台風クラブのレビュー・感想・評価
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感想メモ
ごめんなさい、よく分からなかった
個は種を超越し得るか、死は種の個に対する勝利
死は生きる上の前提、厳粛な生には厳粛な死が必要
厳粛な死を与えられていない自分には種を超えることはできない、だから死という手段を持って種に勝利する、更に自分の厳粛な死によって同級生達に厳粛な生を与える、三上君が死んだのはこういう理由?それならば彼の死で犬神家オマージュする必要あったか?犬神家にも生死に関する命題が出てくるのか?
最初のプールのシーン、晶を水泳のコース用ロープに繋いで溺れさせた、溺れさせた女子グループのあっけらかんとした感じ、晶のヘラヘラした感じ、理科の授業中好きな女の子の背中に薬品をかけて怪我をさせる、確かにこれは普通ではない、倫理観が狂っている
ミチコを追い回すシーン、ただいま、おかえりなさいとボソボソ言いながらドアを蹴り続けているのかなり不気味で怖い
父親、先生、授業中に乗り込んでくるババア、自称東大生ロクでもない大人ばかり、15年経てばお前もこうなる、それは種に対するこの敗北?
相米監督作としてそれなりに有名だが、この映画の良さは自分には分からなかった。
1985年製作/115分/日本、配給:A PEOPLE CINEMA、劇場公開日:2023年9月23日。
その他の公開日:1985年8月31日(日本初公開)
脚本は、ディレクターズ・カンパニーのシナリオコンクールの準入選作であるとか。中学生の鬱屈した感情爆発を描こうとしてるのは頭で理解できるが、全く面白くない物語と思えてしまった。
台風による雨の描写も、人工的なものが丸見えで、いけてない。主人公が高い教室から飛び降りて大雨でズブズブになった校庭に突き刺さることにはビックリしたが、あれで命を落とすことの理解が不可能に思えてしまった。
音楽と結びついて踊り狂う中学生に高エネルギー性は感じたが、もっと上手に踊ってと思ってしまった。ただ、人生に疲れてる様な教師役の三浦友和は、それなりに魅力的には感じた。
監督相米慎二、脚本加藤祐司、企画宮坂進、製作宮坂進、プロデューサー山本勉、撮影伊藤昭裕、美術池谷仙克、音楽三枝成彰、録音中野俊夫、照明島田忠昭、編集冨田功、助監督榎戸耕史、スチール安保隆。
出演
三上恭一三上祐一、清水健紅林茂、山田明松永敏行、高見理恵工藤夕貴、大町美智子大西結花、宮田泰子会沢朋子、毛利由美天童龍子、森崎みどり渕崎ゆり子、英夫佐藤允、清水留造寺田農、岡部(用務員)伊達三郎、八木沢順子小林かおり、保健医きたむらあきこ、八木沢勝江石井トミコ、三上敬士鶴見辰吾、小林尾美としのり、梅宮安三浦友和。
今では撮ることができない映像に称して
未成年の喫煙、下着姿(しかも脱ぐ)、性描写(暴行、同性愛、誘拐)、薬を想起させる乱痴気パーティ(使用してません)、先生とハングレの繋がり。
ま~凄い。てんこ盛り。私が大人になってこの映画に接して思ったことは、判断が幼い未成年が観るとかなり危険そうだし、演技させてるのもすごいや・・・。確かに映像も力があって面白いし、音楽と共に飽きさせる要素は皆無なんだけど、怖さが上回ってしまった。
ただ脳みそに叩きつけられる衝撃は上位。
どこまで本気で考えていたのかわからないけど、個として三上君の死は意味があったのだろうか。先生に直接意見を言う大町美智子(大西結花)ですら暴行を見なかったこと、なかったことにして流れていったように、同様になってしまうのではないだろうか。
しかも最後あの体勢が辛いのかプルプルしていたのが、滑稽さと生きてる”かも”要素(たぶん死んでる)になっていて、映画として味が出ている。
日常は危ういバランスの上にあることを痛感させられる物語
若い頃に観た時は「台風が来て、みんな舞い上がっちゃう映画」くらいの印象でした。
改めて観ると、「舞い上がる」なんてレベルじゃなかったですね。「狂い出す」レベルでした。
しかしそれは、意味なく「狂い出す」わけではなく、一人ひとりがそれなりに「狂う」理由があったんですね。
それが「台風」というひとつの自然現象によって、増幅され、歪み、表出されていく。
逆にいえば、私たちはそんなわずかな自然現象が起こっただけで狂ってしまうほどの危うさを、誰もが持っているのかもしれない。危ういバランスの上に成り立っている理性や常識が、ちょっとしたことで崩れてしまう。そんな薄氷の上にこの社会はあるのかもしれない。
学校に行きたくない、イタズラしたい、授業中に乱入したい、女の子を襲いたい、雨の中を裸で踊りたい、死にたい…etc.
