台風騒動記のレビュー・感想・評価
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“この物語はすべて事実ではありません”というテロップから始まる。
富久江町という港町に台風がやってきた。“天災も恐ろしいが、この国では天災のあとにもっと恐ろしいものがやってくる”と断ってあるとおり、台風が過ぎ去ってからの話となる。
一昨年の地震により小学校校舎は危険校舎とされていたが、予算を計上したものの台風のおかげで国からの補助金がもらえるかもしれない。そうなれば町が潤うはずだ!とばかりに、町長を始め、議会は校舎を壊すことを目論んだ。取り壊しを請け負ったのは森県会議員に頼まれた建築屋の堀越組。ここでも賄賂が飛び交っていた。政府補助金を確実にするため、また取り壊し途中であったため、町長夫人(藤間紫)はバス停で張り込んで、視察のためにやってくる政府の監査官を待った。そこへ現れたのは失業中の青年・吉成幸一(佐田)。夫人からの接待を受け、大金までもらってしまう。
その直後に本物の監査官がやってくる。簡単にニセ陳情を見破った監査官。補助金は怪しくなってしまった。しかし、町長は自分の銅像のためにせっせと嘘をつき、議会やPTAをも巻き込んでしまうのだ。地鎮祭も終り、PTAから金を集めようと画策する町長だったが、結局は補助金が出ないと判明する。
物語は代用教員である務(菅原)と教員・妙子(野添)の恋物語もある。吉成が芸者静奴(桂木洋子)と組んで、現状の投書や張り紙をしたと思わせておいて、見事な結末。議員とゼネコンの贈収賄や、本当の被災者への思いやりの無さなんて、堕落した権力構造を浮き彫りにしただけ。また、務をアカと決めつけ何でもメモする赤桐巡査(多々良純)や宴会芸が達者な助役(中村是好)、酒乱の消防署長(三井弘次)らの人間味溢れた演技もいい。もちろん、議員のボスである河合釜之助(三島雅夫)が絶品だ!
“天災の後には人災がやってくる”という皮肉を込めたテロップも痛快。災害を食い物にする奴はいつの時代もいるんだな。
今の日本には痛烈な一本!
「白い巨塔」「華麗なる一族」などで知られる社会派の巨匠・山本薩夫監督による1956年の作品。
台風が通り過ぎたとある町の、小学校の改築を巡るてんやわんやの人間模様。
天災があったにも関わらず町議会は我が身の事ばかり。改築の為国から出る補助金を何としてでも得ようと捏造・隠蔽する。その為接待やら何やらで宴会に明け暮れ、町の事はほったらかし。
映画の中で描かれている事が、まるで今の日本そのもの。
そんな人々の姿を、滑稽かつ皮肉たっぷりに綴る。
映画の冒頭で…「天災は恐ろしいが、この国では天災の後に、もっと恐ろしいものがくる」…と、ある。
天災より人間のエゴの方がよっぽど大騒動だ。
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