「魔神様の十戒」大魔神怒る 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
魔神様の十戒
シリーズ2作目。
大魔神3部作は一話完結で、話に繋がりは無い。
非情な悪人が強いる悪政や陰謀に主人公や民が苦しめられた時、清らかな祈りや涙(ヒロインや子供)によって魔神が目覚め、悪人に神の怒りの如き天罰を下す。
この同パターンを踏襲した、毎回別の場所の別の魔神伝説。
平穏な関係築く名越と千草の二つの国。
両国の間に湖があり、湖中央の小さな神ノ島で守り神である神像が祭られていた。
ある日、神像の顔が赤くなる。それは、悪しき事の予兆…。
千草の隣国の御子柴が千草に攻め入り手中に収め、名越にも侵攻しようとする。さらには神像をも粉々に破壊する。
両国存亡の絶体絶命に陥ったその時…!
前作はお家再興の話だったが、今回は国と国の争い。
加えて、千草の若き領主と名越の娘のロマンス模様もサブながら描かれる。
より大人向けで、より時代劇としての見応え。
三隅研次の娯楽職人手腕も冴える。
ヒロインの藤村志保も美しい。
このテイストのままで良かった気もするが、前作本作と子供には退屈だった為か、次作で子供が主人公になってしまったのが少々惜しまれる。
今回の魔神は、水の神。
中盤で粉々に破壊され湖に沈められ、そして終盤、湖から現れる。
大きな波を立て、湖を真っ二つに割って出現するシーンは、言うまでもなく某ハリウッド史劇スペクタクルへのオマージュであり、日本版としての挑戦。
さすがに当時は水の特撮や合成は難易度が高かったようでちと粗いが、それでも非常にインパクトある画になっている。
それにしても、伊福部昭の重厚な音楽と共に魔神が水の中から現れると、ついついライバル会社の怪獣王が頭を過ってしまう…。
内陸での精巧なミニチュア特撮は前作に引き続き素晴らしい。
その中で地響きするほどの重々しい足音を立て、恐ろしいまでの形相で悪人どもに迫り来る魔神の迫力は圧倒的。
今作でも悪は徹底的に懲らしめられ、天罰が下される。
前作では土塊となって消えていった魔神だが、今作では水の神故、水となって湖に消えてゆく。
なかなかファンタスティックで美しくラストシーン。
毎回趣向を凝らした魔神の出現シーンや問答無用の無双っぷりもさることながら、何処か神々しい魔神様の去り方も見ものの一つ。