えています。