暖流(1957)のレビュー・感想・評価
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暖流というより濁流っぽい
57年大映。増村保造監督三作目。
ある病院の再建を任された男が内部に入り込んでいくが…。冒頭から目まぐるしい台詞の量で展開が速い速い。増村監督は初期からこれ。
爽やか映画かと思っていたんだが真逆だった。登場人物が全員奇妙に歪んでいる。ドロドロとした思惑と人工的に明るい画面。デビッドリンチっぽさあるね。
船越英二がヒゲ生やしたボンボン役やってて最高。左幸子の一方的な好意はとても怖い。それでいてラストの展開になっちゃうのもすごいですね。余韻が無くザクッと終わるのも増村映画の特徴です。
すれ違いのメロドラマ
アメリカ帰りのお嬢様志摩啓子(野添)。『姉妹』を見たばかりなので彼女の変わり映えにびっくり。わずか2年後の映画だというのに・・・
日匹(根上)は病院の主事として運営管理をまかされた。院長は癌のため1年以内には死んでしまうと自分で言っていた。借金まみれの病院。院長の長男・志摩泰彦(船越英二)がボンボン医師が小遣いをもらいすぎてた(笑)。啓子と同級生でもある石渡(左幸子)をスパイに使い、週刊誌に自殺した看護婦のでっちあげ記事を提供した事務長の甥を追放したりする。やがて院長は亡くなり、啓子の婚約者である笹島医師(品川隆二)との結婚をも見ることはなかった。
病院の改革も進み、後は啓子の結婚を待つばかりと思っていたら、笹島の愛人問題が発覚。しかも、笹島は愛人は愛人として残し、そのまま啓子との結婚を進めようと割り切った考えのエゴイストだった。すぐに婚約を解消した啓子。石渡もスパイ活動に専念したため本業が疎かになって病院を辞めた。その石渡は啓子に日匹に近寄るなと忠告・・・三角関係の誕生だ。
泰彦も病院を辞め、ファッションモデルのマネージャーなどという俗な仕事に就こうとし、志摩家の財産を無心したりする。そして日匹は啓子にプロポーズ。その場で返事をすれば幸せにもなれたのだろうが、保留にしたまま・・・。病院では“日匹を追放せよ”ビラが貼られたり、嫌がらせも度を増すし、病院再建のための資本家からも用済みのレッテルが張られてしまう。ビラの犯人は辞めさせられた事務長の甥だったが、クビなった連中が組んでやってたこと。そのアジトに石渡の姿もあったが、それは彼女が日匹に対する好意でスパイ的に忍び込んでたとの告白を受け、彼女との結婚を決意する日匹であった・・・
すれ違いのメロドラマを病院という舞台で描いた作品。クビになった連中は労働争議とかいったものとは無縁で、当時多かった労働者視点での映画ではない。日匹が革命家などと称されるところから見ても全く逆なのだ。最後には資本家の言いなりに辞めてしまう虚しさ。そして、啓子がプロポーズを受けると告白するも遅すぎたという虚しさ。1939年にも映画化されているが、前・後編に分けられるほど長いストーリー。それを96分に収めることの難しさ。テンポ良すぎて感情移入するヒマもなかった・・・
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