「震えがくるほど面白い」Wの悲劇 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
震えがくるほど面白い
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公開時に見て以来で久しぶりに見返した。改めて入れ子構造のシナリオが素晴らしく面白かった。殺人と演技と、男と女、性愛、役者としての業のようなものが渾然一体に絡み合うとんでもない話だった。
三田佳子が薬師丸ひろ子に罪を着せるための誘導が悪魔的で火が出るような迫力だった。
世良公則は薬師丸ひろ子が、結局役者になることを諦めて、一緒に夢破れた者どうしとして恋愛することを夢見ていたのだろう。彼女は彼女で、彼を最初は下に見ていて、それでもぐいぐい来るとついセックスをしてしまうので、積極性は大事だなと思った。居酒屋の場面では、そんな心の変化を長回しワンカットで丁寧に描いていてすごく自然だった。
女優を目指す若者が苦い現実を味わってそれでもなお女優を目指すわけだが、そんな後悔や現実とのギャップ、苦い思いも含めてトータルパッケージで楽しそうと、羨ましく思ってしまう。
初めて見た時は童貞の高校生だったのに、とんでもなくすごいものを見てしまったという衝撃があった。男女の性愛なんかまったく意味が分かるわけでもないのに、それでも鬼気迫る迫力は伝わったのだろう。改めて見て震えがくるほど面白かった。
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