一見、突拍子もない彼女/彼らの行動は、すべて内面に隠された欲望であり、「台風の接近」によってあらゆる常識というストッパーが外れたのだろう。
台風が通過した朝、何事もなかったかのように学校に行く2人の生徒。
日常とは案外、そんなものなのかもしれない。
死と生の順番
幼少の頃、何かでタイトルを記憶していた映画。
無論その時は見れず、見れない。
時が過ぎ4kレストア版で視聴。
真夜中の中学高のプールに勝手に侵入する
女の子5人組。楽しそうに踊りまくる。
挿入歌はバービーボーイズの暗闇でDANCE。
KONTAと杏子の歌声が懐かしい。
なるほど、この歌詞が彼女達の気持ちなのだろう。掴みは上手いね。
先客の友人、明を見つけ海パンを脱がし、プールの仕切りで巻き付け溺死寸前に。かなりの暴走。
明の友人、三上と清水、梅宮先生にも連絡して来て貰う。梅宮先生役三浦友和さんは男前だね。
思春期真っ只中、主となる女の子5名と男の子3名。中学生らしい、うまく表現出来ない葛藤の気持ちがそれぞれにある。理恵の『あ~あ台風こないかな』に象徴される用に、この日常が壊れればと願ってるのかも知れない。
異性、同性、進学、暴力、家庭、喫煙など、もやもやしつつ解消できない。先が見えない将来への不安がある感じ。
台風当日、生徒達は学校に鍵を掛けられ閉じ込められる。授業をエスケープした生徒も合流。
今迄のよく分からない鬱憤をはらすかのように
踊る。下着姿になり体育館、水溜り、台風の中を愉しく狂気的なテンションではしゃぐ彼ら。
一人だけ考え込んで、出遅れる三上君。
こんな大人(先生)達には成りたくないし、納得いかない様子。翌朝、死は生に先行すると言って飛び降り。何故か犬神家風に脚だけが地上に。
死を意識する事で生になる事を示したかったのだろう。間近で沸々と感じる矛盾する大人に対して。
エンドロールで運動会の曲が流れたから、多分三上君は助かった気がする。
台風がそうさせたのか、若しくはこのような日を待ち望んでたのかは分からないが、この長い台風
の一日を通して自分達の気持ちを吐き出した気がする。わらべの『もしも明日が』を口ずさみながら。
その大切な一日を飛んで日常に戻ったんだね。
何故、名作扱い?
