太平洋奇跡の作戦 キスカのレビュー・感想・評価
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こんなことがあったなんて知らなかったし、こんな映画が存在していたことも知らなかった
ぼくの親父は旧日本陸軍航空隊のパイロットだった(ぼくは親父が50歳のときに生まれた)。
小さいころから軍隊生活の話を聞かされて育ったし、ぼくも少しずつ、先の戦争のことを調べるようになっていった。
そんなわけで、ぼくはわりと太平洋戦争・大東亜戦争のことについてのおおまかな知識はあると自分で思っていたけれど、本作のストーリーのもととなった史実についてはまったく知らなかった。そしてこんな映画が存在していたことも全然知らなかった。勉強不足でした。
さて、今回、京都に出かけるついでに文化博物館のフィルムシアターで本作を鑑賞したわけだけど、いやぁ、素晴らしい作品でした。名作、いや傑作といってもいいでしょう。
本作には「救出する」という明確な目的があるから、ストーリーに大きな動きが生まれる。
我々鑑賞者は、そのダイナミックな動きにただ意識を委ねればいいだけである。
しかも、昭和を代表する名優ぞろい。とても安心して鑑賞することができました。
いま「安心して鑑賞できた」と書いたけれど、緊張感が足りないという意味ではない。
物語は終始緊迫感を持って描かれ、そこに日本人の美徳(?)のようなものが加味され、見応えたっぷり、「グッとくるぜ!」という展開でありました。
それにしても、組織において、指揮官の判断がいかに大事かということをあらためて思い知らされた。
言うまでもないことかもしれないけれど、優れたアクセルとブレーキを合わせ持った人材でないといけないなぁ。トップに立つ人は。
アッツ島に配属された部隊は全滅して、その近く、キスカ島の将兵たちは無事救出された。
主に爆撃機のパイロットとして外地を10年転戦した、ぼくの親父は、生前「人生は運だ」とよく言っていました。
子どもだったぼくは、その言葉を懐疑的に聞いていたけれど、本当に「人生は運」かもしれないなぁと、この映画を観て、そう思いました。
なるほど、人生は運なのかもしれないな。結局のところ……。
もう一つ、「なるほど」と思わされたことがあった。
上映後、トイレで小便をしていると、となりで用を足していたおじいさんが言った。
「あれ、昭和18年のことやから、あの兵隊たちも、またどこかに転戦させられたんやろな……」
なるほど。キスカで救出された将兵たちだったが、“強運”はいつまでも続くものではないだろうなぁ。
助かったからって「めでたし、めでたし」ではすまないのだ。
戦争映画なのだが…。
〈映画のことば〉 「礼は、後で、まとめて言う。 だが、それは、キスカの5,200名を無事に連れ帰ってからだ。」 米軍が制海権を握っているキスカ島からの撤退作戦。それ故、万が一にも会敵すれば壊滅的な被害を受けることは確実な情勢。 しかも、作戦目的は将兵の撤退という最初から戦果ゼロがわかっているうえに、資源(兵力、燃料)も限られている―。 そんな作戦でも、その意義を衷心から理解してベストを尽くす大村少将の姿には感動を覚えます。 こういう困難な作戦であるからこそ、川島中将にわざわざ抜擢されたという付託に応(こた)えて、その使命を見事に果たしたい。 そう思うのは、おそらく大村少将や評論子だけではないことでしょう。 もともとが、戦争という始めなければ良かった題材ではあるのですけれども。 評論子にとっては、気持ちがくじけそうなとき、勇気を与えてくれる作品として、秀作としての評に値する一本です。 (追記) 〈映画のことば〉 「帰ろう。帰れば、また来ることができる。」 〈映画のことば〉 「(後続艦が)迷子になったのは、いつ頃だ。」 「まだ、そんなに経っていません」 「(艦砲を)一発ぶつ放してみるか。」 「やめて下さい。敵に砲声を聞かれる心配があります。」 