Wの悲劇のレビュー・感想・評価
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【”顔ぶたないで。私女優なんだから・・”夏樹静子氏の名作を劇中劇として、舞台女優映画に昇華させた作品。若き、薬師丸ひろ子さんの懸命なる演技及び類稀なる透き通った声を再認識する作品でもある。】
ー 劇団の研究生・三田静香(薬師丸ひろ子)は、芝居のために先輩俳優と一夜を共にするなど(何故??)芝居に打ち込む日々を送っていた。
そんなある日、看板女優・羽鳥翔(三田佳子)のパトロンが腹上死したスキャンダルの身代わりとなった彼女は、その代償として舞台「Wの悲劇」のヒロインの座を手に入れる。ー
◆感想
・夏樹静子氏の名作「Wの悲劇」を2000年代の新装版で読んで、余りの出来の凄さに驚いた者としては、今作の作品設定(劇中劇)に、大いなる違和感を感じた作品である。
ー 今作を、リアルタイムで観ていないので、今作に格別なる思いを持つ方には申し訳ない。-
・更に言えば、今でもあると思われる(昨年、何人の映画監督がセクハラ問題で、映画界を追われた事か・・。)女優として、名を挙げるために影響力ある男に身を捧げ、地位を得るという設定が、当時は当たり前だったのかもしれないが、受け入れがたい。
ー 今、腹上死って、あるんですかね???。あるのかなあ・・。
男としては避けたい死に方であるし、そんな行為に及ぶ男と受け入れる女優さんも・・。
最近鑑賞した、唾棄すべきハーヴェイ・ワインスタインの愚かしき行為を暴いた女性記者たちの映画が脳裏に過ってしまった。時代かなあ・・。-
・と、散々悪態を書いて来たが、矢張り若き薬師丸ひろ子さんの姿は魅力的なのである。
ー 先日、「探偵物語」を鑑賞した際にも思ったのであるが、私にとっては薬師丸さんは”優しいお母さん”を演じる女優さんのイメージが強いのだが、今作を含めた作品を40年振りに鑑賞すると(というか、当時オイラ赤ちゃん・・。)、現代のアイドル女優さんには到底求められないことまで、制作者側から求められ(角川さんさあ・・。)、それにキッチリと応えている演技は、素直に凄いなあ、と思うのである。ー
・お若き薬師丸さんは、それに対し相当悩んだと思うのであるが(推論)、それを受け入れてキチンと応えている姿には文句の言いようがないのである。
ー だって、「探偵物語」のラストで、故、松田優作との激しすぎるキスシーンなど、驚いてしまったぞ。-
<今作の作りには色々と言いたいことが有り、素直に記したが、それは薬師丸ひろ子さんの演技の価値を落とすモノではないと思う。
矢張り、凄い女優さんなのである。
でなければ、40年近く邦画の第一線でご活躍されることはないであろうし、何よりも薬師丸さんの透明感ある音程にブレの無い透き通った今作のエンディングでも流れるメインテーマの歌唱力は、比肩無きものであるからである。
少しづつ、若き薬師丸さんが出演された映画を観て行こうと思っている。>
これが映画だ。
何度見たか。
劇中劇の娘、を演る劇団練習生、を演る薬師丸、という三重構造を毎度楽しむ。
大女優を地で行き図太くか細く演る三田佳子(邦画史上の事件級の激演)、
濃密な脚本と演出、
これら全てが人気絶頂で未だ伸び代ある薬師丸を魅せる一点に注がれた映画的幸福。
これが映画だ。
演じる者の悲劇
劇団「海」研究生の静香はある不安を抱えている。現実世界でどれだけ衝撃的なできごとがあっても、それを反射的に悲しんだり怒ったりするより先に、そこにおいてありうべき振る舞いを冷徹に判断する「もうひとりの自分」が現出する、という不安だ。
たとえば飼っていた犬が死んだとして、涙を流すことより先に「ここで涙を流せたら素晴らしいだろうな」という打算が頭をよぎってしまう感じ。フィクションに多少なり携わったことのある人だったらこの感覚はすごくわかるんじゃないか。