確か長回しが凄いとか言われてたんだよなぁ。
でっ、確かに長回しは多いけど、何か特別な技法を使っているワケでは無く、置いたカメラを上下左右に振ったり前後するだけ。長回しする事で、役者へのプレッシャーと言うか緊迫感は出せるだろうけど、それが効果的な場面がない。と言うか、殆どが十代半ばの子で演技も拙く、キーキー声で叫んでいるだけ。
遠目で画面に小さく夜の台風の風雨の中、下着姿で歌い踊っている少年少女を何分も映しているが、彼らの表情が分かるワケでもない。終盤、自殺の準備をしている所を数分掛けて映されても、だから?と言う感じ。しかも、準備終わって、さてっと覚悟を決めた瞬間は別撮りにしてる。淡々と作業をして、そのまま表情が変わるのを見せるなら分かるんだけど。って言うか自殺する理由が分からん。レイプ未遂、雨の中での歌い踊り等、台風ハイって事なんだろうけど、自殺する時は既に台風過ぎ去ってるし。
最後のシーン、台風で水に浸かった校舎を見て、中学生が「金閣寺みたい」って言うかなぁ。
Amazonだと1時間54分でした。
とてもよかった
公開時に何度か企画上映で見た。当時は登場人物の顔と名前が覚えられなくてモヤモヤしたのだけど、今回も途中で寝て、また続きを見たのでよくわからなくなる。それでも当時よりは把握した。主人公のセリフ回しが棒。三浦友和がやさぐれていてクズでかっこいい。おじさんの入れ墨にぎょっとする。「おかえり、おかえりなさい」と言ってドアを蹴る彼は今なら何か発達障害的な病名がつく。彼の家はトタン屋根で、工藤夕貴も団地で母子家庭のようで、子どもの貧困を感じる。バービーボーイズとレゲエが、当時はすごくセンスのある感じがしたものだ。中学生どうしの話なのだけど、今は大人や親として心配になるばっかりだ。大西結花がめっちゃかわいいのだけど、先生を堂々と批判して主張が強い。
あの世とこの世の狭間
逸脱した表現が多いように思えますが、めちゃくちゃ本質的なことが描かれている映画だと感じました。
心身の急速な変化により情緒が不安定になる思春期と台風を重ねる演出はベタながらもとてもわかりやすいです。実際、思春期の彼らにとっては内側に台風を抱えている状態ですし。彼らはなんとか現世に足をつけて踏ん張っているものの、何かの拍子ですぐにあちらの世界に巻き込まれてしまう。本作では台風によって異界に飛ばされてしまった中学生たちの物語でした。寓話として完璧なのでは、と感じています。
登場人物で注目したのは、リエ、ミカミ、シミズの3人。共通するのは家族とのつながりの薄さです。軸というか根っこが弱いため、外的なエネルギーの渦に容易に巻き込まれてしまう。リエのスプーン曲げや顔に描く模様は、魔的な力を内側に取り込んでなんとか強くあろうとしているようにも感じます。今で言う、邪気眼的なやつですね。通過儀礼としての厨二病。
シミズにおいては要支援家庭ですよね。貧困とおそらくネグレクト。「おかえり」「ただいま」はシミズの寂しさがだだ漏れでヤバすぎるし切なすぎる。ミカミ家はさほど目立たないけど、知性ばかりの交流が目立ちます。
とはいえ、リエやシミズは台風とともにあちらの世界に飛ばされますが、途中でふと我に返ることができます。目が覚めて、現世に戻ってくるイメージです。
そこに、人間の持つしぶとさとか、原始的な強さみたいなものを感じました。異界に惹かれても、結局生きるのは現世。守りのない中で、揺れながらもギリギリで踏みとどまれる力には健康さを感じます。一見、どうみてもヤバいシミズですが、良い環境に出会えればちゃんとした人間に成長するかもしれません。
一方で、大人は総じてクソです。家族の薄さも印象に残りますが、やはり三浦友和演じる先生のインパクトが強烈。流されて自分を生きれず、その虚無からくるフラストレーションを教え子にぶつけるという、凄まじい屑です。
「お前も15年経てば俺みたいになるんだよ」
という、ミカミに対してカマした台詞は、15歳の少年にとっては未来を失わせる呪いの言葉以外何者でもないです。
台風クラブのメンバー全員が無事だったわけではありません。思春期を迎えた彼らはあの世とこの世の間を揺れますが、この世に戻る力があります。しかし、一歩間違えば、この世に帰れない危ういバランスの上に立っているのです。
そのような状況下でこの教師のような存在に遭遇して呪いをかけられると、この世に戻る力が失われます。しかも、教師ですからね、その辺のオッサンとかではなく。
このような大人メフィストフェレスであり、純度の高い悪だと思います。
本作も相米慎二らしい長回しが目立ち、中盤まではやや冗長に感じました。しかし、クライマックスはさすがで、長回しが異様な緊張感を生み出していたと思います。『もしも明日が』の徹底的に空っぽな響きには胸を撃ち抜かれました。
工藤夕貴は特異で危うい魅力を放っていて、とても印象に残ります。
そして、もっともヤバかったのは三浦友和ですね。『葛城事件』でも究極の屑人間を演じており、私にとって三浦友和は日本屈指の下衆俳優として認識されてしまいました。一見爽やかっぽいので、下郎を演じると逆にリアルなんですよね。
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