台風クラブのレビュー・感想・評価
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緑が美しい
個人的にこの時代のカラーが好きで、田舎の緑が美しい。
中学生日記みたいなのはあまり好きではないが、(嫌いというわけでもないが)演技が芝居めいていて鼻につくということは特になかった。
誰もいない閉鎖された校舎で男子が気になっている女子を追っかけまわすシーンは、すごかった。「おかえりなさい」「ただいま」とうわごとの様に呟きながら(恐らく家出したその場にはいない女子生徒の事を暗示している)真顔で机や扉を単調に蹴り続ける。トラウマものの怖さだが、その後追っかけ回した男子も追っかけ回された女子の方も普段通りに戻ってあっけらかんとしている。あまつさえ、「おかえりなさい」「ただいま」と今度はおどけた調子でみんなで唱和し、下着姿で仲良く踊っている。中学生の彼らの行動の背景には、大人の様な捻じ曲がった精神や倒錯した欲望、強い執着や悪意はみとめられず、行動の振れ幅が大きい分、心はとても繊細でしなやかだ。どう表現すればいいか分からない衝動が突発的に無軌道なエネルギーとなって放出される様子が映画全体を通して見事に描かれていたと思う。
個人的な名シーンは、家出をする女子生徒が出かけてしまった母親の布団に潜り込んで自慰行為するシーン。リアルでとても良かった。
何度も見たいか、と言われるとそうでもないが、個人的にかなり刺さった作品だった。
何故、名作扱い?
確か長回しが凄いとか言われてたんだよなぁ。
でっ、確かに長回しは多いけど、何か特別な技法を使っているワケでは無く、置いたカメラを上下左右に振ったり前後するだけ。長回しする事で、役者へのプレッシャーと言うか緊迫感は出せるだろうけど、それが効果的な場面がない。と言うか、殆どが十代半ばの子で演技も拙く、キーキー声で叫んでいるだけ。
遠目で画面に小さく夜の台風の風雨の中、下着姿で歌い踊っている少年少女を何分も映しているが、彼らの表情が分かるワケでもない。終盤、自殺の準備をしている所を数分掛けて映されても、だから?と言う感じ。しかも、準備終わって、さてっと覚悟を決めた瞬間は別撮りにしてる。淡々と作業をして、そのまま表情が変わるのを見せるなら分かるんだけど。って言うか自殺する理由が分からん。レイプ未遂、雨の中での歌い踊り等、台風ハイって事なんだろうけど、自殺する時は既に台風過ぎ去ってるし。
最後のシーン、台風で水に浸かった校舎を見て、中学生が「金閣寺みたい」って言うかなぁ。
Amazonだと1時間54分でした。
令和の闘いvs昭和の残酷
こんな話だったのか。
とてもよかった
公開時に何度か企画上映で見た。当時は登場人物の顔と名前が覚えられなくてモヤモヤしたのだけど、今回も途中で寝て、また続きを見たのでよくわからなくなる。それでも当時よりは把握した。主人公のセリフ回しが棒。三浦友和がやさぐれていてクズでかっこいい。おじさんの入れ墨にぎょっとする。「おかえり、おかえりなさい」と言ってドアを蹴る彼は今なら何か発達障害的な病名がつく。彼の家はトタン屋根で、工藤夕貴も団地で母子家庭のようで、子どもの貧困を感じる。バービーボーイズとレゲエが、当時はすごくセンスのある感じがしたものだ。中学生どうしの話なのだけど、今は大人や親として心配になるばっかりだ。大西結花がめっちゃかわいいのだけど、先生を堂々と批判して主張が強い。
もしも明日が晴れならば
なぜか不思議なシーンがいっぱい。特に商店街の白ずくめのオカリナ吹きカップルがいい。考えてみれば、3年の夏に野球部を辞めた生徒が夜中のプールにユニフォームで駆けつけるところから疑問。受験勉強が始まることへの抵抗か、受験戦争のまっただ中に放り出されることへの不安なのか、田舎の中にも閉塞感が感じられる。
微妙な年齢であることに加え、担任(三浦友和)の結婚詐欺疑惑みたいな事件で生徒たちは複雑な気持ちになる。台風が来てくれれば全部吹き飛ばしてくれそう。また、明に行ったイジメにも似た行為を恥じたり、レズビアンの関係への好奇心、そして健が美智子背中に薬品をかけたことの罪悪感・・・男女間にも様々な葛藤があった。
日常からの脱却。大人になったらもっと逃避したいときがある。責任感の薄い中学生時代だからこそ、何もかも忘れて饗宴できたのだろう。そのクライマックスにおける体育館での狂ったような踊りは全てを吹っ飛ばしてくれる。下着姿からブラまで取って・・・引きの映像に見入ってしまった。
『犬神家の一族』へのオマージュはちょっと衝撃。ちょっとしたワンカットが絶妙でもあった。見て損もないけど、若い頃に観るのと歳取ってから観るのではイメージが変わってしまうかもしれません。
鬱屈した田舎の中学生達は爆発するきっかけを待っている。
HDリマスター版をアマプラにて鑑賞。
リマスター版は暗闇のシーンが真っ暗で何も見えず、誰が監修したのかと問いたくなるほど最悪なものだった。
学生時代に映画館で観て衝撃を受け、それ以降一時期定期的にレンタルなどで鑑賞していたが、今回の鑑賞は実に20年ぶりくらいかと思う。
