「タイトルなし(ネタバレ)」大日本帝国 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
さよなら丸の内TOEIの上映で鑑賞。今回が初鑑賞。
昭和16年から太平洋戦争終結までの物語。
四人の青年。
ひとりは、陸軍士官学校卒の小田島剛一少尉(三浦友和)。
もうひとりは、京都帝大生での教会でクリスチャン江上孝(篠田三郎)。
いまひとりは、東京下町の理髪店の見習い・小林幸吉(あおい輝彦)。
最後のひとりは、生粋の戦闘機乗り・大門勲(西郷輝彦)。
かれら四人は、太平洋戦争のなかで、ある者は死に、ある者は生き延びる・・・
といった物語。
バリバリの右傾・右翼タイトルを冠していながら、バリバリの反戦映画。
前作『二百三高地』で、勝ち戦のなかで反戦を描いた脚本・笠原、監督・舛田のコンビは、今回は負け戦だけに反戦度は更に増す。
増しているのは反戦度合だけでなく、戦争に対する天皇責任も濃く、さらに反米意識も殊の外、強い。
ビリングトップは東條英機を演じた丹波哲郎だが、ドラマの主軸を青年四人に据えたので見ごたえが増した。
戦闘シーンも増して、火薬量も増した。
なにせ、閣僚中心のドラマだと、スペクタクルシーンは撮れないからね。
三浦友和と篠田三郎演じる将校ふたりが複雑な人物造形で、作品に奥行きを与えている。
特に、篠田三郎演じるクリスチャンの青年が「国から命じられて戦地に赴くよりは、自身で選ぶ。死ぬときは、君の名を呼んでもいいか」と恋人(夏目雅子)の名を呼ぶと誓いながらも、戦犯として処刑される際に「天皇万歳」と叫ぶ、その凄さ。
ハードボイルドながら、心底にヒューマニズムを抱えた三浦友和演じる将校も、三浦の端正な顔立ちが活きている。
あおい輝彦演じる一兵卒は、名誉の負傷で一時帰国するも「戦友とともに死ぬ覚悟」で再び戦地へ赴くものの、愛する妻子のために、なんとしてでも生き抜いていく。
西郷輝彦演じる戦闘機乗りは、やや類型的で、四人の中では割を食っているかもしれません。
男優陣中心の物語だが、
理髪屋・小林の妻を演じる関根恵子、
江上の恋人と虐殺される現地人娘マリアの二役を演じた夏目雅子、
沖縄から南方へ流れて来た女性たちを束ねる気丈夫女性を演じた佳那晃子
の女優陣も力演、素晴らしい。
特に、夏目雅子の感情豊かな演技には瞠目させられました。