しかしここでの「素晴らしい」の主語は観客、つまり他者に他ならない。何をやっても常に他者存在というノイズに邪魔をされ、自分ごとを自分ごととして純粋に引き受けられないのだ。このような自分自身の審級より他者の審級が優先される状態が続けば、当然ながら自分の言葉や行為からは重みが抜けていく。
何かを真に迫って演じる、という演劇の世界で生きる静香にとってそれは絶望そのものだろう。何を演じても重みが生まれないのだから。
静香は公演『Wの悲劇』で一介の女中役を務めていたのだが、先輩女優の不倫スキャンダルを肩代わりしたことで主演女優の座を譲ってもらう。
記者会見の折、静香は先輩女優の不倫相手である大物経営者との関係をマスコミに問い詰められる。しかし静香は物怖じせず、大物経営者との存在しない思い出を情感豊かに語ってみせる。底意地の悪いマスコミの面々も、彼女の鬼気迫る語りに圧倒されてしまう。
後日、彼女を主演に据えた『Wの悲劇』が上演され、公演は大喝采の中に幕を閉じた。しかし直後、先輩女優の思惑によって主演を罷免された女がマスコミの前で全ての真相を暴露してしまう。静香はやっとのことでしがみついたスターダムから再び転げ落ちてしまう。
それでも静香は演劇をやめなかった。ラストシーンで彼女は自分に好意を寄せる男のことを潔くフった。「男の庇護下に入る」という退路を自ら絶ってみせた。
演じることによってかえって演技にリアリティがなくなるという不安。それを静香は「逃避」ではなく「包摂」によって解決しようとした。つまり自分の演技にはリアリティがないことを引き受けたうえで、なおも演劇の世界で生きていくことを決断したのだ。
正直言ってこれはかなり見込みのない選択だ。絶望と手を取りながら前に進んでいくというのはどう考えたって辛く苦しいし、演劇の世界もまたそのような個人的事情を鑑みてくれるほど甘くはない。終盤で静香が天井に貼り付けた『Wの悲劇』のポスターを剥がそうと何度も何度もジャンプするシーンは、芸能界の厳しさを暗示している。
しかしその一方で、静香が嘘の愛人を演じることでマスコミに一泡吹かせたり、『Wの悲劇』の主演を務めて拍手喝采を浴びたりしたことは紛れもない事実だ。「もうひとりの自分」を抱えながら演技に生きることは、必ずしも辛く苦しいばかりではない。
華々しい世界の舞台裏的リアリズムを鬱々と描き出しつつも、同時に一縷の希望を敷設する脚本の優しさに感動した。
いつ見ても三田佳子の女優然とした貫禄すごいなあと思う。薬師丸ひろ子...
いつ見ても三田佳子の女優然とした貫禄すごいなあと思う。薬師丸ひろ子と世良公則は、まだ若手俳優なので演技がみずみずしくて爽やかです。あと蜷川幸雄が俳優出演してるのレアですよね。
国民的センセーションを産んだ角川映画と薬師丸ひろ子
当時の角川書店は映画は映画配給会社が作るものという常識に真っ向から挑み映画業界の勢力図を塗り替える革命児でした。角川の戦略は原作本を映画化することによって原作もまたベストセラーにする戦略。また主題歌も大々的にPRし専属女優に歌わしヒットさせるマルチな成功をおさめていました。
Wの悲劇はマツコも絶賛する薬師丸ひろ子主演の角川映画の金字塔。薬師丸ひろ子が本格女優として脱皮する作品になります。かなり難しい原作を今も活躍している荒井晴彦が脚本化しています。とにかくこの頃も脂の乗り切ったベテラン女優三田佳子と薬師丸ひろ子の芝居合戦が素晴らしい。三田佳子はこの作品で日本アカデミー最優秀助演女優賞に輝いた。今でも主題歌が頭をよぎる名作であり、今ではコメンテーターの高木美保のデビュー作でもある。なんとなくテレビで放映された際にみたが、昨年国立映画アーカイブで改めて観賞でき良かった。
若手天才女優薬師丸ひろ子と実力派ベテラン女優三田佳子の丁々発止の演技合戦
