劇場公開日 1987年9月26日

「市川×東宝特撮“かぐや姫の物語”」竹取物語(1987) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0市川×東宝特撮“かぐや姫の物語”

2018年7月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

単純

近作だと故・高畑勲の遺作。
古来から日本人お馴染みの“かぐや姫”。
円谷英二の念願だった企画を、市川崑が映画化。
製作に田中友幸、特技監督に中野昭慶。
市川組と東宝特撮組が豪華タッグ。
市川崑らしい映像美。豪華絢爛な美術・衣装。
製作費20億円をかけ、国内で作られた同作ではおそらく最大規模。
巨大竜やその他諸々の特撮、当時の最新SFXを駆使したクライマックスの『未知との遭遇』ばりの巨大宇宙船など、中野昭慶の腕の見せ所。
本作は市川作品であると同時に、れっきとした東宝特撮作品の一本でもある。

話自体は誰もが知っているので、今更説明する必要ナシ。
ユニークなのは、他の同作品との相違点。
何と言ってもその最たるは、かぐや姫は宇宙人だったという設定。
幼少時の青目のかぐや姫や、本来御所車と天女である月からの迎えが巨大宇宙船になるなど、純日本的物語に西洋風のSF要素が取り入れられ、また違った“かぐや姫”になっている。

映像や特撮は見事だが、ドラマ部分は…。
かぐや姫の心情を事細かに描いた高畑勲版を見た後だと、どうしてもドラマ的に弱い。
かぐや姫はあっという間に成長するし、昔ながらの運命に身を任せる典型的な女性像。
育ての父母との愛情、美や宝の虜になった人々の欲など描かれているものの、今一つ深みが足りない。
ドラマ部分も見事だったら、ひょっとしたら傑作になっていたかもしれない…。

市川作品の代名詞でもあるオールスターキャスト。
日本映画界を代表する圧巻の顔触れだが、三船敏郎らの演技がちと芝居ががってるのが気になる。

作品の出来としてはまずまず。
日本人に語り継がれる馴染み深い物語と贅沢な映像世界だけでも堪能出来れば。

近大