一口で言い表すことは難しいが、大まかなストーリーとしては、
全く不良にも見えないむしろ幼さすら残る普通の田舎の中学生達が、まるで台風の襲来とシンクロするかのように校内に居残り、日頃の鬱屈した脆く不安定な感情をそれぞれが爆発させ到底理解できないような行動に走る・・・といったところか。
しかしながらこの映画はストーリー云々を言うものではなく、少年少女が持っている彼らなりのはけ口が見つからない破裂ギリギリのエネルギーのようなものをいかに演技で表現し、観る側がそれをいかに受け止めることができるかが意図された見どころであり、鑑賞の醍醐味でもあるという、ある意味極めて演劇的な作品なのである。
工藤夕貴はじめ、実年齢も役とほぼ同じくらいのミドルティーンの無名の役者たちが、確かに演技としては未熟かもしれないが、嘘のつき用のない文字通り誠実で体当たりの演技をするため、リアリティのない軌道を外れた行動すらも不思議と受け入れる事ができてしまう。
工藤夕貴の布団に入り〇〇するシーンのワンカメ長回しや、それまでに優等生で二枚目役ばかりだった三浦友和のちょいクズで飄々とした人間臭い演技なども含め、相米慎二の強烈な演出力を感じ取ることができる、観る人の心に焼き印の如く心の目立つところに熱く半永久的に刻まれる、そういう映画なのである。
子供の頃には分からなかったけど
子供の頃に見た映画を、リマスタ化したAmazonで再見。
当時はよく分からなかったけど、結構攻めている映画だったんですね。工藤夕貴さんはアイドル的な女優さんだったと思いますが、ここまでさせるか、という感じです。自分的には、声優さんとしておなじみな渕崎ゆり子さんの少女時代が見れたのがうれしい。
台風とは学生運動とかの大きな世の中のうねりのイメージでしょうか。若者は鬱屈した葛藤を抱えていて、それは現代においては、崇高な死が無くなり、くだらない大人になるしかない、という現実があるためだ。主人公は、純粋な若者のまま崇高な死を体現しようとするが、それは客観的には滑稽な死でしか無かった、とそういう事かと思いました。
大昔に話題になっていたので観てみたが、これはひどい。 こんなものが...
ATGと東宝っぽい
鮮烈なインパクト
若さ溢れる
今こそ本作と家族ゲームを受けて令和の時代の台風クラブをリメイクしなければならない
家族ゲームに遅れること2年
ここでは家族のゲームを演じる家庭どころか
親すら登場しなくなっている
健の親が台詞もなく一瞬映るのみだ
それも彼の家が困窮家庭でネグレクトされていることを説明する為だけに登場する
ただいま、お帰りなさいの台詞はそれを表現するものだ
理恵が寝坊した時に父も母もいない
母を呼ぶだけで、父は呼びもしない
彼女は誰もいない家で母の布団にくるまり自慰をする
それは愛情に飢えている表現だ
台風の中の商店街で出会うオカリナを吹く不思議な男女
あれば彼女の両親の投影だ
オカリナはオカルトのもじり
彼女のオカルト趣味は両親から来ているものなのだろう
しかしその両親は娘の助けの求めには応えてくれず、全く取り合ってもくれないのだ
仕方なく警官の人形にすがるのだが勿論応えてくれるわけもない
兄弟も三上の兄だけが極短時間姿をみせるだけだ
その兄も弟への声かけは家計の心配、ひいては自分にどのようなしわ寄せが来るのかの心配によるものだ
思春期の不安定な精神を正面から受け止めてくれる家族はどの子供達にもいないのだ
子供達だけで思春期の精神の不安定さを乗り切ろうとするほかないのだ
台風という思春期の熱病の嵐の中で子供達は、所詮遊びつかれたら眠るだけの何もできない子供であることを知る
家出をして東京にいく、彼女を襲う、自殺を図る
これらは全部子供たちの夢想に過ぎない
だから、シャイニングや犬神家の一族の有名シーンのオマージュがあるわけだ
台風が去り子供達の精神が安定すれば、空は明るく晴れ渡り子供達は表面的には何事もなく学校に向かい日常にもどるのだ
一方、大人の代表たる梅宮先生は大人達だけで台風の中カラオケをしている
そこには濃密な心の触れあいがあるが、それは大人だけでしかない
家族が作られようとしているのだが、あの二人が結婚しても果たして普通の家族になり得るのか
それを先生の彼女の父の刺青が不安として表現している
子供達の親は団塊の世代の始めだろう、梅宮先生はその終わりの年頃にあたる
子供達は団塊ジュニアの走りになる
この構造は家族ゲームと同じだ
しかし本作では家族ゲームで松田優作が演じた家庭教師に相当する梅宮先生まで、子供達を突き放しているのだ
彼は子供達に夢や希望を与えようなどとはこれっぽっちも思っていない
それどころかか15年もたてば自分のこのような姿に成り果てるのだとさえ言い放ち子供達のそれを破壊するのだ
こうした家族の環境の中で団塊ジュニアは育ち今や大人になり、本作で登場しない親の歳になっているのだ
本作公開からそれほどの時は流れたのだ
子は親にされたようにしか子供を育てることは出来ないものだ
一体いまの中学三年生は台風が来たら、どう子供達は乗り切っているのだろうか?