NHK BSプレミアムの放送で観賞。
薬師丸ひろ子と三田佳子の演技合戦が最大の見所。
薬師丸ひろ子と松田聖子のリアルタイム世代である私は、薬師丸ひろ子の主演映画は全部劇場で体験している。
彼女は爆発的なアイドル人気を得ていたが、最初から演技勘は天才的だった。この映画で演じた劇団研究生のような演技修行を彼女は経験していないのだ。
そんな薬師丸ひろ子が、遂に女優として高く評価されたのがこの作品である。
三田佳子の方はと言えば、私が子供の頃郷里のテレビで流れていた日本酒「土佐鶴」の時代劇仕立てのCMで、和装の女性の魅力を教えてくれた存在だ。
原作の夏樹静子の推理小説を作中の舞台劇にする大胆なアイディアは、公開当時も話題になった。
舞台上の母と娘が、それを演じるスター女優と劇団研究生の関係に重なる二重構造だが、現実世界の方を殺人事件にしなかったことで、意図せず掴んだチャンスをきっかけに「女優」の才能を開花させていく強かな主人公の姿を描くヒューマンドラマになっている。
更には、ベテラン三田佳子と天才薬師丸ひろ子の女優対決をも透かし見ることができる面白い仕掛けだ。
三田が情夫の腹上死の偽装を薬師丸に持ちかける場面、二人の掛け合いが見事だ。
必死に説得を図る三田の視線を避けようとする薬師丸は、茫然自失の体でありながら頭の中では計算を巡らせているようでもある。
窮地に陥った憧れの先輩を見捨てるのか、とんでもないものを自分で背負うのか、薬師丸の中に葛藤を見てとった三田の最後のひと押し…
「できるわよ。だって、あなた役者でしょ!」
そして、三田佳子の最大の見せ場がやってくる。
スキャンダル研究生を降ろすべきか多数決で決めようとするキャストとスタッフたちに向かって、持論を熱弁するシーンだ。
公演後の舞台の上という設定がこのシーンを盛り上げている。
「ヤスエさん、…そんなとき、女使いませんでした!?」
薬師丸ひろ子の一番の見せ場は記者会見のシーンだろう。
長い台詞を涙ながらに語るこのシーンで、薬師丸は女優としての評価を不動のものとした。
「…私のお金でジュースとハンバーガー…あの人とても喜んで…」
この後、三田佳子が三田村邦彦に真相を話す場面がある。記者会見を見て悔しかったと言う。
実際、この薬師丸ひろ子の芝居を見たとき、三田佳子はどう感じたのか聞いてみたい気がする。
役者の糧のために男と寝るとか、研究生たちが「処女」の役について議論したり、世良公則が自分を見つめるもう一人の自分に気づいて役者をやめたとか、当時としてもなかなかに臭い役者論が展開される。
やたらと女優を強調する三田と薬師丸の台詞も臭いのだが、女優がその台詞に命を与えるのだと明確に示している。
「顔をぶたないで!私、女優よなのよ!」
「女優、女優、女優、勝つか負けるかよ!」
一方で、劇中舞台劇の挿入は極めて部分的なのに原作の筋がちゃんと伝わるという構成の上手さもある。
舞台のシーンは、ほぼ、三田佳子の独壇場だ。
ライバル研究生役の高木美保は、薬師丸ひろ子よりも断然に美人だ。期待したのだが、女優として大成はしていない。昼の連ドラで一時脚光を浴びはしたが。
ところで、彼女に身代わりの偽装を話したのは誰か?
プレイボーイの三田村邦彦が高木美保にも手を出したのだろう。
酔って絡むひろ子
初見だと思うが三田佳子のイメージがはまりすぎてて初見に思えない。やはりすごい存在なんだなと感慨深い。ここがぶれてしまうと主人公の進む道がよこしまになる。大人の世界をひとりで体現して受けとめる大きさ。
劇中劇どころか現実世界を含めた多重構造で、最後の方の展開の盛り方は大味ですらあるが、ラストの薬師丸ひろ子の泣き微笑みのワンショットに沈黙。そして主題歌が素晴らしい後味。
未だ二十歳なんだよな…
原作を劇中劇に。なるほど考えましたね。この改編で本筋は薬師丸ひろ子...
