「熊井啓監督のデビュー作にして傑作!」帝銀事件 死刑囚 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)
熊井啓監督のデビュー作にして傑作!
熊井啓監督の監督昇進第一作(監督デビュー作)である本作は、真実を追求しようとする後年の熊井啓監督作品に通じる映画であり、傑作!
初見は、学生時代のACTミニシアターだったが、久しぶりに観た。
帝銀事件とは、1948年1月(日本がマッカーサーをはじめとするGHQ占領下)に、豊島区の帝国銀行椎名町支店に現れた男が行員らを騙して12名毒殺し、現金と小切手を奪った銀行強盗殺人という凶悪事件である。
捜査の過程で事件に悪用された名刺を追及した検察が、100枚の名刺のうち不明な名刺を追い求め、その名刺交換をしていた町の画家=平沢貞通が逮捕され、容赦ない取り調べを受けた後の裁判で死刑判決を受けたのだが……という戦後日本最大の事件。
本作を見応えある映画にせしめたのは、やはり(熊井啓が執筆した)脚本の上手さ、平沢を演じた信欣三の力演、そして重い内容を和らげるような新聞記者(内藤武敏)と被害者の生き残り女性(笹森礼子)のロマンス、これらが見事なまでの完成度。
そして、冤罪に見える犯罪者家族たちの悲痛な思いも描き切った語り口絶妙な映画である。
そして心震えるような場面としては、「平沢死刑囚と娘が監獄の金網越しに手を合わせる場面」で感動きわまる素晴らしい映画である。
<映倫No.13509>
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