「あちらさんには、レーダーがある。(砲声を)聞かれるくらいなら、とっくに見つかっているよ。」 〈映画のことば〉 (味方艦同士が)衝突するくらいだから、霧は満点だ。 ぶつぶつ言ったら、バチが当たる。 〈映画のことば〉 「両舷停止」 「えっ、止まるんですか。」 「島の西側に回ろうかと思うんだ。」 「むちゃです。水路の研究がまったくできていない。それに、この辺は浅瀬が続きます。」 「いや。潜望鏡片手に乗り切った男がいるんだ。伊七号潜水艦の艦長だよ。」 「しかし、(潜水艦ならいざ知らず)隊伍を組んだ艦隊が…。自滅しに行くようなものです。西側に回れば、水路の危険には確実にぶつかります。しかし、東側に回っても敵にはぶつからないかも知れません。」 「島の兵隊たちには、もう一日だけ待ってもらう。艦隊は西側に回る。」 困難な中でも、大村少将の肝の座った、部下の度肝を抜くような決断には、胸のすくような思いもします。 困難な状況の中で。 評論子が「勇気をもらえる」という所以(ゆえん)でもあります。
面白い日本製戦争映画
昔、劇場の二本立ての一本で、メインは「赤ひげ」だったような気がするが、自信なし。 連合軍に取り囲まれた、アリューシャン列島のキスカ島に駐留する日本兵約5200人を救出する話。 日本の戦争映画は悲劇的なものが多い中で、玉砕を避けるための作戦があったことがちょっと誇らしい。
特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!
特撮はもちろん円谷英二 公開は1965年6月19日です 三大怪獣地球最大の決戦 1964年12月20日公開 フランケンシュタイン対地底怪獣 1965年8月8日公開 本作はこの二つの怪獣映画に挟まれて製作されたました つまり本作は怪獣映画のピークに達した時に製作された作品であると言うことです さらに言えば怪獣映画だけでなく東宝特撮が世界の特撮界の最先端を誇っていた時期だということです 但し本作は白黒作品です 本編監督の丸山誠治監督の出来る限りドキュメンタリータッチにしたいと言う意図でそうなったのかも知れません 公開日が6月の梅雨時だということは一番客入りが低調な時期ですから予算を掛けられない 単に、それだけのことであったのかも知れません しかし、本作の舞台がアリューシャン列島のキスカ島という夏でも極寒の荒涼した島です 火山灰が降り積もったとおぼしき黒い岩と砂、そして雪という白黒の世界 空は暗く、白い濃霧が立ち込め、海もまたそれを写して鉛色です そして救出に向かう艦隊もまた灰色の軍艦色 何もかも無彩色の世界なのです だからこそ、本編監督が演出の一環として白黒撮影を選択したのだと思います それは大成功していると思います いずれにしても特撮班からすればどちらでも同じです ミニチュアセットや飛行機の繰演、爆発シーン やることは同じです しかし、最高潮に達していた円谷英二の特撮班はこの白黒撮影を活かしてよりリアリティのある特撮映像をものにしています 艦隊根拠地の泊地に停泊する多数の艦艇シーンのリアリティ! 正に実写のような軍艦の巨大さ、鋼鉄の質感を表現出来ています 1/ 700スケールのウォーターラインシリーズという、軍艦の喫水線から上だけの精密なプラモデルを幾つも作ったことある男の子なら、おおおおっ!となることは間違い無しです 島の西側の未知の水道を迂回するクライマックスは手に汗握るシーンでした そして近づいてくる軍艦の発する地響きのような重低音の機関音に気づいて哨所の兵が島の直ぐ脇をかすめるように進む軍艦をあっけにとられて眺めるシーンの軍艦の巨大さの表現は素晴らしいものでした 本編監督の出来るだけ実際に忠実に撮影するという方針は、特撮パートでも徹底されており爆撃機や戦闘機の交渉もしっかり成されています ただイ号潜水艦を攻撃する航空機の映像は多作品からの流用であるため英軍のマーキングであるのはもったいないことですが、一瞬のことです 日本の特撮は怪獣映画やSFものスーパーヒーローものがまずイメージされます しかし、本来戦争映画から日本の特撮は出発したのです こちらの戦争映画の特撮の方が本流と言うべきなのだと思います 低予算でよくこれだけのクオリティを成し遂げた当時の特撮の技量の高さを是非堪能して頂きたいと思います 本編のドラマも大変出来がよく、オジサン俳優総出演というべき重厚さです 特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です! 