「徹底したリアリズム」帝銀事件 死刑囚 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
徹底したリアリズム
信欣三ファンとしては数少ない主演作品のこの作品は実に貴重と言えます。しかし実際の主演となると新聞記者役の内藤武敏かな。
日本の犯罪史上に残る出来事を、当時のニュースフィルムを交えて丁寧に描写していますが、何よりも戦後の東京の焼け跡からの復興期の混乱と熱気がフイルムから沸き立つ様に漂っています。
映画の中では真犯人は他に居て、関東軍731部隊の存在と、当時の米ソ対立の図式の為の犠牲になった描かれ方ですが、それを暴き切れないもどかしさが、内藤・鈴木を始めとする出演者の演技から伝わって来ますね。
熊井啓監督の徹底したリアリズムに基づく演出にグイグイと引っ張られて行くのですが、撮影当時はまだ平沢容疑者が収監中の身であった為か、新聞記者側の視点で展開されて行った真実の追究が、後半の裁判からは平沢容疑者に移り、いつしかエンディングに至るのは、現実の事件同様に映画も混迷している感じではありますね。
それにしても加藤嘉は此処に居たのか〜
コメントする