「ちょっとしたきっかけで見知らぬ他人が」血槍富士 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとしたきっかけで見知らぬ他人が
1955年。内由吐夢監督。伊藤大輔、小津安二郎、清水宏というすごい面々が企画に協力しているのは、戦後中国からながらく帰ってこられなかった内田監督の戦後第1作だから、らしい。若い主人の槍持ちをする男は主人に従って東海道を江戸に向かっている。武士へのあこがれをもちつつまじめに奉公している。槍にあこがれるという少年がついてきたり、娘連れの旅芸人の女と親しくなったりしながら、途中、困窮から娘を売り払おうとしてる父娘、なぜか大金をもっている貧しい中年男などと同宿になる。街道では大泥棒のうわさがたえず、酒癖が悪い若い主人はお伊勢参りの人々に絡んだりしている。それぞれの事情が明らかになり、旅が再開されようとするとき、若い主人が酔っ払った武士の集団に絡まれて、、、という話。
ひとつひとつのエピソードが立っていて、物語の流れがひとつになって生み出す心地よさはないが、ちょっとしたきっかけで見知らぬ他人がちょっとずつ関わっていく解放感がすばらしい。特にお伊勢参りの集団が混雑する宿に後からやってくるあたりの呼吸は清水宏といいたくなる。盲目のあんまもいるし。最後の大立ち回りも確かにすばらしいが、そればかりがすばらしいわけでもないことがすばらしい。
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