原作を劇中劇に。なるほど考えましたね。この改編で本筋は薬師丸ひろ子の青春映画に。非常に上手くできてました。薬師丸さんはラッキーガールですね。
三田佳子が素晴らしい女優だった。今まで謝罪会見の痛々しい姿しか印象になかった(笑)
ミステリーの「Wの悲劇」は面白いのだろうか。
歌声が好き
薬師丸ひろ子さん演じる劇団員の静香がどんどん女優として成長していく物語。
映画本編と劇中劇を被せていくストーリーの構成が面白かったです。
薬師丸ひろ子さんの歌声(エンディンク曲)、好きだなぁ~。
Wの悲劇のもうひとつの意味
日本版イヴの総てともいうべきものでありました
感動しました
ラストシーンのカーテンコールで思わず自分もまた拍手をしてしまいました
正直、舐めてかかって観始めたことを懺悔します
ごめんなさい、紛れもない傑作でありました
和辻家の悲劇とウイメンの悲劇にかけての題名だと劇中で説明されますが、もちろん、もうひとつの意味が有ります
それはダブル、つまり二重性です
いつしかどちらが本編かと錯覚してしまう劇中劇
そして本当の二重性とは演技をしている自分を見つめているもう一人の自分という二重性ということです
そこに本作のテーマがあります
本当の女優としての薬師丸ひろ子の誕生だけでなく、世良公則も、三田佳子だって本作によってステップアップしたのではないでしょうか?
それでいて、二十歳の等身大の女性の姿が瑞々しくフィルムに焼き付けられています
彼女がそこに確かにいたことを感じる程に
こそには初体験の性、安全日周期、妊娠といった
若い女性だからこその現実も的確に描かれているのです
久石譲の劇伴も素晴らしくクオリティが高く、本編にマッチしているだけでなく気品を与えています
忘れていた二十歳の頃の熱い情熱がよみがえります
今もこのような青春が下北沢の居酒屋に有るのかも知れません
手の届きそうで結局届かない天井のポスター
下北沢のどこかの居酒屋の天井にもポスターが貼ってあったような気もします
タイトルなし
11月のBSプレミアムでドラマ版の放送に先駆けでオリジナル版を観ました。
舞台が終わった最後の方で、主人公(薬師丸ひろ子)を刺そうとしたところ男性(世良公則)がかばうところにあっと思いました。
顔ぶたないで
劇場公開時に『ゴーストバスターズ』と迷ってコッチ(と『天国に一番近い島』)を観た。原作は未読だが作中作で使うという大胆な組み込み方でうまい。女優になっていく主人公と薬師丸ひろ子自身をダブらせて観るといい。
その後の三田佳子の時代の幕開けとなった作品
話の概要は覚えていたのだけど、公開当時の自分は子供で、今回改めて見るまでこの作品の本当の価値と素晴らしさを分かっていなかったと思う。脚本も演出も良く出来ている。
薬師丸ひろ子は演技をしごかれて相当苦労したのだろうなというのが伺い知れる。そしてそれに応えて、女優として一皮も二皮も剥けている。
もう一つ、この映画の白眉は、三田佳子という女優の存在の認識にあると思う。
三田佳子って、それまでは芸能界での存在感が薄かったと思う。それが、彼女がこの映画で演じた「女優」で、私達はその演技力と存在感に圧倒され、魅了され、その後の三田佳子ブームに繋がったのだと思う。
薬師丸ひろ子の観賞用ビデオ
ストーリーじたいは良かったのですが、 とにかく間延びした展開が うざかったです。 いたるところに [薬師丸ひろ子の観賞用ビデオ] のようなシーンが挿入され、 それが うっとおしかったです。 最初から [この映画は薬師丸ひろ子の観賞用です] と注意書きを入れてほしかったです。 30分の総集編にまとめたら、 それなりに楽しめたとは おもいます。
バブルを感じた
映画好きの母が定期的に見返しているということで気になっていた。
ストーリーはただただスタンダードだし特に感動することもないのだが、雰囲気が何よりもいい映画だった。私がまだ産まれる前の母が働いていた時の時代の雰囲気を濃く感じた。服装、街、メイク、雑貨。
母が何回も見るのがよくわかった。
演技面で言えば、三田桂子の演技が周りよりも頭ひとつ抜けているのは明らかなのだが、よりも高木美穂の演技に目が釘付けであった。もっと見たいと思わせる演技であった。薬師丸ひろ子は女優として熟成前という感じ。
自分の中でバブル期の映画が時代遅れという立ち位置ではなく、クラシックという立ち位置に変わってきている。
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