本作は戦争映画だから、戦争を賛美している? 馬鹿言っちゃいけない 本作は反戦映画であると真面目に断言します 兵もまた人間です 同胞の命を大事に扱えないような軍隊は負けて当然なのです それをなんとか一例だけでもやり遂げた そのヒューマニティの精神を賞賛することが本作のテーマなのですから 最初のキスカ島突入時、霧が晴れ始めて突入を迷うシーン 艦隊の各艦と参謀より口々に突入の意見具申が上がるなか、司令官は断腸の思いで断固反転を命令します これは宇宙戦艦ヤマトでの冥王星会戦での沖田提督と古代艦長との名シーンの元ネタになっていると思われます
海軍にまだ威信があった時期の稀有な作戦
クリント・イーストウッドの映画でも知られている硫黄島に留まらず壊滅に至った戦地は数多い、それも完敗を玉砕と言い換えて讃えている。当時の軍部は多勢に無勢でも楠木正成の千早城の闘いに倣えなどと支離滅裂、兵など所詮捨石と考えていた。そんな中でキスカ島撤収作戦はまさに奇跡、海軍の作戦としても稀有な例だろう。昭和18年といえば戦局も不利な中でもまだ余裕があったのだろう、映画の中でも同胞を救うと言うことよりもアッツ島玉砕に続いてキスカ島の兵までもみすみす見殺しにすることでの汚名、面子を慮っているようにうかがえる。
陣頭指揮に当たった木村 昌福少将は立派な髭でも有名、本作では三船さんの役どころも別名(大村海軍少将)で髭も生やしていないのだがでキスカ島の生存者を招いての試写会では劇中、髭の水兵に話しかけるシーンで笑いが起こったそうだ。
国威高揚の美談に描かなかったところは救いだが真相は知る由もない、生存者による考証、監修によりほぼ史実に基づいているとも思われるが作戦が成功していなければ描かれることのなかった戦争の不条理を垣間見せて頂きました。
円谷英二の特撮が光る逸品
面白かった。 第二次世界大戦で日本は敗戦するし、特攻隊やら、玉砕やら、命を粗末にすることが「お国のため」「戦争に勝つため」として勇ましい姿のように見られた時代だけど、そんな中で『キスカ島救出作戦』のような人を助けるために全力を尽くした話が実在した事は、戦争に勝つ事とは縁遠い作戦だけど、素晴らしい事だと思う。 これぞ、日本人の誇りを描いた映画なんじゃないかな? 題材がイイね。 特撮がかなり凄い作品だと思った。 とにかく爆発がスゴイ。花火ではなく爆発だし、爆薬を使う量も多いんだろうシーンがいっぱいある。映像の切り貼りやミニチュアの活用とかで、上手く見せているんだろうけど、違和感ない仕上がりになっており、寧ろかなり迫力がある映像が多い。特に敵戦闘機を撃ち落とすシーンなんかはど迫力である。最近みた『連合艦隊』はミニチュアが前面展開されていたので、それと比べると、ほんとに素晴らしい出来だと思う。
緊迫の救出作戦
DVDで鑑賞。
太平洋戦争が泥沼の消耗戦に突入していた昭和18年。アリューシャン列島のキスカ島に孤立した守備隊約5000人を無血救出したと云う奇跡の実話を映画化した東宝戦記大作。
豪華男優陣が総出演。三船敏郎を筆頭に、山村聡、志村喬、藤田進、佐藤允、田崎潤などお馴染みの顔が勢揃い。胸が高鳴る面子に大興奮。女っ気ゼロの男のドラマ、堪能です。
アッツ島守備隊が玉砕し、米軍の包囲網は着実にキスカ島に迫って来ていました。日々爆撃と砲撃が島を襲い、後に残されたのは総員玉砕のみなのか。キスカ島守備隊の運命や如何に?
