大菩薩峠(1960)のレビュー・感想・評価
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虚無の因縁
"大菩薩峠(大映版)" 三部作第1部。
"大映4K映画祭" で2回目の鑑賞(4Kデジタル修復版)。
原作は未読です。
後の眠狂四郎を彷彿とさせる市川雷蔵の虚無演技が絶品でした。美しい顔立ちがニヒルに染まる時、壮絶な色気が…
斬りたいから人を斬り、自ら地獄へ続く道を突き進む机竜之助。大菩薩峠から始まった因縁が絡み合う展開が面白い!
音無しの構えからみせる華麗な剣捌きも見事でした。
中村玉緒の悪女演技も素晴らしい。竜之助を苛み続けることになるお浜を情念たっぷりに演じていて、その最期も壮絶…
お浜と瓜二つで性格が真反対のお豊も同時に演じており、中村珠緒の俳優としての技量のすごさを見せつけられました。
狂った竜之助と宇津木兵馬の対決、と云うところで「第一部 完」。なんと巧みなクリフハンガーなのかと思いました。
雷蔵の美しさは虚無の中にある。
長らく手が出なかった映画だった。
しかし、何もする事がないと気づいた今こそ観るときが来たのだと実感した。
ストーリーは実にシンプル。虚無感に囚われてしまった人間は如何に生き延びるのか・・・
そんな命題を抱えて制作した映画なのだろう。
迷い、足掻き、悩み、忘れる。
そう、剣の道に迷い込み、
強くなればなるほどに強くなることの意味を求めてしまうのだ。
強くなることに意味などないのだ。
初めから生きることに意味などありはしないのに、さも自分自身の存在と自己確信を感じるために人は動く。ましてや剣客であるが故に意味を求めるあまり、充実感を求めてしまう。そう、殺しあう瞬間の充実感。生きていると実感できる瞬間を求めているかのようだ。そして、無抵抗の人間を斬るのは刀剣の素晴らしさを実感するためなのだろう。物欲と自己顕示欲の交差。こんな人間には決して出会いたくはない。しかし、映画を観ながら気づくのだ。自分自身に当てはまる部分を・・・・。
人は恐ろしい。。。。。
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