ネットの中に避難しているのかも知れない
今こそ本作と家族ゲームを受けて令和の時代の台風クラブをリメイクしなければならないと切に思う
あの世とこの世の狭間
逸脱した表現が多いように思えますが、めちゃくちゃ本質的なことが描かれている映画だと感じました。
心身の急速な変化により情緒が不安定になる思春期と台風を重ねる演出はベタながらもとてもわかりやすいです。実際、思春期の彼らにとっては内側に台風を抱えている状態ですし。彼らはなんとか現世に足をつけて踏ん張っているものの、何かの拍子ですぐにあちらの世界に巻き込まれてしまう。本作では台風によって異界に飛ばされてしまった中学生たちの物語でした。寓話として完璧なのでは、と感じています。
登場人物で注目したのは、リエ、ミカミ、シミズの3人。共通するのは家族とのつながりの薄さです。軸というか根っこが弱いため、外的なエネルギーの渦に容易に巻き込まれてしまう。リエのスプーン曲げや顔に描く模様は、魔的な力を内側に取り込んでなんとか強くあろうとしているようにも感じます。今で言う、邪気眼的なやつですね。通過儀礼としての厨二病。
シミズにおいては要支援家庭ですよね。貧困とおそらくネグレクト。「おかえり」「ただいま」はシミズの寂しさがだだ漏れでヤバすぎるし切なすぎる。ミカミ家はさほど目立たないけど、知性ばかりの交流が目立ちます。
とはいえ、リエやシミズは台風とともにあちらの世界に飛ばされますが、途中でふと我に返ることができます。目が覚めて、現世に戻ってくるイメージです。
そこに、人間の持つしぶとさとか、原始的な強さみたいなものを感じました。異界に惹かれても、結局生きるのは現世。守りのない中で、揺れながらもギリギリで踏みとどまれる力には健康さを感じます。一見、どうみてもヤバいシミズですが、良い環境に出会えればちゃんとした人間に成長するかもしれません。
一方で、大人は総じてクソです。家族の薄さも印象に残りますが、やはり三浦友和演じる先生のインパクトが強烈。流されて自分を生きれず、その虚無からくるフラストレーションを教え子にぶつけるという、凄まじい屑です。
「お前も15年経てば俺みたいになるんだよ」
という、ミカミに対してカマした台詞は、15歳の少年にとっては未来を失わせる呪いの言葉以外何者でもないです。
台風クラブのメンバー全員が無事だったわけではありません。思春期を迎えた彼らはあの世とこの世の間を揺れますが、この世に戻る力があります。しかし、一歩間違えば、この世に帰れない危ういバランスの上に立っているのです。
そのような状況下でこの教師のような存在に遭遇して呪いをかけられると、この世に戻る力が失われます。しかも、教師ですからね、その辺のオッサンとかではなく。
このような大人メフィストフェレスであり、純度の高い悪だと思います。
本作も相米慎二らしい長回しが目立ち、中盤まではやや冗長に感じました。しかし、クライマックスはさすがで、長回しが異様な緊張感を生み出していたと思います。『もしも明日が』の徹底的に空っぽな響きには胸を撃ち抜かれました。
工藤夕貴は特異で危うい魅力を放っていて、とても印象に残ります。
そして、もっともヤバかったのは三浦友和ですね。『葛城事件』でも究極の屑人間を演じており、私にとって三浦友和は日本屈指の下衆俳優として認識されてしまいました。一見爽やかっぽいので、下郎を演じると逆にリアルなんですよね。
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