ミッドウェイ海戦が徹底的敗北を喫した後、アッツ島だけでなくキスカ島まで見殺しにしようと言うのか。白熱の会議の末に、海軍軍令部が下した決断とは、全員救出せよ!
救出作戦の指揮を執るために召集されたのは現場叩き上げの大村少将。堅実で冷静、無意味な感情論は意に介さず理論的思考と歴戦の経験に裏打ちされた指揮にしびれました。
濃霧に紛れて10隻ほどの艦艇が一列縦隊を形成し、精密な操艦でキスカ島に向かう。キスカ島周囲の米軍警戒網を突破しなければなりません。緊迫感漲る演出に手に汗握りました。
迫真の円谷特撮の素晴らしさたるや。特に、岩礁と岩礁の間の狭い水路を進むシーンにハラハラさせられました。
キスカ島守備隊のドラマも秀逸。果たして助けは来るのか来ないのか。様々な感情が渦巻く中、濃霧から救出部隊の艦影が顔を出した瞬間の歓喜。こちらまで嬉しくなりました。
よもやこのような人道的な作戦が決行されていようとは。
戦争の奇妙な一面を見せられたように感じました。
※修正(2024/05/17)
木村昌福の正伝
太平洋戦史に燦然と輝く鮮やかな大作戦というべきか、キスカ撤退作戦を誠実に伝える名作。戦後イデオロギーが反戦をテーゼにしないと映画にできないとでもいうような、妙な思想が蔓延する前の痛快で爽やかな名作。
霧隠れ救出作戦
『ダンケルク』という実話を基にした撤退作戦の戦争映画があったが、日本にもあった。 1965年の東宝特撮戦争映画。 敗戦色濃く、太平洋の島々の日本軍はことごとく玉砕。 キスカ島の5200名の兵も玉砕覚悟。 米軍に包囲されたそのキスカ島から全兵を救出。一人も傷付けずに。 太平洋の奇跡と呼ばれたキスカ撤退作戦。 その作戦というのは、濃霧に紛れて島に近付き、上陸するというもの。 盲点を付くと言うか、何とも大胆不敵! ぬか喜びさせない為に、島の兵にも極秘。 米軍にレーダー傍受されてもいいように、敢えて島の兵たちに玉砕を促すような電報を。 指揮を執るは、目立った戦歴は無い司令官。 あくまでこれは戦いに勝つという作戦ではない。 冷静沈着。判断力。忍耐力も求められる。 結果的にはドンピシャな人選であった。 奇跡の作戦とは言え、全てが万事上手くいった訳ではない。 作戦決行、島に近付くが霧がそれほどでもなく、一度は目前で引き返す。 事前に島に連絡係を送り、寸前になって生きて還れる希望を持つが、その時の一旦中止の落胆は計り知れない。 やはり無理だ。俺たちは還れない。 全員玉砕の覚悟。 覚悟は救出側も同じ。 覚悟を持って、作戦再決行…! 特撮は勿論、円谷英二。 要所要所の特撮シーンもさることながら、作戦の要、霧のスモーク演出はさすがの匠の技。 ハリウッドの戦争映画マーチを彷彿させる團伊玖磨によるマーチ曲も軽快。 戦争映画は捉え方が難しい。 本作だって、日本軍万歳!と見えなくもない。 人を殺す戦争。 でも、人を救う行為も。 娯楽和製戦争映画としてもなかなか面白かった。
女性と外国人が全く出演しない映画です。
敗色濃くなってゆく日本海軍が島に取り残された将兵を救出する作戦を描いた白黒作品。タイトルから結論がわかってしまうことになるが、どのように救出するかのプロセスを見ていただきたい。
当時の東宝の男優をずらっと揃えた出演。「三船敏郎」が主役であるが、最近では時代劇で悪役で出演する「中丸忠雄」が好演。今ではすっかりクイズ番組司会者の「児玉清」も気象予報の少尉役で出演。
この映画の監督も脚本家も戦争体験者とのこと。特撮も音楽も完成度が高く、スカッと爽やかとは言えないが(日本側にとっては)ほっとさせるラストシーンを描いてくれている。
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