タンポポのレビュー・感想・評価
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おにぎりかラーメンか
トラックの運転手のゴローとガンが入ったラーメン屋では、タンポポという女性が1人で切り盛りしている店だった。味はイマイチなのだが、人柄に惚れ、ゴローはタンポポに頼まれるまま街一番のラーメン屋にすることにする。
所々に食べ物に関する話も挟まれていて、観ていて飽きない面白さ。それぞれのキャラクターが個性的でまるで漫画を観ているような感覚がある。途中に挟まれる小話はセリフも少なく、俳優の微妙な演技で語られユーモアに富んでいて笑える。全体的に明るく子どもも観れるような話の運びなのだが、途中でおっぱいが出てきたり妙に性的な要素があり、ギョッとしたのは私だけか。あれが無ければよかったのになぁと私は個人的に思うが、あぁいうのがいいとされる時代だったのかもしれないので、そういうことにしておこう。
つい最近「かもめ食堂」を観た。その時におにぎりが日本人のソウルフードだと言われていたが、実はラーメンなんじゃないかと私は常々思っている。おにぎりは誰にでも作れて親が作ってくれた思い出などが付いて回る食べ物だが、日本人同士の会話で話題になる食べ物と言えば圧倒的にラーメンである。こだわる人はかなりこだわる。店を食べ歩いて回るラーメン批評家だっている。
おにぎりとラーメンは質が違えども、両方ソウルフードなのかなぁ。
前にも書いたが、アメリカ人のソレは「ピザ」だと私は断言する。「ピザ」と言う言葉だけで彼らの脳内には、ピザの美味しさや各自のピザに対するこだわりや想いが駆け巡るらいい。きっと思い出も付け足されるのだろう。
一見さんお断り、といった感じ?
最初に見たのは地上波のテレビ放送だったか─。ガキんちょだった自分の印象は、なんてエッチでめちゃくちゃな話なんだ・・・あの虫歯の表現はリアルで嫌(虫歯だらけの自分にとってはつらくてあまりにリアルだったので─)・・・食材や料理などの表現も禁断的なものを感じて、いろんな欲望をくすぐられる要素が満載であるが故の引力は強烈ではあったけれど、素直に受け入れることができなかったという印象・・・。
時を経て、多少ものごとを知るようになってから再びビデオレンタルで見たはず。そこで改めて見た欲望の数々・・・特に役所さんのところなんて。いい・・・、としみじみ─。そしてそこに添え物のように展開する師弟関係のラーメン作り(─実際こっちがメインなんですが、エロには勝てません─)、最後もなかなか感動的だと実感できたのでしたー。
それから何度見たか分かりませんが、都度自分の中に染みてきて、もはやこれは邦画史上最高の作品なのではとの思いに至る。
トラック野郎的な面白さ、恣意的に絡み合う複数のストーリー、リストとかマーラー、若き日のケンさん(─渡辺のほうで─)、宮本信子・山﨑努はもちろんのこと味のある出演陣などなど、見どころ満載。笑いと感動、エロとか食とか欲望と五感(?)を刺激してくれる素晴らしいエンタメ映画だと思います。これだけ濃密に楽しませてくれる日本映画は、いまだ現れていないと思います。まぁ、他の作品は一度見て判断して捨て置いているだけなのかもしれませんが・・・少なくとも、何度も見たくなるような作品はこの作品以降、自分は知りません。
とりとめのない話の詰め合わせ
総合55点 ( ストーリー:50点|キャスト:65点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
「マルサの女」「スーパーの女」等で業界の裏側を見せたように、ラーメン屋を繁盛させるための裏側の努力を見せて店を再生させる話なのかと思ってみていた。ところが全く本筋と関係のない小話や場面を見せるとりとめのないことが続く。役所広司の濡れ場などに官能的面白さや芸術性があったりしたが、基本的に意味がない物語をこんなに挿まれてもまとまりがない。瀕死の妻に料理を作らせ、スパゲティを音を立てて食べさせ、会社の役員が食事をして、それがどうしたのか。本筋のラーメン屋も掘り下げ方が浅くて、この程度でお店の再生など納得出来ない。伊丹監督作品は殆ど見ているが、その中で最もつまらない作品だった。監督として初期の作品だから、何でもかんでも詰め込むという遊び心が過ぎて主題がはっきりしていなかったのではなかろうか。
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