旅の重さのレビュー・感想・評価
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16才の旅
素 九鬼子のベストセラーの映画化(1972)
その頃の四国の遍路道や自然の美しさ、石垣の漁村などを背景に 少女(高橋洋子)の旅が叙情的に描かれる
作者がこれを完成させたのは 1964年らしく、そのモノローグと物語展開に その時代の文学少女的な青くささ、みたいなものも感じた
(結婚後の執筆だけどね)
遍路道の周辺の人々の温情に甘えながらも、結局は誰かの庇護の下に入らないと生きられない16才
母とその男を嫌悪しながら、でもファザコン気味である彼女は 旅芸人の座長(三国)に好意を持ち、媚びるが冷たくされる
また その無意識の媚びは、別のトラブルを招き 座員の女の怒りをかう
奔放な政子(横山リエ)との交流や 美しい自然の中で 性の解放を夢見たりもするが、そんなものは有りはしない
(女であることの負担ばかり)
語り合えそうだった 漁村の文学少女加代(秋吉久美子)の自死
どうしようもない無力感を 魚の行商人木村(高橋悦史)に救われた形なのに、母には自ら選び取ったような自慢気な手紙を書いたりする
16才の早熟な少女の 精神と肉体のアンビバレンツ
すっかりオバサンになった私は この結末にふと
〈割れ鍋に綴じ蓋〉という諺を思い浮かべてしまいました
吉田拓郎の歌が懐かしかったです
「私はこの重さを嫌ってるんじゃないの」
コジキ遍路を16歳の女の子がするという、今でも、あるいは当時でも珍しいヘンテコ道中記。ホントにその辺で寝て野宿してる。このおぼこさ、垢抜けさはオーディションで蹴落とした秋吉久美子でなくてやはり正解だったのでは。三國連太郎御大のたるみまくった半裸が拝めます。
作中のセリフは、中年の凡夫の私に突き刺さるものがありました。人生そのものの旅の重さ。
「何かが肩の上にどさっとのしかかってるみたいで……重い、…重いの。これは、そう、旅の重さ……旅の重さなんだわ。でも、私はこの重さを嫌ってるんじゃない。これを感じなくなったら、おしまいとさえ思ってるの……。
……だけど…重いわ。……辛いわ…」
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